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不意に視線を感じて、そちらの方を向くと、学ランの男子中学生と目が合った。
彼は、急いで目線を持っている本に落とす。
なんだろう? 私が白衣だから気になるのだろうか?
言われるまでもなく、公園には相応しくない服装ではある。
向かいのベンチに座る彼を観察すると、私の著作を読んでいることに気付いた。
それは、まあ、見るよな。著者近影のまんまの白衣の人間がいたら。
私は、彼の方に歩いて行き、「こんにちは」と声をかけた。
「こんにちは…………」
恐る恐るといった様子で挨拶を返される。怖がらせたい訳ではないのだけれど。
「それ、私の書いた本なんです」
「は、はい……」
「認知科学に興味があるのですか?」
「……はい」
「ありがとうございます」
一礼すれば、会釈を返された。
「隣、いいですか?」
「はい……!」
隣に座ると、だいぶ端の方に寄って行く彼。気を遣わせるのは本意ではない。
「そんなに避けなくても大丈夫ですよ」
「すいません……」
わずかに、こちらに近付いた。
「私は、ヌリエと申します」
「俺は、退川論吾です」
「よろしくお願いしますね」
「……よろしくお願いします」
私は、気になっていることを尋ねてみることにする。
「論吾さんは、何かを変えたいですか?」
「俺は、その、クラスメイトと仲良くなりたくて…………」
「なるほど。その本は、教室では読まない方がいいでしょうね」
くすりと笑った。
“音楽が認知世界へ与える影響について”なんて読んでいたら、話しかけられづらくなりそう。
「ヌリエさんは、どうすればいいと思いますか……?」
「まずは、挨拶をしたらいいと思いますよ。あとは、何か共通の話題があるといいかもしれませんね」
私は、ありきたりなことを言った。
「それか……あなたが歌を聴かせて、クラスメイトの認知を変えてしまう、とかね…………」
口元を隠して笑う。きっと、人の悪そうな顔をしているだろう。
「冗談ですよ。白を黒に変えるほどの力はありませんから。話す練習が必要でしたら、お気軽に声をかけてください。これ、名刺です」
「ありがとう、ございます……」
シンプルな名刺には、私の連絡先が書いてある。
「では私は、そろそろ研究室に戻ります。よかったら、また会いしましょう」
「はい。さようなら」
「さよなら」
論吾さんに手を振り、私は公園を後にした。
「ただいまです」
「おかえりなさい」
被験者01に挨拶をして、デスクまで行く。
先ほどの邂逅を思い出した。ああいった子に私の研究が届いていることは、本当に嬉しい。
そっと背中を押すような歌を作るのが、私の仕事だから。
彼は、急いで目線を持っている本に落とす。
なんだろう? 私が白衣だから気になるのだろうか?
言われるまでもなく、公園には相応しくない服装ではある。
向かいのベンチに座る彼を観察すると、私の著作を読んでいることに気付いた。
それは、まあ、見るよな。著者近影のまんまの白衣の人間がいたら。
私は、彼の方に歩いて行き、「こんにちは」と声をかけた。
「こんにちは…………」
恐る恐るといった様子で挨拶を返される。怖がらせたい訳ではないのだけれど。
「それ、私の書いた本なんです」
「は、はい……」
「認知科学に興味があるのですか?」
「……はい」
「ありがとうございます」
一礼すれば、会釈を返された。
「隣、いいですか?」
「はい……!」
隣に座ると、だいぶ端の方に寄って行く彼。気を遣わせるのは本意ではない。
「そんなに避けなくても大丈夫ですよ」
「すいません……」
わずかに、こちらに近付いた。
「私は、ヌリエと申します」
「俺は、退川論吾です」
「よろしくお願いしますね」
「……よろしくお願いします」
私は、気になっていることを尋ねてみることにする。
「論吾さんは、何かを変えたいですか?」
「俺は、その、クラスメイトと仲良くなりたくて…………」
「なるほど。その本は、教室では読まない方がいいでしょうね」
くすりと笑った。
“音楽が認知世界へ与える影響について”なんて読んでいたら、話しかけられづらくなりそう。
「ヌリエさんは、どうすればいいと思いますか……?」
「まずは、挨拶をしたらいいと思いますよ。あとは、何か共通の話題があるといいかもしれませんね」
私は、ありきたりなことを言った。
「それか……あなたが歌を聴かせて、クラスメイトの認知を変えてしまう、とかね…………」
口元を隠して笑う。きっと、人の悪そうな顔をしているだろう。
「冗談ですよ。白を黒に変えるほどの力はありませんから。話す練習が必要でしたら、お気軽に声をかけてください。これ、名刺です」
「ありがとう、ございます……」
シンプルな名刺には、私の連絡先が書いてある。
「では私は、そろそろ研究室に戻ります。よかったら、また会いしましょう」
「はい。さようなら」
「さよなら」
論吾さんに手を振り、私は公園を後にした。
「ただいまです」
「おかえりなさい」
被験者01に挨拶をして、デスクまで行く。
先ほどの邂逅を思い出した。ああいった子に私の研究が届いていることは、本当に嬉しい。
そっと背中を押すような歌を作るのが、私の仕事だから。
