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お隣さんは、夜職らしく、あまり顔を合わせることがない。
青柳勝の隣人は、金髪に褐色肌で、ピアスをバチバチに着けている男である。
そんな彼とは、挨拶を交わすだけの仲であり、詳しいプロフィールは知らない。
フルネームが、ミョウジナマエであることと、歳上であることと、ひとり暮らしであること。知っているのは、それだけ。
しかし、ある夜、JOWAN-KINのメンバーがブログでオススメしていたバー「ノクターン・モーヴ」へ行くと、バーテンダー姿のミョウジがいた。
「いらっしゃいませ」
「ミョウジさん!?」
「おや、青柳くん」
「バーテンダーだったんすね!」
「そうだよ。カウンターへどうぞ」
椅子に座り、改めてミョウジを見る。
夜の人という感じで、とても様になっていると思った。
「お客さん、ご注文は?」
「ええっと、JOWAN-KINが飲んでたやつなんすけど……」
「ああ、あのアイドルさんたちね。じゃあ、パープルパッションだ。了解」
ミョウジは、手際よくウォッカとブドウジュースとグレープフルーツジュースを混ぜたカクテルを作る。
「お待たせしました。パープルパッションです」
「ありがとうございます」
青柳は、カクテルグラスを持ち、一口飲んだ。フルーティーさと、少しの苦味。
「美味しいっすね」
「ありがとうございます。最近、それ飲みに来る人が増えてるんだよね」
「そうなんすか」
「うん。僕としては、嬉しいよ。それきっかけで常連さんになってくれる人もいるし」
JOWAN-KINの皆さんには、感謝してる。と、ミョウジは言った。
「青柳くんも、ファンなんでしょう?」
「そうっす。ずっと推してます!」
「そっか。じゃあ、僕の代わりにお礼を言っておいてもらえるかな?」
「了解っす! 握手会の時に言っとくっす」
「うん。よろしくね」
ミョウジは、柔らかく笑っている。
青柳は、お腹が空いたので、フードメニューを見た。ピザ、パスタ、フライドポテトなどが書かれている。
「すいません。サイコロステーキひとつ」
「はい。少々お待ちください」
ミョウジは、奥のキッチンへ向かった。
このバーは、彼ひとりで切り盛りしているらしい。
しばらくして、焼き立てのステーキが運ばれて来た。
「お待たせしました。サイコロステーキです」
「いただきます!」
程よく柔らかく、美味しい肉。付け合わせのソースは、この店の特製のものだ。
「美味しいっす!」
「よかった」
「料理もミョウジさんが?」
「うん。得意だからね」
「へぇ~」
感心する青柳。
「よかったら、ご贔屓に」
「はい!」
その後。青柳は、ミョウジの料理が恋しくなったら、「ノクターン・モーヴ」を訪れるようになった。
ミョウジの店は、青柳にとって、推せるバーである。
◆◆◆
バー「ノクターン・モーヴ」の常連客の女性が疑問を口にした。
「ナマエくん、なんでフードメニューのドカ盛りオプション始めたのよ?」
「好きな人が、たくさん食べるから」
バーテンダーのミョウジナマエは、笑顔で答える。
「えー!? ショック~」
「あはは」
その後、女性客と入れ替わりで、青柳勝が来店した。
「こんばんは!」
「いらっしゃいませ」
「カルボナーラ、ドカ盛りで!」
「はい。少々お待ちください」
水を出してから、ミョウジはキッチンへ向かう。
数分後。
「お待たせしました」
「いただきます!」
両手を合わせてから、青柳は大盛りのパスタを食べ始めた。
「美味しい?」
「美味いっす!」
「よかった」
ふと、青柳は気になることを思い付く。
「そういえば、ミョウジさんが好きなカクテルはなんすか?」
「僕は、お酒なら何でも好きだよ」
「へぇ。強いんすか?」
「そうだねぇ。酔ったことは、ほとんどないかな。ワクってやつ」
「なるほど」
実は、ミョウジナマエは人間ではない。
その正体は、蟒蛇という大蛇の妖怪である。
許可証を取って、人間社会に混ざって暮らしているのだ。
「ごちそうさまでした!」
「青柳くん、まだ食べられるでしょ?」
「はい! あ、でも今はお金なくて……」
「ああ、いや。よかったら、新作を食べてみてほしいなって」
「いいんすか?!」
「うん。オムライスなんだけど」
「食べたいっす!」
「ありがとう。持って来るね」
そして、ミョウジが運んで来たのは、イタリア風の味付けがされたオムライスで。青柳は、それを美味しそうにペロリと食べた。
「ふふ」
「どうかしたんすか?」
「本当に美味しそうに食べてくれるから、嬉しくて」
「ミョウジさんの料理、ほんとに美味いっすから……!」
「ありがとう」
「お礼を言うのは、俺の方っすよ」
ふたりは、近況報告や世間話などをして、しばし和やかな時を過ごす。
後日。青柳は、会社の先輩である葉山小太郎に休憩時間に話しかけた。
「先輩、相談があるんすけど」
「どうしたの? 青柳くん」
「実は、推しが……」
推してるアイドルに何かあったのだろうか? と思った葉山だったが。
「増えたみたいなんすよね……」
「あ、そうなの?」
「はい。その人は、アイドルじゃなくて、バーテンダーの男の人なんすけど。最近、その人のことを考えてることが増えてて」
「そうなんだ」
「でも、バーに行くくらいしか出来ないから……その人、ミョウジさん、グッズ出してくれないっすかね?」
一般人は、自分のグッズを販売しないと思う。と葉山は思った。
「あ、バーのグッズを出してもらえばいいのかも?」
「なるほど! 今度、言ってみるっす!」
青柳は、ギザギザの歯を見せて笑う。
彼の正体もまた、人間ではないのだが、ミョウジはそのことを知らない。
◆◆◆
ある晩、青柳勝が「ノクターン・モーヴ」へ行くと、店内の床に大蛇がいた。
「えっ!?」
大蛇は、ぴくりとも動かずにいる。
「ミョウジさん?! なんかデカい蛇がいるっすよ!」
カウンターの向こうへ呼びかけてみるが、返事はない。
まさか、と思う。
「もしかして、ミョウジさんなんすか?」
蛇に近寄り、尋ねた。
「……青柳くん?」と、か細い声を出す大蛇。
「や、やっぱりミョウジさん!?」
「……見られちゃったね。僕は、妖怪なんだ」
「そうだったんすか」
「風邪が思ってたより酷かったみたいで、倒れて変化が解けてしまった。店の前の札、クローズにして来てくれる?」
「了解っす」と、青柳は、オープンの札を裏返した。
「ミョウジさん、俺……実は、鬼なんすよ……」
「そうなの?」
「はい」
変身を解く青柳。角。青い肌。
確かに、その姿は鬼だった。
「僕は、蟒蛇。お酒が好きなのは、そういうこと」
「なるほど」
ミョウジは、ゆっくりと起き上がる。
「よいしょっと」
人間の姿になった。
青柳も、人間の姿になる。
「あっ」
ふらつくミョウジを、青柳が受け止めた。
「俺が、自宅まで運ぶっすよ。力は強いんで」
「ありがとう、青柳くん」
そして、ミョウジは青柳に抱えられて帰宅する。
「お大事に」
「うん。本当に、ありがとう。今度、ご飯奢らせてね」
「や、そんな、いいっすよ!」
「遠慮しないで。僕がそうしたいだけだから」
「ありがとう、ございます」
それから、青柳は帰って行った。
「ふぅ」
ミョウジは、青柳に触られたところを無意識にさする。
「…………」
そこには、まだ彼の体温が残っている気がした。
「好きだなぁ…………」
ひとり、呟く。
好きだと言ってしまえばよかった。
それか。蟒蛇らしく、ひと呑みにしてしまえばよかった。
「……なんてね」
本気で、青柳勝のことを丸呑みにするつもりはない。
後日。バーにて。
「はい。お礼の大盛りフレンチトースト」
「感謝っす! いただきます!」
「ふふ」と、ミョウジは微笑む。
「どうかしたんすか?」
「青柳くんが、僕の料理を美味しそうに食べてるところを見るのが好きなんだ」
「そ、そうなんすか……」
青柳は、少し照れているようだった。
蟒蛇は、その様子を味わい尽くすように眺めている。
「好きだなぁ」
その一言に、ドキリとする青柳。
「ミョウジさんって、モテそうっすね……」
「そんなことないけど」
「いや、絶対モテてますって!」
「僕は、本命が好きになってくれたら嬉しいかなぁ」
青柳勝は、ミョウジナマエの本命が誰なのかは訊けなかった。
青柳勝の隣人は、金髪に褐色肌で、ピアスをバチバチに着けている男である。
そんな彼とは、挨拶を交わすだけの仲であり、詳しいプロフィールは知らない。
フルネームが、ミョウジナマエであることと、歳上であることと、ひとり暮らしであること。知っているのは、それだけ。
しかし、ある夜、JOWAN-KINのメンバーがブログでオススメしていたバー「ノクターン・モーヴ」へ行くと、バーテンダー姿のミョウジがいた。
「いらっしゃいませ」
「ミョウジさん!?」
「おや、青柳くん」
「バーテンダーだったんすね!」
「そうだよ。カウンターへどうぞ」
椅子に座り、改めてミョウジを見る。
夜の人という感じで、とても様になっていると思った。
「お客さん、ご注文は?」
「ええっと、JOWAN-KINが飲んでたやつなんすけど……」
「ああ、あのアイドルさんたちね。じゃあ、パープルパッションだ。了解」
ミョウジは、手際よくウォッカとブドウジュースとグレープフルーツジュースを混ぜたカクテルを作る。
「お待たせしました。パープルパッションです」
「ありがとうございます」
青柳は、カクテルグラスを持ち、一口飲んだ。フルーティーさと、少しの苦味。
「美味しいっすね」
「ありがとうございます。最近、それ飲みに来る人が増えてるんだよね」
「そうなんすか」
「うん。僕としては、嬉しいよ。それきっかけで常連さんになってくれる人もいるし」
JOWAN-KINの皆さんには、感謝してる。と、ミョウジは言った。
「青柳くんも、ファンなんでしょう?」
「そうっす。ずっと推してます!」
「そっか。じゃあ、僕の代わりにお礼を言っておいてもらえるかな?」
「了解っす! 握手会の時に言っとくっす」
「うん。よろしくね」
ミョウジは、柔らかく笑っている。
青柳は、お腹が空いたので、フードメニューを見た。ピザ、パスタ、フライドポテトなどが書かれている。
「すいません。サイコロステーキひとつ」
「はい。少々お待ちください」
ミョウジは、奥のキッチンへ向かった。
このバーは、彼ひとりで切り盛りしているらしい。
しばらくして、焼き立てのステーキが運ばれて来た。
「お待たせしました。サイコロステーキです」
「いただきます!」
程よく柔らかく、美味しい肉。付け合わせのソースは、この店の特製のものだ。
「美味しいっす!」
「よかった」
「料理もミョウジさんが?」
「うん。得意だからね」
「へぇ~」
感心する青柳。
「よかったら、ご贔屓に」
「はい!」
その後。青柳は、ミョウジの料理が恋しくなったら、「ノクターン・モーヴ」を訪れるようになった。
ミョウジの店は、青柳にとって、推せるバーである。
◆◆◆
バー「ノクターン・モーヴ」の常連客の女性が疑問を口にした。
「ナマエくん、なんでフードメニューのドカ盛りオプション始めたのよ?」
「好きな人が、たくさん食べるから」
バーテンダーのミョウジナマエは、笑顔で答える。
「えー!? ショック~」
「あはは」
その後、女性客と入れ替わりで、青柳勝が来店した。
「こんばんは!」
「いらっしゃいませ」
「カルボナーラ、ドカ盛りで!」
「はい。少々お待ちください」
水を出してから、ミョウジはキッチンへ向かう。
数分後。
「お待たせしました」
「いただきます!」
両手を合わせてから、青柳は大盛りのパスタを食べ始めた。
「美味しい?」
「美味いっす!」
「よかった」
ふと、青柳は気になることを思い付く。
「そういえば、ミョウジさんが好きなカクテルはなんすか?」
「僕は、お酒なら何でも好きだよ」
「へぇ。強いんすか?」
「そうだねぇ。酔ったことは、ほとんどないかな。ワクってやつ」
「なるほど」
実は、ミョウジナマエは人間ではない。
その正体は、蟒蛇という大蛇の妖怪である。
許可証を取って、人間社会に混ざって暮らしているのだ。
「ごちそうさまでした!」
「青柳くん、まだ食べられるでしょ?」
「はい! あ、でも今はお金なくて……」
「ああ、いや。よかったら、新作を食べてみてほしいなって」
「いいんすか?!」
「うん。オムライスなんだけど」
「食べたいっす!」
「ありがとう。持って来るね」
そして、ミョウジが運んで来たのは、イタリア風の味付けがされたオムライスで。青柳は、それを美味しそうにペロリと食べた。
「ふふ」
「どうかしたんすか?」
「本当に美味しそうに食べてくれるから、嬉しくて」
「ミョウジさんの料理、ほんとに美味いっすから……!」
「ありがとう」
「お礼を言うのは、俺の方っすよ」
ふたりは、近況報告や世間話などをして、しばし和やかな時を過ごす。
後日。青柳は、会社の先輩である葉山小太郎に休憩時間に話しかけた。
「先輩、相談があるんすけど」
「どうしたの? 青柳くん」
「実は、推しが……」
推してるアイドルに何かあったのだろうか? と思った葉山だったが。
「増えたみたいなんすよね……」
「あ、そうなの?」
「はい。その人は、アイドルじゃなくて、バーテンダーの男の人なんすけど。最近、その人のことを考えてることが増えてて」
「そうなんだ」
「でも、バーに行くくらいしか出来ないから……その人、ミョウジさん、グッズ出してくれないっすかね?」
一般人は、自分のグッズを販売しないと思う。と葉山は思った。
「あ、バーのグッズを出してもらえばいいのかも?」
「なるほど! 今度、言ってみるっす!」
青柳は、ギザギザの歯を見せて笑う。
彼の正体もまた、人間ではないのだが、ミョウジはそのことを知らない。
◆◆◆
ある晩、青柳勝が「ノクターン・モーヴ」へ行くと、店内の床に大蛇がいた。
「えっ!?」
大蛇は、ぴくりとも動かずにいる。
「ミョウジさん?! なんかデカい蛇がいるっすよ!」
カウンターの向こうへ呼びかけてみるが、返事はない。
まさか、と思う。
「もしかして、ミョウジさんなんすか?」
蛇に近寄り、尋ねた。
「……青柳くん?」と、か細い声を出す大蛇。
「や、やっぱりミョウジさん!?」
「……見られちゃったね。僕は、妖怪なんだ」
「そうだったんすか」
「風邪が思ってたより酷かったみたいで、倒れて変化が解けてしまった。店の前の札、クローズにして来てくれる?」
「了解っす」と、青柳は、オープンの札を裏返した。
「ミョウジさん、俺……実は、鬼なんすよ……」
「そうなの?」
「はい」
変身を解く青柳。角。青い肌。
確かに、その姿は鬼だった。
「僕は、蟒蛇。お酒が好きなのは、そういうこと」
「なるほど」
ミョウジは、ゆっくりと起き上がる。
「よいしょっと」
人間の姿になった。
青柳も、人間の姿になる。
「あっ」
ふらつくミョウジを、青柳が受け止めた。
「俺が、自宅まで運ぶっすよ。力は強いんで」
「ありがとう、青柳くん」
そして、ミョウジは青柳に抱えられて帰宅する。
「お大事に」
「うん。本当に、ありがとう。今度、ご飯奢らせてね」
「や、そんな、いいっすよ!」
「遠慮しないで。僕がそうしたいだけだから」
「ありがとう、ございます」
それから、青柳は帰って行った。
「ふぅ」
ミョウジは、青柳に触られたところを無意識にさする。
「…………」
そこには、まだ彼の体温が残っている気がした。
「好きだなぁ…………」
ひとり、呟く。
好きだと言ってしまえばよかった。
それか。蟒蛇らしく、ひと呑みにしてしまえばよかった。
「……なんてね」
本気で、青柳勝のことを丸呑みにするつもりはない。
後日。バーにて。
「はい。お礼の大盛りフレンチトースト」
「感謝っす! いただきます!」
「ふふ」と、ミョウジは微笑む。
「どうかしたんすか?」
「青柳くんが、僕の料理を美味しそうに食べてるところを見るのが好きなんだ」
「そ、そうなんすか……」
青柳は、少し照れているようだった。
蟒蛇は、その様子を味わい尽くすように眺めている。
「好きだなぁ」
その一言に、ドキリとする青柳。
「ミョウジさんって、モテそうっすね……」
「そんなことないけど」
「いや、絶対モテてますって!」
「僕は、本命が好きになってくれたら嬉しいかなぁ」
青柳勝は、ミョウジナマエの本命が誰なのかは訊けなかった。
