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ひとり、反出生主義についての本を読んでいると、慌てた様子のリリーがやって来た。
「ナマエ、シルベチカを見なかった?!」
「シルベチカって、だあれ?」
「そんな、ナマエも覚えてないの…………?」
「どうしたの? リリー」
「いえ、なんでもないわ……」
彼女は、消沈したように去って行く。
変なリリー。繭期の具合がよくないのかしら?
私は、再び読書に集中することにした。
“生命とは、常に死に向かい続ける悲劇であり、我々は、その連鎖を断ち切るべきであると考える”
著者、デイヴィッド・チェントピエーディは語る。
私は、反出生主義者ではないけれど、彼の意見にもうなずけるところはあった。いずれ死ぬのが運命ならば、私たちは、なんのために生きているのだろう?
繭期っぽい悩み事だわ。
「ごきげんよう、ナマエ! お茶会の時間よ!」
「マーガレット」
元気いっぱいなお姫様が来た。彼女は、私の幼馴染みである。
「今行く」
私は、マーガレットに手を引かれ、お茶会に参加した。後ろから、ジャスミンとクレマチスとミモザもついて来る。
テーブルを挟み、マーガレットと向かい合う。
「ナマエ、今日もあたしを愛してる?」
「ええ、もちろんよ。プリンセス・マーガレット」
「そうよね! あなたはあたしのナイトだものね!」
ナイト。そう、私の役割は、いつからか彼女の騎士になっていた。
姫を愛しても、王子には敵わない騎士。
でも、マーガレットは男の人が苦手だから。王子様なんて現れないの。ずっと。ずうっと。
「それでね、ナマエ」
「うん」
今日のお茶会でも、他愛のない会話を繰り返す。
私たちの、クランでの日常。
その日々も、いつか懐かしむ時が来るのだと思っていた。繭期を終えて、立派な大人の吸血種になって。
でも、そんな日は来なかったのだ。
このクランは、永遠に枯れることのない花園だったのである。
ファルス、いえ、ソフィ・アンダーソンは言った。私たちは、何十年もこのクランにいるのだと。
終わらない、永遠の繭期。
「いや……いやよ…………」
「ナマエ……」
怯える私の名前を、リリーが呼んだ。
私……私とマーガレットは、故郷に帰るの。それから、大人になっても、ずっと一緒にいるの。
それに、私は彼女の…………。
「あれ? 私…………」
そうだ。本の続きが気になるわ。早く戻らないと。
◆◆◆
短剣を持ち、私は、自分の心臓を貫いた。
ありがとう、リリー。
でも、感謝を伝える時間はないみたい。ごめんなさい。
マーガレット。愛しているわ。
さようなら。またいつか会いましょう。
「ナマエ、シルベチカを見なかった?!」
「シルベチカって、だあれ?」
「そんな、ナマエも覚えてないの…………?」
「どうしたの? リリー」
「いえ、なんでもないわ……」
彼女は、消沈したように去って行く。
変なリリー。繭期の具合がよくないのかしら?
私は、再び読書に集中することにした。
“生命とは、常に死に向かい続ける悲劇であり、我々は、その連鎖を断ち切るべきであると考える”
著者、デイヴィッド・チェントピエーディは語る。
私は、反出生主義者ではないけれど、彼の意見にもうなずけるところはあった。いずれ死ぬのが運命ならば、私たちは、なんのために生きているのだろう?
繭期っぽい悩み事だわ。
「ごきげんよう、ナマエ! お茶会の時間よ!」
「マーガレット」
元気いっぱいなお姫様が来た。彼女は、私の幼馴染みである。
「今行く」
私は、マーガレットに手を引かれ、お茶会に参加した。後ろから、ジャスミンとクレマチスとミモザもついて来る。
テーブルを挟み、マーガレットと向かい合う。
「ナマエ、今日もあたしを愛してる?」
「ええ、もちろんよ。プリンセス・マーガレット」
「そうよね! あなたはあたしのナイトだものね!」
ナイト。そう、私の役割は、いつからか彼女の騎士になっていた。
姫を愛しても、王子には敵わない騎士。
でも、マーガレットは男の人が苦手だから。王子様なんて現れないの。ずっと。ずうっと。
「それでね、ナマエ」
「うん」
今日のお茶会でも、他愛のない会話を繰り返す。
私たちの、クランでの日常。
その日々も、いつか懐かしむ時が来るのだと思っていた。繭期を終えて、立派な大人の吸血種になって。
でも、そんな日は来なかったのだ。
このクランは、永遠に枯れることのない花園だったのである。
ファルス、いえ、ソフィ・アンダーソンは言った。私たちは、何十年もこのクランにいるのだと。
終わらない、永遠の繭期。
「いや……いやよ…………」
「ナマエ……」
怯える私の名前を、リリーが呼んだ。
私……私とマーガレットは、故郷に帰るの。それから、大人になっても、ずっと一緒にいるの。
それに、私は彼女の…………。
「あれ? 私…………」
そうだ。本の続きが気になるわ。早く戻らないと。
◆◆◆
短剣を持ち、私は、自分の心臓を貫いた。
ありがとう、リリー。
でも、感謝を伝える時間はないみたい。ごめんなさい。
マーガレット。愛しているわ。
さようなら。またいつか会いましょう。