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男は、幸福であれと願われる。両親に“幸せ”を意味する名前を付けられ、大切に育てられた。その祈りは、男が20歳になった頃に結実することとなる。
これは、幸福な家の物語。当たり前の幸福はなく、当たり前のように不幸が降ってくる世界での、ほんの些細な出来事である。
◆◆◆
男、ナマエの宿屋兼居酒屋「幸福の匙亭」は、今夜も客で賑わっている。店主のナマエは絶え間なく料理を作りながら談笑し、給仕係が忙しなく歩き回った。
常連客も一見さんも、みんな笑顔で飲み食いしている。
ナマエの料理の腕は素晴らしかったし、店に置いてある酒は、どれも彼の選りすぐりのものだ。
そんな幸福の匙亭に、3人連れの客が来る。青年と少女と老人。
3人はカウンター席に座り、料理を注文した。
「はいよ! ちょっと待ってな!」
ナマエが元気に返事をする。手際よくパエリアを三人前用意し、それぞれの前に並べた。
「パエリアは、俺の得意料理なんだ」と言い、ナマエはウィンクをする。
3人は、パエリアを掬い、食べた。
新鮮な魚介の旨味と、それを引き立てる野菜、そして米が、とても素晴らしい味に仕上げられている。
3人は、夢中でナマエの料理を食べた。
「ごちそうさま。美味かった」
「ありがとよ。兄ちゃん、名前は?」
「シュライヤ」
「俺は、ナマエ。この店の店主だ。よろしくな。そっちのおふたりさんは?」
「妹のアデルと、その恩人のビエラ爺さんだ」
「よろしく、ナマエ」
「美味い料理の提供、感謝する」
「いいってことよ」
ナマエは、眩しい笑顔で答える。その表情を、太陽の光のように思うシュライヤ。血に塗れた自分とは大違いだと考えた。
「なあ、実は、今夜泊めてほしいんだが、部屋はあるか?」
「3人一緒でも平気かい?」
「ああ」
「2階の角部屋、使いな。ほら、鍵だ」
「ありがてぇ」
「気にすんな!」
ナマエは、ニコニコと笑う。
角部屋へ向かったシュライヤたちは、やや古びた扉を開けた。中は、古くはあるが、綺麗に整頓されており、ベッドの上は真っ白で清潔である。
そして何より、ここには“安心感”があった。時折、下の階から聴こえる喧騒も、なんだか和やかに感じる不思議なところ。
寝支度をし、ベッドに横になるシュライヤ。
これまで、地獄のような8年だった。しかし、ガスパーデは倒され、妹のアデルは生きていて、爺さんも無事。今の自分は、幸福だ。
おれも、アイツみたいに笑える日が来るだろうか?
ナマエの屈託のない幸せそうな笑顔を思い出しながら、目を閉じた。
これは、幸福な家の物語。当たり前の幸福はなく、当たり前のように不幸が降ってくる世界での、ほんの些細な出来事である。
◆◆◆
男、ナマエの宿屋兼居酒屋「幸福の匙亭」は、今夜も客で賑わっている。店主のナマエは絶え間なく料理を作りながら談笑し、給仕係が忙しなく歩き回った。
常連客も一見さんも、みんな笑顔で飲み食いしている。
ナマエの料理の腕は素晴らしかったし、店に置いてある酒は、どれも彼の選りすぐりのものだ。
そんな幸福の匙亭に、3人連れの客が来る。青年と少女と老人。
3人はカウンター席に座り、料理を注文した。
「はいよ! ちょっと待ってな!」
ナマエが元気に返事をする。手際よくパエリアを三人前用意し、それぞれの前に並べた。
「パエリアは、俺の得意料理なんだ」と言い、ナマエはウィンクをする。
3人は、パエリアを掬い、食べた。
新鮮な魚介の旨味と、それを引き立てる野菜、そして米が、とても素晴らしい味に仕上げられている。
3人は、夢中でナマエの料理を食べた。
「ごちそうさま。美味かった」
「ありがとよ。兄ちゃん、名前は?」
「シュライヤ」
「俺は、ナマエ。この店の店主だ。よろしくな。そっちのおふたりさんは?」
「妹のアデルと、その恩人のビエラ爺さんだ」
「よろしく、ナマエ」
「美味い料理の提供、感謝する」
「いいってことよ」
ナマエは、眩しい笑顔で答える。その表情を、太陽の光のように思うシュライヤ。血に塗れた自分とは大違いだと考えた。
「なあ、実は、今夜泊めてほしいんだが、部屋はあるか?」
「3人一緒でも平気かい?」
「ああ」
「2階の角部屋、使いな。ほら、鍵だ」
「ありがてぇ」
「気にすんな!」
ナマエは、ニコニコと笑う。
角部屋へ向かったシュライヤたちは、やや古びた扉を開けた。中は、古くはあるが、綺麗に整頓されており、ベッドの上は真っ白で清潔である。
そして何より、ここには“安心感”があった。時折、下の階から聴こえる喧騒も、なんだか和やかに感じる不思議なところ。
寝支度をし、ベッドに横になるシュライヤ。
これまで、地獄のような8年だった。しかし、ガスパーデは倒され、妹のアデルは生きていて、爺さんも無事。今の自分は、幸福だ。
おれも、アイツみたいに笑える日が来るだろうか?
ナマエの屈託のない幸せそうな笑顔を思い出しながら、目を閉じた。