その他

夢小説設定

本棚全体の夢小説設定
苗字
名前

 小さな頃から、本の虫だった。
 両親に買い与えられた絵本たち。アンデルセンにグリム童話に日本昔話。
 ミョウジナマエの世界は、それらによって広げられていった。
 そして、彼は高校生になり、図書館でバイトをするように。図書委員の仕事がない日は、真面目に働いた。

ミョウジくん、配架お願い」
「はい」

 ミョウジが、本を棚に並べていると、ひとりの高校生男子が近付いて来て、尋ねる。

「バイト?」
「はい」
「オレ、石平紀一。ここでバイトしてる」
「君が、あの石平くん。僕は、ミョウジナマエ。会うのは初めてだね」

 ミョウジは、笑顔で自己紹介をした。

「あ、仕事あるから。またね、石平くん」
「おう」

 その日は、それだけ話して終わる。
 別の日、ふたりは、図書館の利用者同士として再会した。

「よ、ミョウジ
「こんにちは、石平くん」
「なにか探してんの?」
「うん。ピンときた本を借りようと思って」
「へぇ」

 ミョウジは、海外小説の棚を隅から隅まで見ている。

「あ」

 彼が手にしたのは、一冊のSF小説。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?ってさ、パロディは読んだことあるのに、元ネタの原作は読んだことないんだ」
「あー。散々擦られてるやつね」
「これにするよ」

 ミョウジは、貸し出しカウンターへ向かう。
 借りた本を鞄に入れ、図書館の外に出ると、遅れて石平も来た。

「なあ、少し話さね?」
「いいよ」

 外のベンチに並び、ふたりは話始める。

ミョウジは、なんで図書館でバイトしてんの?」
「本が好きだから」
「みんな、そうなんだなぁ」
「石平くんもだろ?」
「まぁな」

 ミョウジと石平は、読んだ小説の話をした。恩讐の彼方にとか、テスカトリポカとか。
 話しているうちに分かったのだが、ミョウジは、SFとホラーとミステリが好きらしい。

「オススメのSFって何?」
「天の光はすべて星。名作だよ。読後感が爽やかで好きなんだ」
「なるほどね」

 ミョウジの眼鏡の奥の瞳は、キラキラと輝いていた。

「オススメのホラーは?」
「正確には、怪奇小説だけど、江戸川乱歩のパノラマ島奇譚かな」
「ふーん」

 メモアプリに、さっきのタイトルと今聞いたタイトルを打ち込む石平。

「じゃあ、最後。ミステリのオススメ!」
「やっぱり、シャーロック・ホームズがいいと思うよ」
「ほー」

 石平は、満足げに笑う。

「ありがとな、ミョウジ
「どういたしまして。オススメを訊かれるのは好きだから、嬉しいよ」

 その後は、ミョウジが石平からオススメの本を教えてもらった。
 読書家の男子高校生たちの談話は、続く。

◆◆◆

 白井里雪は、陽キャが苦手である。

「白井さん、ブッカーかけの手伝いに来ました」
「ああ、ありがとう。ミョウジくん」

 キラキラした笑顔で、ミョウジナマエはバイトに勤しむ。

「…………」

 ふたりは、静かに、テキパキと蔵書に保護シートを貼った。
 そして、休憩時間になり、白井が恐れていた事態が起きる。

「白井さん、最近、面白い本ありました?」
「うん…………」

 助かった。本の話だ。
 ほっとする白井。
 ミョウジは、明朗快活な少年である。話題によっては、少し話が合わない。
 例えば、「放課後にクラスメイトとカラオケに行った」とか「男女混合の友達と勉強会をした」とか「女子に告白された」とか。眩しい青春を送っているのが、ありありと分かって、コンプレックスを刺激される。

「そういえば、この前、先生に個人的に小説を貸してもらったんですよ」
「へ、へぇ~」
「火車と青の炎と朗読者」
「宮部みゆき、貴志祐介、ベルンハルト・シュリンクかぁ」
「はい。全部面白かったです」

 確か、ミョウジの言う「先生」とは、担任の若い女性教師だったはず。なんのてらいもなく、交流していると話すことに感心した。

「それで、今度は僕が先生に貸そうと思うんですけど、何がいいですかね?」
「事前に、苦手なものを訊いた方がいいんじゃない?」
「なるほど、そうですね。ホラーが平気だといいんですけど」

 それなりに平和に休憩を終えて、ふたりは仕事を再開する。
 図書館という接点がなければ、絶対に話さないタイプの少年だと、白井は常々思っていた。

◆◆◆

「石平くん、お疲れ様」
「お疲れ、ミョウジ
「途中まで一緒に行こうよ」
「おう」

 バイト終わりに、ミョウジと石平は、並んで歩き出す。

「ちょっと、石平くんに相談があるんだけど」
「相談? オレに?」
「うん。白井さんって、恋人とか好きな人とかいるのかな?」
「えっ!? サァ……」

 ミョウジって、白井サンのこと好きなの?
 そう疑問が浮かんだ直後に、ミョウジが答えを口にした。

「僕、白井さんのことが好きなんだ」
「へぇ~」

 言うんだ。
 石平は、素直なミョウジの言葉の続きを待つ。

「だから、付き合いたい」
「おー。スゲーな、ミョウジ

 堂々としたミョウジの台詞を、好ましく思った。

「知ってる? 白井さんって、僕のことが苦手なんだ」
「へっ?」
「なのに、ちゃんと話してくれるから、それが可愛くてさぁ」

 眼鏡のレンズの奥の目を細め、頬を赤く染めて、ミョウジは言う。

「お前、結構悪いヤツだな」
「内緒だよ」

 人差し指を唇に当てて、ミョウジナマエは微笑んだ。
52/85ページ
スキ