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特別なにかに秀でたワケでも、なにかに打ち込んでいるワケでもない。その様は、まさに“星見純那の彼氏”だった。
その男は、大場ななにとっては、突然に現れた存在。青天の霹靂。
「付き合ってる人がいるの」
「え?」
「彼氏、出来たの」
純那は、はにかみながら告げた。
「おめでとう、純那ちゃん」
「ありがとう」
こういう時は、祝福すべきなのだろう。友達だから。
そう、友達。そういう役。
舞台は、まだ続いている。
星見純那の人生を眼差す観客がいる以上は。
その観客の中から、舞台に押し上げられた者こそ、彼女の恋人だった。
ななは、その男に対して、純黒の感情を抱いたが、蓋をする。
件の彼氏は、敵ではない。星の輝きを妨げる者でもない。ともすれば、新たな可能性を秘めた存在。
でも、そんなこと、どうでもいい。
ひとりになったななは、壁を爪先で蹴った。
「…………」
台本の空白。発するべき台詞を見失う。
◆◆◆
純那と彼氏は、順調に交際を続けていった。
一緒に観劇をしたり、映画を観たり、勉強をしたり。共に過ごす時間は、かけがえのないものになる。
そうして月日を重ね、ふたりは、あることを決めた。
「彼に、結婚しようって言われて」
「……………」
「することにした。愛してるから」
「おめでとう」
張り付けた笑みを崩すことなく、ななは祝福する。
「うん。ありがとう。結婚式、来てね」
「もちろん」
純那のキラめきは、今までに見たことがない色彩を放っていた。
それが、あの男がもたらしたものだというのが羨ましい。
幸せそうな彼女に水を差したくないが、ななの心に刺さったひとつの棘が痛む。
「どこが、そんなに好きなの?」
「どこっていうか、彼は、日常の一部みたいな感じなの」
「そっか」
嗚呼。“星見純那の彼氏”だな。
冷えた頭で、そう思った。
全ては、脚本通りに進行する。運命のように。
不可視の導き手によって、彼女と彼は、この先も共に生きていく。
大場ななは、男に刀を向けられない。彼は、舞台人ではなく、舞台装置だから。
きっと、ふたりの物語が終わるまで、あなたは幸せなのだろう。
誰よりも近くで見ていた輝きが、見知らぬものへと変わっている。
それが、例え良いことだとしても、大場ななに刺さった棘は抜けない。
泥の分際で、私の輝きを奪わないで。
◆◆◆
こうして、ふたりは、ずっと幸せに暮らしました。めでたし、めでたし。
その男は、大場ななにとっては、突然に現れた存在。青天の霹靂。
「付き合ってる人がいるの」
「え?」
「彼氏、出来たの」
純那は、はにかみながら告げた。
「おめでとう、純那ちゃん」
「ありがとう」
こういう時は、祝福すべきなのだろう。友達だから。
そう、友達。そういう役。
舞台は、まだ続いている。
星見純那の人生を眼差す観客がいる以上は。
その観客の中から、舞台に押し上げられた者こそ、彼女の恋人だった。
ななは、その男に対して、純黒の感情を抱いたが、蓋をする。
件の彼氏は、敵ではない。星の輝きを妨げる者でもない。ともすれば、新たな可能性を秘めた存在。
でも、そんなこと、どうでもいい。
ひとりになったななは、壁を爪先で蹴った。
「…………」
台本の空白。発するべき台詞を見失う。
◆◆◆
純那と彼氏は、順調に交際を続けていった。
一緒に観劇をしたり、映画を観たり、勉強をしたり。共に過ごす時間は、かけがえのないものになる。
そうして月日を重ね、ふたりは、あることを決めた。
「彼に、結婚しようって言われて」
「……………」
「することにした。愛してるから」
「おめでとう」
張り付けた笑みを崩すことなく、ななは祝福する。
「うん。ありがとう。結婚式、来てね」
「もちろん」
純那のキラめきは、今までに見たことがない色彩を放っていた。
それが、あの男がもたらしたものだというのが羨ましい。
幸せそうな彼女に水を差したくないが、ななの心に刺さったひとつの棘が痛む。
「どこが、そんなに好きなの?」
「どこっていうか、彼は、日常の一部みたいな感じなの」
「そっか」
嗚呼。“星見純那の彼氏”だな。
冷えた頭で、そう思った。
全ては、脚本通りに進行する。運命のように。
不可視の導き手によって、彼女と彼は、この先も共に生きていく。
大場ななは、男に刀を向けられない。彼は、舞台人ではなく、舞台装置だから。
きっと、ふたりの物語が終わるまで、あなたは幸せなのだろう。
誰よりも近くで見ていた輝きが、見知らぬものへと変わっている。
それが、例え良いことだとしても、大場ななに刺さった棘は抜けない。
泥の分際で、私の輝きを奪わないで。
◆◆◆
こうして、ふたりは、ずっと幸せに暮らしました。めでたし、めでたし。