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ヤバい奴に絡まれた。
「おい、何ぶつかってんだよ? 治療費払えよ」
「ぶつかってきたのは、そっちだろ」
「ああ? 生意気言ってんじゃねぇぞ。俺の後ろにはなぁ————」
男がそこまで言ったところで、俺の襟首を掴む手が、誰かに掴まれ、外される。
「あ? なんだ? テメェ」
「…………」
制服で、風鈴高校の生徒だと分かった。長髪、長身の男子。
「なんとか言えや!」
男が、拳を振り上げる。それを軽くかわして、少年は男を殴り飛ばした。
「おおー」
俺は思わず、感嘆の声を上げる。
突っかかってきた男は、気絶したらしい。
「ありがとう。風鈴の子だよな? 助かったよ」
「…………」
「君の名前は?」
「……杉下」
「杉下くんね。俺、そこの肉屋の店主やってんだ。今度、お礼するよ」
「別にいい」
杉下くんは、ぶっきらぼうに言った。
「いやいや、俺が嫌だし。じゃあ、またね」
「…………」
去って行く少年を見送り、俺は精肉店へ帰る。
「今日も頑張ろう」
◆◆◆
あれから、数日が経った。杉下くんは、やって来ない。
まあ、気長に待とう。と思った矢先に、背の高い彼が現れた。
「いらっしゃい。杉下くん、牛串食べる?」
「……ああ」
「どうぞ」
牛串を一本手渡す。
杉下くんは、がぶりと肉に噛み付き、咀嚼して嚥下する。気持ちいい食べっぷりだ。
「なにがおかしい?」
「あー、ごめんごめん。人が食べてるとこ見るの好きで。ニヤけてた?」
「…………」
無言で、牛串を食べ続ける。肯定なんだろう。
「ごちそうさま」
「こちらこそ、ありがとう」
あーっ! もっと食べさせたい!
メンチカツとかソーセージとか豚カツとかハムとか!
「じゃあ」
「うん。それじゃあ、またね。杉下くん」
歩き出す彼に、手を振る。
また会えるといいな。
さて。俺は、仕事に戻ることにした。
時は、夕暮れ。
夕飯の買い物に来る人や、買い食いをする学生などを相手に、商売をした。
「豚バラブロックください」
「はいよ」
ボウフウリンのお陰で、街の治安はよくなったとはいえ、悪人ってのは、絶えない。
俺は、喧嘩が出来ないから、彼らのことを頼りにしてる。
いくら喧嘩が強くても、空腹じゃあいけない。勝てるもんも勝てなくなってしまう。
だから、せめて、俺は俺の出来ることをしよう。みんなが飢えることのないように。
しがない街の肉屋は、そんなことを考えている。
「おい、何ぶつかってんだよ? 治療費払えよ」
「ぶつかってきたのは、そっちだろ」
「ああ? 生意気言ってんじゃねぇぞ。俺の後ろにはなぁ————」
男がそこまで言ったところで、俺の襟首を掴む手が、誰かに掴まれ、外される。
「あ? なんだ? テメェ」
「…………」
制服で、風鈴高校の生徒だと分かった。長髪、長身の男子。
「なんとか言えや!」
男が、拳を振り上げる。それを軽くかわして、少年は男を殴り飛ばした。
「おおー」
俺は思わず、感嘆の声を上げる。
突っかかってきた男は、気絶したらしい。
「ありがとう。風鈴の子だよな? 助かったよ」
「…………」
「君の名前は?」
「……杉下」
「杉下くんね。俺、そこの肉屋の店主やってんだ。今度、お礼するよ」
「別にいい」
杉下くんは、ぶっきらぼうに言った。
「いやいや、俺が嫌だし。じゃあ、またね」
「…………」
去って行く少年を見送り、俺は精肉店へ帰る。
「今日も頑張ろう」
◆◆◆
あれから、数日が経った。杉下くんは、やって来ない。
まあ、気長に待とう。と思った矢先に、背の高い彼が現れた。
「いらっしゃい。杉下くん、牛串食べる?」
「……ああ」
「どうぞ」
牛串を一本手渡す。
杉下くんは、がぶりと肉に噛み付き、咀嚼して嚥下する。気持ちいい食べっぷりだ。
「なにがおかしい?」
「あー、ごめんごめん。人が食べてるとこ見るの好きで。ニヤけてた?」
「…………」
無言で、牛串を食べ続ける。肯定なんだろう。
「ごちそうさま」
「こちらこそ、ありがとう」
あーっ! もっと食べさせたい!
メンチカツとかソーセージとか豚カツとかハムとか!
「じゃあ」
「うん。それじゃあ、またね。杉下くん」
歩き出す彼に、手を振る。
また会えるといいな。
さて。俺は、仕事に戻ることにした。
時は、夕暮れ。
夕飯の買い物に来る人や、買い食いをする学生などを相手に、商売をした。
「豚バラブロックください」
「はいよ」
ボウフウリンのお陰で、街の治安はよくなったとはいえ、悪人ってのは、絶えない。
俺は、喧嘩が出来ないから、彼らのことを頼りにしてる。
いくら喧嘩が強くても、空腹じゃあいけない。勝てるもんも勝てなくなってしまう。
だから、せめて、俺は俺の出来ることをしよう。みんなが飢えることのないように。
しがない街の肉屋は、そんなことを考えている。