その他
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
内科医のミョウジナマエは、病院の裏口から退院する患者を見送った。
裏口退院。つまりは、入院患者が死んだということ。
この場にいるのは、主治医だったミョウジと遺族、それから、葬儀屋。
葬儀屋は、木林南雲という。フォレスト葬儀社の社員である。
白衣の男と黒い男は友人ではないが、知らない仲でもない。
ミョウジは、救えなかった命を引き摺り過ぎない人間ではあるが、それでも酒に逃げたい時はあった。そんな時に呼ぶのが、木林である。
その日の晩、ミョウジと木林は居酒屋へ行った。
ミョウジは、白衣から喪服に着替えている。木林は、いつもの格好だ。
「相変わらず、私服はそれですか」
「ああ。また死なせたからな」
日本酒を飲みながら、黒い男たちは話す。
「傲慢ですね」
「うるせぇ」
別に、何もかも自分のせいだなんて思ってはいない。
ただ、事実として指の隙間からこぼれるものがあるというだけ。
「永遠の命が欲しい」
「ロマンチック」
「万能薬でもいい」
「ファンタスティック」
木林の相槌を聞きながら、ミョウジは溜め息をついた。
「あんたは、欲しいものは?」
「これですかね」
指で円を作り、金を表す木林。
「俗物」
「なんとでも」
ミョウジに罵られても、木林は笑みを絶やさない。
「木林」
「はい」
「兄の情報は?」
「ありません。身元不明のご遺体の画像は、全部お送りしています」
「そうか」
ミョウジには、行方不明の双子の兄がいる。どこかで生きているのか、の垂れ死んでいるのか。消息は掴めない。
ミョウジが金を払い、木林が男性の遺体の画像を送る。ふたりは、そういう取り引きをしている。
ミョウジの兄は、薬学科の天才と言われていた。
その兄がいなくなってから、何年経ったのだろう?
もうすぐ、失踪届を出すことになるかもしれない。
「馬鹿みたいな話なんだが」
「はい」
「兄には、死んでいてほしいんだ」
「何故です?」
「兄は、いつも退屈していた。それで、ろくでもない犯罪計画を立てる遊びを四六時中していたんだ。俺は、それが現実になるのが怖い」
木林は、ミョウジが随分酔っていることに気付いた。弱音を吐くのは珍しい。
「俺は、兄を止められない…………」
だから、死んでいてほしい。
「ミョウジさん」
「ナマエ」
「ナマエさんが気にすることないですよ」
「そうはいかないだろう。家族なんだから」
「そういうものですか」
ミョウジは、うなずき、日本酒を飲み干した。
血縁というしがらみが、ミョウジナマエを捕らえて離さない。
「煙草、いいか?」
「どうぞ」
一本取り出し、ライターで火を着けた。
ミョウジの喫煙は、自傷みたいなもので。それを止めない木林は、やはり友人ではなかった。
ふたりは、たまたま近くで生きている。
裏口退院。つまりは、入院患者が死んだということ。
この場にいるのは、主治医だったミョウジと遺族、それから、葬儀屋。
葬儀屋は、木林南雲という。フォレスト葬儀社の社員である。
白衣の男と黒い男は友人ではないが、知らない仲でもない。
ミョウジは、救えなかった命を引き摺り過ぎない人間ではあるが、それでも酒に逃げたい時はあった。そんな時に呼ぶのが、木林である。
その日の晩、ミョウジと木林は居酒屋へ行った。
ミョウジは、白衣から喪服に着替えている。木林は、いつもの格好だ。
「相変わらず、私服はそれですか」
「ああ。また死なせたからな」
日本酒を飲みながら、黒い男たちは話す。
「傲慢ですね」
「うるせぇ」
別に、何もかも自分のせいだなんて思ってはいない。
ただ、事実として指の隙間からこぼれるものがあるというだけ。
「永遠の命が欲しい」
「ロマンチック」
「万能薬でもいい」
「ファンタスティック」
木林の相槌を聞きながら、ミョウジは溜め息をついた。
「あんたは、欲しいものは?」
「これですかね」
指で円を作り、金を表す木林。
「俗物」
「なんとでも」
ミョウジに罵られても、木林は笑みを絶やさない。
「木林」
「はい」
「兄の情報は?」
「ありません。身元不明のご遺体の画像は、全部お送りしています」
「そうか」
ミョウジには、行方不明の双子の兄がいる。どこかで生きているのか、の垂れ死んでいるのか。消息は掴めない。
ミョウジが金を払い、木林が男性の遺体の画像を送る。ふたりは、そういう取り引きをしている。
ミョウジの兄は、薬学科の天才と言われていた。
その兄がいなくなってから、何年経ったのだろう?
もうすぐ、失踪届を出すことになるかもしれない。
「馬鹿みたいな話なんだが」
「はい」
「兄には、死んでいてほしいんだ」
「何故です?」
「兄は、いつも退屈していた。それで、ろくでもない犯罪計画を立てる遊びを四六時中していたんだ。俺は、それが現実になるのが怖い」
木林は、ミョウジが随分酔っていることに気付いた。弱音を吐くのは珍しい。
「俺は、兄を止められない…………」
だから、死んでいてほしい。
「ミョウジさん」
「ナマエ」
「ナマエさんが気にすることないですよ」
「そうはいかないだろう。家族なんだから」
「そういうものですか」
ミョウジは、うなずき、日本酒を飲み干した。
血縁というしがらみが、ミョウジナマエを捕らえて離さない。
「煙草、いいか?」
「どうぞ」
一本取り出し、ライターで火を着けた。
ミョウジの喫煙は、自傷みたいなもので。それを止めない木林は、やはり友人ではなかった。
ふたりは、たまたま近くで生きている。