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きっと、ここは地獄へ行くか天国へ行くか決められるところなんだと思う。
監獄、ミルグラムを、ミョウジナマエは、そう捉えている。
愛を誓った、×××××と私は、冬の海に飛び込んで、お魚さんの仲間入り
冷たく暗い海の底で踊るの
さあ、ワン・ツー・ステップで跳び跳ねれば、お月様と見つめ合い
あなた、お月様ばかり見ていちゃダメだよ
さあ、ワン・ツー・ステップで手を取り合えば、優しい闇に包まれる
私は、×××××のことが大好きだから
ずっと一緒だよ
離れないでね?
離さないでね?
絶対に離さない
ナマエは、罪を歌う。そして、第一審の結果は……“赦す”と出た。
第二審が始まる前に、様々なことが起こる。それは、囚人同士の関係性の変化だったり、囚人の生死に関わるものだったり。しかし、ナマエにとって大切なことは、ひとつだけ。
シドウさん。桐崎獅童さん。とても素敵な、あなた。人の命を救える人。
ナマエは、シドウに恋をした。
それは、彼の全てを侵す恋だった。
◆◆◆
「シドウさん」
「なにか?」
「私を、あなたの助手にしてくれませんか? これから、マヒルさんの看護に行くのでしょう?」
ナマエは、子供が玩具をねだるように言う。
「そのつもりですが。あなたは、医療知識があるんですか?」
「ないよ? 言われた通りにするから、安心してください」
「…………分かりました」
ナマエは、言葉通りに、シドウの指示に従い、マヒルの包帯を替えた。
「マヒルちゃんの愛、私は好きだよ」
愚かで可愛い、マヒルちゃん。
フータのことも、献身的に手当てする。その献身は、フータよりもシドウに向けられているが。
「私、フータくんは悪くないと思うな。早くよくなるといいね」
愚かで可愛いね、フータくん。
その後。
「シドウさん、私って悪い人間なのでしょうか?」
ナマエは尋ねた。
「あなたのことを、よく知りません」
「そうですよね。ごめんなさい」
「手伝い、ありがとうございました」
「また、いつでも協力します」
「はい。それでは」
「…………」
ナマエは、去って行くシドウの背中を見送る。
それから、マヒルの様子を見に行こうかと思ったが、ユノがいたのでやめた。
ナマエは、彼女のことが嫌いである。
ふしだらな女。大嫌い。
ナマエは、フータの元へ向かうことにした。
「フータくん」
「ナマエ…………」
「大丈夫だよ。私が側にいてあげる」
フータを優しく抱き締めるナマエ。
フータは、されるがままになるしかない。
徐々に目覚めていく、ナマエへの依存心。
それは、恋に似ていた。
しばらくして、第二審が始まる。
「エスくん、こんなことになって満足?」
ナマエは、挑発的に笑う。
「僕は…………」
「まあ、私はいいの。シドウさんに会えたから。本当に素敵な人」
「シドウが好きなのか?」
「うん。私は優しい人が好きなの」
「優しい人、か……」
あなたが生きていないと、死んでしまう人がいる。
それは、マヒルだけではない。
彼に恋をしているナマエは、シドウがいなくては生きていけないだろう。
「幸せそうだな。囚人なのに」
「幸せだよ。好きな人と一緒なんだもの」
「そうか」
「何か訊きたいことある?」
「いや、もう充分だ」
「そう」
「さあ、お前の罪を歌え」
終着駅が過ぎてしまって
執着癖が過ぎてしまって
それなのに私の体は浮上した
それなのに私の心は浮上した
独りきりの海
独りきりは膿み
独りきりが生み
私は生きているのかな?
それなら私は、もう一度恋をする
ふたりきりの檻
ふたりきりは澱
ふたりきりで降り
私は、あなたの隣に
いつでも私は恋の中にいるから
故意の中にいるから
行為の先に何が待っていたとしても
◆◆◆
ナマエは、日々をシドウの側で過ごした。
それは、満たされた時間で。ナマエの幸せは揺らがなかった。
「シドウさん」
「はい」
ナマエは、治療の手伝いの後、言ってしまったのである。
「私、あなたのことが好き。好きです」
「……俺には、そんなことを言ってもらう資格はありません」
シドウは俯き、そう答えた。
「資格なんて関係ないですよ。私は、私がシドウさんを好きなことをゆるしています。それで充分じゃないですか」
「ミョウジくん。俺は、あなたを好きにはなれません。俺を手伝ってくれていることに感謝はしていますが」
「……はい。分かりました。困らせて、ごめんなさい」
ナマエは、泣きそうになりながらも笑顔を作る。
「いえ。こんな人間を慕っていただき、ありがとうございます」
ナマエは、与えられた部屋に戻り、ひとり考えた。
「…………」
自分の想いが受け入れられないなら。
私と同じ気持ちになってくれないなら。
私は、あなたを…………。
「あはは…………」
乾いた笑いを漏らすナマエ。
「はぁ」
溜め息をつき、ナマエはフータの元へ向かうことにした。
「フータくん」
「……ナマエか」
「大丈夫、なワケないよね」
ナマエは、フータを抱き締める。
その様は、慈愛の聖母のようにも人を誑かす悪魔のようにも見えた。
「フータくん。私は、あなたを赦すよ」
「ナマエ……」
フータは、眼帯をしていない方の目から涙を流す。
その涙を、ナマエが指先で拭った。
「また来るね」
軽く手を振り、退室する。
歩いていると、カズイと出くわした。
「カズイさん、少し話しません?」
「ああ、いいよ」
「やったぁ」
ふたりは、隣に並んで話し始める。
「カズイさんの本命って、どんな人ですか?」
「ノーコメント」
「つまんないの」
「ナマエの好きな人は?」
「今は、シドウさんですよ」
「……そうか」
カズイは、何かを考え込む仕草をした。
「フラれちゃいましたけど」
「告白したのか?」
「はい」
「はは。凄いね」
少し寂しげに笑うカズイ。
「自分の性別については話した?」
「言ってません。別に、なんでもいいのです。男でも、女でも、それ以外でも」
ナマエは、Xジェンダーである。身体性別は不明だ。
「ナマエは、強いな」
「強い、ですかね?」
「俺からしたら、真っ直ぐに見えるよ」
「そうですか?」
「ああ。眩しいくらいだ」
彼は、目を細めて笑う。
ナマエは、柔らかな笑みを返した。
良くも悪くも変わらないふたりは、ミルグラムという監獄の中で、他愛ない会話を続ける。
シドウさんが私を好きじゃないなら、私は、あなたを死なせたくない。
あなたも生きていたいみたいだし。
生きていれば、私を好きになってくれる日も来るかもしれないし。
ナマエは、頭の片隅でそんなことを考えた。
監獄、ミルグラムを、ミョウジナマエは、そう捉えている。
愛を誓った、×××××と私は、冬の海に飛び込んで、お魚さんの仲間入り
冷たく暗い海の底で踊るの
さあ、ワン・ツー・ステップで跳び跳ねれば、お月様と見つめ合い
あなた、お月様ばかり見ていちゃダメだよ
さあ、ワン・ツー・ステップで手を取り合えば、優しい闇に包まれる
私は、×××××のことが大好きだから
ずっと一緒だよ
離れないでね?
離さないでね?
絶対に離さない
ナマエは、罪を歌う。そして、第一審の結果は……“赦す”と出た。
第二審が始まる前に、様々なことが起こる。それは、囚人同士の関係性の変化だったり、囚人の生死に関わるものだったり。しかし、ナマエにとって大切なことは、ひとつだけ。
シドウさん。桐崎獅童さん。とても素敵な、あなた。人の命を救える人。
ナマエは、シドウに恋をした。
それは、彼の全てを侵す恋だった。
◆◆◆
「シドウさん」
「なにか?」
「私を、あなたの助手にしてくれませんか? これから、マヒルさんの看護に行くのでしょう?」
ナマエは、子供が玩具をねだるように言う。
「そのつもりですが。あなたは、医療知識があるんですか?」
「ないよ? 言われた通りにするから、安心してください」
「…………分かりました」
ナマエは、言葉通りに、シドウの指示に従い、マヒルの包帯を替えた。
「マヒルちゃんの愛、私は好きだよ」
愚かで可愛い、マヒルちゃん。
フータのことも、献身的に手当てする。その献身は、フータよりもシドウに向けられているが。
「私、フータくんは悪くないと思うな。早くよくなるといいね」
愚かで可愛いね、フータくん。
その後。
「シドウさん、私って悪い人間なのでしょうか?」
ナマエは尋ねた。
「あなたのことを、よく知りません」
「そうですよね。ごめんなさい」
「手伝い、ありがとうございました」
「また、いつでも協力します」
「はい。それでは」
「…………」
ナマエは、去って行くシドウの背中を見送る。
それから、マヒルの様子を見に行こうかと思ったが、ユノがいたのでやめた。
ナマエは、彼女のことが嫌いである。
ふしだらな女。大嫌い。
ナマエは、フータの元へ向かうことにした。
「フータくん」
「ナマエ…………」
「大丈夫だよ。私が側にいてあげる」
フータを優しく抱き締めるナマエ。
フータは、されるがままになるしかない。
徐々に目覚めていく、ナマエへの依存心。
それは、恋に似ていた。
しばらくして、第二審が始まる。
「エスくん、こんなことになって満足?」
ナマエは、挑発的に笑う。
「僕は…………」
「まあ、私はいいの。シドウさんに会えたから。本当に素敵な人」
「シドウが好きなのか?」
「うん。私は優しい人が好きなの」
「優しい人、か……」
あなたが生きていないと、死んでしまう人がいる。
それは、マヒルだけではない。
彼に恋をしているナマエは、シドウがいなくては生きていけないだろう。
「幸せそうだな。囚人なのに」
「幸せだよ。好きな人と一緒なんだもの」
「そうか」
「何か訊きたいことある?」
「いや、もう充分だ」
「そう」
「さあ、お前の罪を歌え」
終着駅が過ぎてしまって
執着癖が過ぎてしまって
それなのに私の体は浮上した
それなのに私の心は浮上した
独りきりの海
独りきりは膿み
独りきりが生み
私は生きているのかな?
それなら私は、もう一度恋をする
ふたりきりの檻
ふたりきりは澱
ふたりきりで降り
私は、あなたの隣に
いつでも私は恋の中にいるから
故意の中にいるから
行為の先に何が待っていたとしても
◆◆◆
ナマエは、日々をシドウの側で過ごした。
それは、満たされた時間で。ナマエの幸せは揺らがなかった。
「シドウさん」
「はい」
ナマエは、治療の手伝いの後、言ってしまったのである。
「私、あなたのことが好き。好きです」
「……俺には、そんなことを言ってもらう資格はありません」
シドウは俯き、そう答えた。
「資格なんて関係ないですよ。私は、私がシドウさんを好きなことをゆるしています。それで充分じゃないですか」
「ミョウジくん。俺は、あなたを好きにはなれません。俺を手伝ってくれていることに感謝はしていますが」
「……はい。分かりました。困らせて、ごめんなさい」
ナマエは、泣きそうになりながらも笑顔を作る。
「いえ。こんな人間を慕っていただき、ありがとうございます」
ナマエは、与えられた部屋に戻り、ひとり考えた。
「…………」
自分の想いが受け入れられないなら。
私と同じ気持ちになってくれないなら。
私は、あなたを…………。
「あはは…………」
乾いた笑いを漏らすナマエ。
「はぁ」
溜め息をつき、ナマエはフータの元へ向かうことにした。
「フータくん」
「……ナマエか」
「大丈夫、なワケないよね」
ナマエは、フータを抱き締める。
その様は、慈愛の聖母のようにも人を誑かす悪魔のようにも見えた。
「フータくん。私は、あなたを赦すよ」
「ナマエ……」
フータは、眼帯をしていない方の目から涙を流す。
その涙を、ナマエが指先で拭った。
「また来るね」
軽く手を振り、退室する。
歩いていると、カズイと出くわした。
「カズイさん、少し話しません?」
「ああ、いいよ」
「やったぁ」
ふたりは、隣に並んで話し始める。
「カズイさんの本命って、どんな人ですか?」
「ノーコメント」
「つまんないの」
「ナマエの好きな人は?」
「今は、シドウさんですよ」
「……そうか」
カズイは、何かを考え込む仕草をした。
「フラれちゃいましたけど」
「告白したのか?」
「はい」
「はは。凄いね」
少し寂しげに笑うカズイ。
「自分の性別については話した?」
「言ってません。別に、なんでもいいのです。男でも、女でも、それ以外でも」
ナマエは、Xジェンダーである。身体性別は不明だ。
「ナマエは、強いな」
「強い、ですかね?」
「俺からしたら、真っ直ぐに見えるよ」
「そうですか?」
「ああ。眩しいくらいだ」
彼は、目を細めて笑う。
ナマエは、柔らかな笑みを返した。
良くも悪くも変わらないふたりは、ミルグラムという監獄の中で、他愛ない会話を続ける。
シドウさんが私を好きじゃないなら、私は、あなたを死なせたくない。
あなたも生きていたいみたいだし。
生きていれば、私を好きになってくれる日も来るかもしれないし。
ナマエは、頭の片隅でそんなことを考えた。
