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ずっと夢を見ている。
それは、結婚式をする夢。
「ミョウジさん。検温に来ました。失礼します」
看護士が、俺を呼んだ。
ベッド周りのカーテンが揺れて、俺が腰かけているところへ来る。
「体温計、お願いします」
「うん……」
言われるままに、体温計を脇に挟んだ。
この病院に入院してから、3日経つ。
俺が愛した人は、3日前に死んだ。
「彰…………」
結局、彼の心には、桐生と由美ちゃんしかいなかったのだろうか?
精神に刺さった棘が痛む。
あんたと一緒に死にたかったな。
◆◆◆
「あーあ。麗奈もいなくなっちゃった。裏切られたねぇ」
「…………」
彰は、黙ったまま遠くを見ている。
窓の外は、曇天。
もうすぐ雨が降るのかもしれない。
俺の古傷が痛んでいる。
あの女、ずーっと前から嫌いだった。彰のことが好きだから。
あの女だけじゃない。桐生も、由美ちゃんも嫌いだ。
前に、俺は「彰にはもう、俺しかいない」と言ったけど、それは嘘だった。
本当は、もう俺には彰しかいないんだよ。
家族とか友達とか、いないし。
あんたしか、いない。
「ねぇ、大丈夫? 俺、酒でも何でも付き合うよ?」
「何ともねぇよ」
「そう…………」
その後。彼は、俺の家から出て行った。
数日経ってから。
来訪した彰は、「ケリをつけて来る」とだけ告げて、どこかへ行ってしまった。
「待って……」
上手く声が出なくて。止められなかった。
俺は、情報屋に大金を払って、彰の居所へ向かう。
俺が辿り着いた時には、彰は桐生にのされたらしく、床に転がっていた。
「彰……!」
「……ナマエか」
「そうだよ。今、医者を呼ぶから」
「その必要はねぇ」
「彰?」
彰の腕が、俺に伸ばされる。
そして、頭を撫でられた。
「悪いな、ナマエ」
「な、に……謝ってんだよ……?」
「これ、お前に預けておく」
渡されたのは、俺とお揃いの指輪で。
俺は、その意味を悟り、放心してしまった。
「じゃあな、ナマエ」
俺は、また「待って」と言えないまま。
「置いて行かないで……」
かすれる声。彰の姿が小さくなっていく。
俺は、もつれる脚で必死に彼を追った。
それから、俺の視界に映ったのは、100億と、知らない誰かと、爆弾に銃を向ける彰で。
「俺を独りにしないで……!」
叫ぶように声を上げ、彰に駆け寄る。
「泣くな、ナマエ。お前は生きろ」
「っ……!?」
彰は、俺を思い切り突き飛ばして、爆風の中に消えた。
「嫌だ……嫌だよ、こんなの…………」
口を開くと、熱風で喉が焼ける。
思わず伸ばした左腕が、焼け焦げる。
「おい、お前……」
誰かの声が遠くで聴こえ、俺は意識を失った。
◆◆◆
今日も、夢を見ていた。
それは、結婚式をする夢。
俺が、彼と法的に結婚していたら、葬式にも出られたのかな。
でも、この国は、そうはなっていない。
ああ、嫌い。こんな世界、滅んでしまえばいいのに。
早く、13階段にでも登らせてくれよ。
怨嗟を積み上げても、錦山彰の元には届かない。
1ヶ月後。
退院した俺は、神室町を歩いていた。
自宅へ帰るのは辛い。あの家は、彰がくれたものだから。
荷物を粗雑に置いてから、俺の左手薬指の指輪を見る。
指輪は、煤けていた。
彰の指輪には、チェーンがついている。それを首から下げた。
家を出て、あてもなく神室町を歩いていたら、桐生と、由美ちゃんのガキを見かける。
死にたい。
いや、でも。
俺は、生きろと言われた。
あんたを覚えてる奴が、俺だけになるまで。それまで、俺は生きようと思った。
ずっと愛してるよ。
それは、結婚式をする夢。
「ミョウジさん。検温に来ました。失礼します」
看護士が、俺を呼んだ。
ベッド周りのカーテンが揺れて、俺が腰かけているところへ来る。
「体温計、お願いします」
「うん……」
言われるままに、体温計を脇に挟んだ。
この病院に入院してから、3日経つ。
俺が愛した人は、3日前に死んだ。
「彰…………」
結局、彼の心には、桐生と由美ちゃんしかいなかったのだろうか?
精神に刺さった棘が痛む。
あんたと一緒に死にたかったな。
◆◆◆
「あーあ。麗奈もいなくなっちゃった。裏切られたねぇ」
「…………」
彰は、黙ったまま遠くを見ている。
窓の外は、曇天。
もうすぐ雨が降るのかもしれない。
俺の古傷が痛んでいる。
あの女、ずーっと前から嫌いだった。彰のことが好きだから。
あの女だけじゃない。桐生も、由美ちゃんも嫌いだ。
前に、俺は「彰にはもう、俺しかいない」と言ったけど、それは嘘だった。
本当は、もう俺には彰しかいないんだよ。
家族とか友達とか、いないし。
あんたしか、いない。
「ねぇ、大丈夫? 俺、酒でも何でも付き合うよ?」
「何ともねぇよ」
「そう…………」
その後。彼は、俺の家から出て行った。
数日経ってから。
来訪した彰は、「ケリをつけて来る」とだけ告げて、どこかへ行ってしまった。
「待って……」
上手く声が出なくて。止められなかった。
俺は、情報屋に大金を払って、彰の居所へ向かう。
俺が辿り着いた時には、彰は桐生にのされたらしく、床に転がっていた。
「彰……!」
「……ナマエか」
「そうだよ。今、医者を呼ぶから」
「その必要はねぇ」
「彰?」
彰の腕が、俺に伸ばされる。
そして、頭を撫でられた。
「悪いな、ナマエ」
「な、に……謝ってんだよ……?」
「これ、お前に預けておく」
渡されたのは、俺とお揃いの指輪で。
俺は、その意味を悟り、放心してしまった。
「じゃあな、ナマエ」
俺は、また「待って」と言えないまま。
「置いて行かないで……」
かすれる声。彰の姿が小さくなっていく。
俺は、もつれる脚で必死に彼を追った。
それから、俺の視界に映ったのは、100億と、知らない誰かと、爆弾に銃を向ける彰で。
「俺を独りにしないで……!」
叫ぶように声を上げ、彰に駆け寄る。
「泣くな、ナマエ。お前は生きろ」
「っ……!?」
彰は、俺を思い切り突き飛ばして、爆風の中に消えた。
「嫌だ……嫌だよ、こんなの…………」
口を開くと、熱風で喉が焼ける。
思わず伸ばした左腕が、焼け焦げる。
「おい、お前……」
誰かの声が遠くで聴こえ、俺は意識を失った。
◆◆◆
今日も、夢を見ていた。
それは、結婚式をする夢。
俺が、彼と法的に結婚していたら、葬式にも出られたのかな。
でも、この国は、そうはなっていない。
ああ、嫌い。こんな世界、滅んでしまえばいいのに。
早く、13階段にでも登らせてくれよ。
怨嗟を積み上げても、錦山彰の元には届かない。
1ヶ月後。
退院した俺は、神室町を歩いていた。
自宅へ帰るのは辛い。あの家は、彰がくれたものだから。
荷物を粗雑に置いてから、俺の左手薬指の指輪を見る。
指輪は、煤けていた。
彰の指輪には、チェーンがついている。それを首から下げた。
家を出て、あてもなく神室町を歩いていたら、桐生と、由美ちゃんのガキを見かける。
死にたい。
いや、でも。
俺は、生きろと言われた。
あんたを覚えてる奴が、俺だけになるまで。それまで、俺は生きようと思った。
ずっと愛してるよ。
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