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彼女たちが恋人同士なのは、理解している。
私は、人間が言うところの“魔物”であり、人に興味があった。
人間の恋愛というのは、必ずしも生殖を伴うものではないらしい。
ファリンとマルシルは、私の良き友人であり、人を理解するための助けになってくれた。
私の無知からくる不躾だった質問にも、嫌な顔をせずに答えてくれて、感謝に堪えない。
「恋とは何か?」と尋ねた時、ふたりは、「特別な好きを持つこと」だと答えた。
私は、特別な好きを持っている。
だが、それは、人間の“好き”と同じなのだろうか?
人間は、何故、私に似た姿をしている?
海洋性テンタクルスの亜種。それが、人間が私に付けた種族名。人に似た上半身と、触手で出来た下半身を持つ。
どうも私は、人の言葉で話すと幼い印象を与えるらしい。
それは、私をあの迷宮に召喚した者が、少年だったせいだろう。
私は、1020歳である。人間で言えば、成人だ。故郷では、年長者であった。
故郷の海は、遥か遠い。
いつか、想い人にも見せたいが、彼は、“王”という権威のある役目を背負っており、おいそれと遠出は出来ない。
恋の話に戻ろう。
ファリンとマルシルは、抱き合ったり、口付けを交わしたりする仲で、私は、それに憧れた。
城の庭園で手を繋ぎ、ふたりで笑いながら歩いているところを見た時は、なんて美しいのだろうと思ったものだ。
私の全ての腕で、彼を抱き締められたら。そう思うが、きっとそれは、良くないことだ。端から見れば、魔物に襲われているように誤解されるだろうから。
人の習俗については、まだまだ知らないことが多い。
例えば、婚姻。恋する気持ちだけでは、結ぶことが出来ないこともあるそうだ。人種・信仰・身分・政略などが、複雑に関係している。
私の種族は、至って単純だ。好きな相手を見付けたら、生殖器官で卵を産む。雌雄同体なので、交尾はしない。
生命とは、生きて増えることだけを目的としているものも多い。
海洋性テンタクルスは、植物に近しい存在のように思う。
ああ、でも。自由に動ける体で良かった。
私は、あなたに会いに行ける。
「おーい」
「マルシル! ファリン!」
「一緒に、散歩しない?」
「うん!」
水中から出て、手を繋いで歩くふたりの後ろをついて行く。
海風が、肌を撫でた。鳥の囀り。彼女たちの話し声。
私の夢のような風景。
生きることは、対話であった。
私は、人間が言うところの“魔物”であり、人に興味があった。
人間の恋愛というのは、必ずしも生殖を伴うものではないらしい。
ファリンとマルシルは、私の良き友人であり、人を理解するための助けになってくれた。
私の無知からくる不躾だった質問にも、嫌な顔をせずに答えてくれて、感謝に堪えない。
「恋とは何か?」と尋ねた時、ふたりは、「特別な好きを持つこと」だと答えた。
私は、特別な好きを持っている。
だが、それは、人間の“好き”と同じなのだろうか?
人間は、何故、私に似た姿をしている?
海洋性テンタクルスの亜種。それが、人間が私に付けた種族名。人に似た上半身と、触手で出来た下半身を持つ。
どうも私は、人の言葉で話すと幼い印象を与えるらしい。
それは、私をあの迷宮に召喚した者が、少年だったせいだろう。
私は、1020歳である。人間で言えば、成人だ。故郷では、年長者であった。
故郷の海は、遥か遠い。
いつか、想い人にも見せたいが、彼は、“王”という権威のある役目を背負っており、おいそれと遠出は出来ない。
恋の話に戻ろう。
ファリンとマルシルは、抱き合ったり、口付けを交わしたりする仲で、私は、それに憧れた。
城の庭園で手を繋ぎ、ふたりで笑いながら歩いているところを見た時は、なんて美しいのだろうと思ったものだ。
私の全ての腕で、彼を抱き締められたら。そう思うが、きっとそれは、良くないことだ。端から見れば、魔物に襲われているように誤解されるだろうから。
人の習俗については、まだまだ知らないことが多い。
例えば、婚姻。恋する気持ちだけでは、結ぶことが出来ないこともあるそうだ。人種・信仰・身分・政略などが、複雑に関係している。
私の種族は、至って単純だ。好きな相手を見付けたら、生殖器官で卵を産む。雌雄同体なので、交尾はしない。
生命とは、生きて増えることだけを目的としているものも多い。
海洋性テンタクルスは、植物に近しい存在のように思う。
ああ、でも。自由に動ける体で良かった。
私は、あなたに会いに行ける。
「おーい」
「マルシル! ファリン!」
「一緒に、散歩しない?」
「うん!」
水中から出て、手を繋いで歩くふたりの後ろをついて行く。
海風が、肌を撫でた。鳥の囀り。彼女たちの話し声。
私の夢のような風景。
生きることは、対話であった。