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明るい髪色。丸眼鏡。ピアスにイヤーカフ。口にくわえた煙草は、マルボロ。派手な柄シャツ。
教育学部に在籍していて、教師を目指してる。
実は、結構寂しがり屋。
俺の恋人、芹澤朋也さん。全部が大好き。
「ナマエ」
「はい」
「何じろじろ見てんだよ?」
「いや、好きだなぁって」
「ばっ……よく恥ずかしげもなく言えるな、そんなこと……」
朋也さんは、頬を赤らめた。
「だって、朋也さんのこと好きっすから」
歳がひとつ下の俺を、あんたは気にかけてくれて。想いを伝えたら、受け入れてくれた。
今は、大学の喫煙室で、ふたりきり。だから、いくらでも好きだと言える。
「今日、もう帰るんすよね? よかったら、俺ん家来ません?」
「ナマエ、ひとり暮らしだよな?」
「そうっす。ワンルームのアパートで」
「まあ、興味はある」
「じゃ、決まりっすね!」
俺たちは煙草の火を消し、喫煙室を後にした。
俺の住むアパートは、大学のすぐ近くにある、少し古めかしい建物だ。部屋は、二階の端。
「どうぞ」
「お邪魔しまーっす。うわ、デケェ本棚」
「人文学部っすからねぇ。読書好きは、どうしてもこうなるんすよ」
「へぇ。お前が、草太の部屋に行ったら楽しいかもな。あいつの部屋、本だらけだから」
「ふーん」
また草太さんの話だ。別にいいけどね。
「朋也さん」
「ん?」
「キスしていい?」
「……いいよ」
頬に手を添えて、口付けをした。嗅ぎ慣れた煙草の香りがする。
「ん……ナマエ…………」
深くキスすると、朋也さんも積極的に舌を絡めてきた。可愛い。
「は……ナマエ、好きだ…………」
「嬉しいっす…………」
最後に、チュ、と音を立てて、頬にキスを落とした。
「ナマエって、キス好きだよな」
「朋也さんが好きなんですー」
「おう…………」
「いつでも朋也さんのことハグしたいし、キスしたいし、抱きたいっすよ」
「抱き……!?」
ハグはしたし、キスもしたから。その先もしたい。
「ダメなんすか?」
「ダメ、じゃない……」
「わーい」
朋也さんを抱き締める。彼も、俺のことを抱き締め返してくれた。
「俺は、ナマエのことを可愛いと思ってて……だけど、最近はカッコよくも見えてきてて……ズルい奴だよ、お前は…………」
「朋也さんも、可愛いしカッコいいっすよ?」
ぎゅっと、朋也さんの腕に力が入る。そして、耳元で囁くように言葉をこぼした。
「俺は、全然だよ。人恋しくて、潰れそうになったことがある弱い人間だし」
「そんなの、別に弱さじゃないっしょ。あんたが、友人想いで優しい人だって、俺は知ってますよ」
あんたの言うそれが、欠点なんだとしても、俺は愛すよ。あんたの全部、俺が掬い上げて、愛すよ。
「だからね、朋也さんは、もっと俺を頼っていいんすよ」
「……ありがとう、ナマエ」
顔を上げた朋也さんの目は、涙で潤んでいた。綺麗だと思う。
「愛してますから、もう置いて行かないでくださいね?」
「約束する」
朋也さんが、友人のためにどこまでも行くなら、俺は、あんたのためにどこまでも行こう。
◆◆◆
「ミョウジ~」
「んー?」
人文学部の友人に呼ばれ、俺は立ち止まる。
「次の共通、一緒に行こうぜ」
「オーケー」
「ところでさ、最近どうよ?」
「なにが?」
神妙な顔で訊かれた質問に、質問で返した。
「そりゃあ、君、恋よ、恋」
「ああ。恋人出来た」
「マジ!?」
この友人は、ちょっと恋愛に夢を見過ぎているところがある。そんなにキラキラしたもんじゃないぞ。
「いいな~。どんな人?」
「歳上で、可愛くて、カッコよくて、寂しがり屋」
「へ~。いいじゃん。お幸せにな」
「サンキュー」
ふたりで、共通科目の講義に出る。英語は、正直退屈だが、取らないと留年してしまうから、仕方ない。
その後、帰宅する友人と別れて、食堂へ向かう。その途中で、偶然彼に会った。
宗像草太さん。朋也さんの親友。ミステリアスな美人。
「こんちは、草太さん」
「こんにちは、ミョウジくん」
俺と彼は、微妙な距離感を保ちつつ、挨拶を交わす。
「食堂っすか?」
「ああ」
「一緒、いいすか?」
「いいよ」
恋人の親友だからって仲良くしなくてもいいかもしれないけど、俺はこの人と仲良くなりたい。
ふたりともメニューを選び、注文をして、席を取る。
「草太さん家って、本がたくさんあるってマジすか?」
「ああ、古い本が山ほどある」
「へぇ。気になるなぁ」
「ミョウジくんが読んでも、面白いかどうか……」
「それは俺が決めることっすよ~」
「それはそうだけど。家業に関する資料なんだ」
草太さんの家業?
「俄然興味出てきたっすわ」
「はは。じゃあ、今度家に来るといい。芹澤が案内してくれるだろうから」
「マジで行きますよ?」
「うん。いいよ」
草太さんは、微笑んでいる。非日常的な美しさだ。
「ミョウジくんは、芹澤の特別な人だから。仲良くなりたいんだ」
「そうなんすか? 俺も草太さんと仲良くなりたいなって思ってますよ」
「そうか。ありがとう、ミョウジくん」
「いえいえ。俺と朋也さんで、草太さんが無茶しないように見てますからね」
「いや、芹澤の方こそ無茶するだろ」
それは、その通り。というか、ふたりとも無茶するんだよな。
「じゃあ、俺と草太さんで、朋也さんのこと見ときましょうよ」
「そうだな。そうする」
俺は、すっと片手を差し出した。それを、草太さんが取り、握手を交わす。
「ではでは、朋也さん見守り同盟を結ぶってことで。よろしくっす」
「よろしく」
俺たちは、笑い合って約束をした。
実は、もうひとり無茶をする人がいることを、この時の俺は知らなかったんだ。
◆◆◆
何度目かのデート。ふたりで、水族館に来た。
「ナマエはさ、なんで人文学部に?」
ペンギンを眺めながら、朋也さんに訊かれる。
「俺、昔、体弱かったんすよね。それで、あんま外出られなくて。親が絵本をたくさん買ってくれました」
「それで、読書好きになった?」
「そうっす。ちなみに、好きな作家は、夢野久作っすよ」
「へぇ」
「俺に興味出てきた?」
「うっせ」と言われて、頭を小突かれた。照れ隠しらしい。
「前からあったよ、興味」
「そっすか」
嬉しいな。
ペンギンが、お姉さんから魚をもらって、食べている。
「ナマエって、嬉しい時に笑うし、悲しい時に泣く奴だよな」
「そりゃあ、まあ。分かりやすい奴でしょ?」
「そういう素直なとこが好きなんだよなぁ」
互いを横目で見た。
「照れてんの?」
「そっちこそ」
なんか、今日の朋也さんは、デレている。そんな気がする。
俺たちは移動し、カラフルな魚たちの水槽の前に行った。
「お前は、どこへ行っても幸せに生きていけそうだよな」
「あんたが隣にいるならね」
「そ、ういうの反則だろ」
「知りませーん」
朋也さんは、口元を手で隠してる。
「あーもう、ダメだ、俺。お前といるとカッコつかねぇ」
「カッコつけたいんすか?」
「俺、歳上だし」
「関係ある? それに、充分カッコいいっすよ」
可愛いし、カッコいい。前に言った通り。
「だぁー! もう! 話変える! 夢野久作が好きなの、結構意外なんだけど。いや、ドグラ・マグラしか知らないけどよ」
「俺が特に好きなのは、猟奇歌っすね。名前の通り、猟奇的な短歌なんすけど、俺の中からは絶対に出て来ないものだから、好きっす」
「ふーん。ナマエと猟奇的って遠過ぎるだろ」
「そうっすねぇ」
でも、子供の頃はね、死が近かったんだよ。俺は、そのうち死ぬんだろうなって思ってた。大人になれずに死ぬと思ってた。
俺は、世界を呪ったことがある。あの過去を越えて、あんたに会えてよかった。
「朋也さんのこと、愛してる」
「なんだよ、急に」
「朋也さんは?」
「……愛してるよ」
「へへ」
目を細めて、口角を引き上げる。そっと、手を繋いだ。
水族館を見て回った後、俺は朋也さんの車に乗る。俺のために、古いアイドルソングをかけてくれるあんたが、愛おしい。
朋也さんは寂しがり屋だから、俺は、あんたを看取ってから死ぬよ。
これが、俺なりの愛だ。
教育学部に在籍していて、教師を目指してる。
実は、結構寂しがり屋。
俺の恋人、芹澤朋也さん。全部が大好き。
「ナマエ」
「はい」
「何じろじろ見てんだよ?」
「いや、好きだなぁって」
「ばっ……よく恥ずかしげもなく言えるな、そんなこと……」
朋也さんは、頬を赤らめた。
「だって、朋也さんのこと好きっすから」
歳がひとつ下の俺を、あんたは気にかけてくれて。想いを伝えたら、受け入れてくれた。
今は、大学の喫煙室で、ふたりきり。だから、いくらでも好きだと言える。
「今日、もう帰るんすよね? よかったら、俺ん家来ません?」
「ナマエ、ひとり暮らしだよな?」
「そうっす。ワンルームのアパートで」
「まあ、興味はある」
「じゃ、決まりっすね!」
俺たちは煙草の火を消し、喫煙室を後にした。
俺の住むアパートは、大学のすぐ近くにある、少し古めかしい建物だ。部屋は、二階の端。
「どうぞ」
「お邪魔しまーっす。うわ、デケェ本棚」
「人文学部っすからねぇ。読書好きは、どうしてもこうなるんすよ」
「へぇ。お前が、草太の部屋に行ったら楽しいかもな。あいつの部屋、本だらけだから」
「ふーん」
また草太さんの話だ。別にいいけどね。
「朋也さん」
「ん?」
「キスしていい?」
「……いいよ」
頬に手を添えて、口付けをした。嗅ぎ慣れた煙草の香りがする。
「ん……ナマエ…………」
深くキスすると、朋也さんも積極的に舌を絡めてきた。可愛い。
「は……ナマエ、好きだ…………」
「嬉しいっす…………」
最後に、チュ、と音を立てて、頬にキスを落とした。
「ナマエって、キス好きだよな」
「朋也さんが好きなんですー」
「おう…………」
「いつでも朋也さんのことハグしたいし、キスしたいし、抱きたいっすよ」
「抱き……!?」
ハグはしたし、キスもしたから。その先もしたい。
「ダメなんすか?」
「ダメ、じゃない……」
「わーい」
朋也さんを抱き締める。彼も、俺のことを抱き締め返してくれた。
「俺は、ナマエのことを可愛いと思ってて……だけど、最近はカッコよくも見えてきてて……ズルい奴だよ、お前は…………」
「朋也さんも、可愛いしカッコいいっすよ?」
ぎゅっと、朋也さんの腕に力が入る。そして、耳元で囁くように言葉をこぼした。
「俺は、全然だよ。人恋しくて、潰れそうになったことがある弱い人間だし」
「そんなの、別に弱さじゃないっしょ。あんたが、友人想いで優しい人だって、俺は知ってますよ」
あんたの言うそれが、欠点なんだとしても、俺は愛すよ。あんたの全部、俺が掬い上げて、愛すよ。
「だからね、朋也さんは、もっと俺を頼っていいんすよ」
「……ありがとう、ナマエ」
顔を上げた朋也さんの目は、涙で潤んでいた。綺麗だと思う。
「愛してますから、もう置いて行かないでくださいね?」
「約束する」
朋也さんが、友人のためにどこまでも行くなら、俺は、あんたのためにどこまでも行こう。
◆◆◆
「ミョウジ~」
「んー?」
人文学部の友人に呼ばれ、俺は立ち止まる。
「次の共通、一緒に行こうぜ」
「オーケー」
「ところでさ、最近どうよ?」
「なにが?」
神妙な顔で訊かれた質問に、質問で返した。
「そりゃあ、君、恋よ、恋」
「ああ。恋人出来た」
「マジ!?」
この友人は、ちょっと恋愛に夢を見過ぎているところがある。そんなにキラキラしたもんじゃないぞ。
「いいな~。どんな人?」
「歳上で、可愛くて、カッコよくて、寂しがり屋」
「へ~。いいじゃん。お幸せにな」
「サンキュー」
ふたりで、共通科目の講義に出る。英語は、正直退屈だが、取らないと留年してしまうから、仕方ない。
その後、帰宅する友人と別れて、食堂へ向かう。その途中で、偶然彼に会った。
宗像草太さん。朋也さんの親友。ミステリアスな美人。
「こんちは、草太さん」
「こんにちは、ミョウジくん」
俺と彼は、微妙な距離感を保ちつつ、挨拶を交わす。
「食堂っすか?」
「ああ」
「一緒、いいすか?」
「いいよ」
恋人の親友だからって仲良くしなくてもいいかもしれないけど、俺はこの人と仲良くなりたい。
ふたりともメニューを選び、注文をして、席を取る。
「草太さん家って、本がたくさんあるってマジすか?」
「ああ、古い本が山ほどある」
「へぇ。気になるなぁ」
「ミョウジくんが読んでも、面白いかどうか……」
「それは俺が決めることっすよ~」
「それはそうだけど。家業に関する資料なんだ」
草太さんの家業?
「俄然興味出てきたっすわ」
「はは。じゃあ、今度家に来るといい。芹澤が案内してくれるだろうから」
「マジで行きますよ?」
「うん。いいよ」
草太さんは、微笑んでいる。非日常的な美しさだ。
「ミョウジくんは、芹澤の特別な人だから。仲良くなりたいんだ」
「そうなんすか? 俺も草太さんと仲良くなりたいなって思ってますよ」
「そうか。ありがとう、ミョウジくん」
「いえいえ。俺と朋也さんで、草太さんが無茶しないように見てますからね」
「いや、芹澤の方こそ無茶するだろ」
それは、その通り。というか、ふたりとも無茶するんだよな。
「じゃあ、俺と草太さんで、朋也さんのこと見ときましょうよ」
「そうだな。そうする」
俺は、すっと片手を差し出した。それを、草太さんが取り、握手を交わす。
「ではでは、朋也さん見守り同盟を結ぶってことで。よろしくっす」
「よろしく」
俺たちは、笑い合って約束をした。
実は、もうひとり無茶をする人がいることを、この時の俺は知らなかったんだ。
◆◆◆
何度目かのデート。ふたりで、水族館に来た。
「ナマエはさ、なんで人文学部に?」
ペンギンを眺めながら、朋也さんに訊かれる。
「俺、昔、体弱かったんすよね。それで、あんま外出られなくて。親が絵本をたくさん買ってくれました」
「それで、読書好きになった?」
「そうっす。ちなみに、好きな作家は、夢野久作っすよ」
「へぇ」
「俺に興味出てきた?」
「うっせ」と言われて、頭を小突かれた。照れ隠しらしい。
「前からあったよ、興味」
「そっすか」
嬉しいな。
ペンギンが、お姉さんから魚をもらって、食べている。
「ナマエって、嬉しい時に笑うし、悲しい時に泣く奴だよな」
「そりゃあ、まあ。分かりやすい奴でしょ?」
「そういう素直なとこが好きなんだよなぁ」
互いを横目で見た。
「照れてんの?」
「そっちこそ」
なんか、今日の朋也さんは、デレている。そんな気がする。
俺たちは移動し、カラフルな魚たちの水槽の前に行った。
「お前は、どこへ行っても幸せに生きていけそうだよな」
「あんたが隣にいるならね」
「そ、ういうの反則だろ」
「知りませーん」
朋也さんは、口元を手で隠してる。
「あーもう、ダメだ、俺。お前といるとカッコつかねぇ」
「カッコつけたいんすか?」
「俺、歳上だし」
「関係ある? それに、充分カッコいいっすよ」
可愛いし、カッコいい。前に言った通り。
「だぁー! もう! 話変える! 夢野久作が好きなの、結構意外なんだけど。いや、ドグラ・マグラしか知らないけどよ」
「俺が特に好きなのは、猟奇歌っすね。名前の通り、猟奇的な短歌なんすけど、俺の中からは絶対に出て来ないものだから、好きっす」
「ふーん。ナマエと猟奇的って遠過ぎるだろ」
「そうっすねぇ」
でも、子供の頃はね、死が近かったんだよ。俺は、そのうち死ぬんだろうなって思ってた。大人になれずに死ぬと思ってた。
俺は、世界を呪ったことがある。あの過去を越えて、あんたに会えてよかった。
「朋也さんのこと、愛してる」
「なんだよ、急に」
「朋也さんは?」
「……愛してるよ」
「へへ」
目を細めて、口角を引き上げる。そっと、手を繋いだ。
水族館を見て回った後、俺は朋也さんの車に乗る。俺のために、古いアイドルソングをかけてくれるあんたが、愛おしい。
朋也さんは寂しがり屋だから、俺は、あんたを看取ってから死ぬよ。
これが、俺なりの愛だ。