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「やべー」「マジ?」「分かる~」、だいたいは、これだけで会話は回る。あとは、周りを見て、表情を合わせておく。それでオッケー。
ミョウジナマエは、そのように日常を送っていた。
「ミョウジ~」
「朔じゃん。どしたん?」
「宇野ちゃんってヤバくね?」
転校生、宇野啓介。
「やべーよなー」
「なっ。あ、こば~」
満足したのか、朔は、小林大和の元へ向かう。
自分は“正解”を引けたらしい。ミョウジは、一安心する。
気を付けないと、浮いてしまうから。
“宇宙人~!”
“コイツに触るとバカが移るぞ!”
“なんで学校来てんの?”
イジメに遭っていた頃のことを思い出し、ミョウジは拳を握った。
上手くやっているはずなのに、たまに息が苦しくなるのは何故?
「たでーま」
「お帰り。アンタ、ご飯作ってよ」
母親が、ダルそうに言った。
「えー、やだよ」
だって、レシピの内容が理解出来ないし。適量とか少々って何?
「冗談、冗談。安心して、アンタにそんな期待してないから」
「ひっでー」
今、ちゃんと笑えてる? 全然安心出来ないんだけど?
自室へ行き、ドアを閉め、その場に座り込む。
「クソ…………」
なんか、消えたい。死にたいのかな?
「よく分かんねぇ」
薄暗い気持ちのまま、その日は終わった。
翌日。登校して教室に入ったら、件の宇野と小林がメモ帳を見せ合っていた。
なにアレ?
「はよーっす。ふたり、なにしてんの?」
「はよ」
「ミョウジナマエくん、おはようございます!」
「元気だねー、宇野くん」
へらへら笑いながら、その元気さに引いている自分がいた。
「あー、なんつーの? メモの取り方の相談?」
「なんのメモ?」
「仕事とか」
「仕事……! マジメちゃんかよ」
「うるせ」
「あはは。ま、がんばれー」
学校だけでも人だらけで嫌なのに、バイト? 最悪だろう、そんなもの。
ミョウジには、理解出来ない。
テキトーに寝たり、ぼーっとしたりして、授業をやり過ごす。
あとは、帰るだけ。
「ミョウジ、カラオケ行かね?」
「いいねぇ!」
全然行きたくない。行きたくないけど、“ノリが悪い奴”だと思われたら、おしまいだから。
笑みを張り付け、クラスメイトたちと歩く。
「アレ? ミョウジじゃん」
「え?」
偶然、曲がり角からやって来たのは、かつてミョウジをイジメていた連中だった。
「地球には慣れたぁ?」
「ひーっ! やめたれよ!」
「ミョウジ? コイツら誰?」
「あ……え…………」
頭の中が、真っ白になる。冷や汗が流れ、吐き気がする。
「ごめ……帰る……!」
クラスメイトが、何か言っているが、聴こえない。
ミョウジは、走った。無我夢中で駆け抜けた。
そして。
「うっ…………おえっ…………」
草むらに、吐瀉した。気持ち悪い。
アイツら、クラスの奴らに、なんか言ったかな? 明日から、また“宇宙人”に逆戻り?
「ミョウジ? どうした?」
「具合が悪いですか?」
「お前ら…………」
心配そうな、小林と宇野。
「いや、別になんでも……」
「吐いたのに、なんでもないことはないです!」
「吐いたのか? 水いるか?」
「う、うるせぇーんだよ! なんでもねぇんだって! そうじゃなきゃ、オレ…………」
決壊寸前の心。だが、ミョウジには状況を説明することが出来ない。
「なんでもない! 話しかけんなっ!」
「ミョウジナマエくん! 吐いた後は、口をゆすいだ方がいいです!」
「んー、じゃあ、水置いて、俺たち行くわ」
小林が、ペットボトルを置き、宇野を連れて去って行く。
「はぁ……はぁ……」
結局、どこにいても苦しいじゃないかと、ミョウジは思った。
「チクショー…………」
明日が来なければいいのに。
◆◆◆
朝が来た。いつもより、体が重い。
学校に行きたくない。
「サボろ」
ベッドに寝転がり、ただ天井を見上げた。
両親は、とうに家を出ている。
現実逃避をするために、ミョウジは眠ることにした。そうして、次に目覚めたのは、夕方。
インターホンの音に起こされた。
「ああ?」
ドア穴を覗くと、小林と宇野がいる。
「はぁ?」
仕方なくドアを開けると、ふたりは「見舞いに来た」と言う。
「上がれば?」
「ああ」
「お邪魔します!」
ふたりを居間に通し、麦茶を出した。
「で?」
小林が、口を開く。
なんだ? で? って。
「昨日、なんかあったんだろ?」
「ああ、ソレね……」
クラスで、オレの渾名、“宇宙人”とか“ゲロ”とかになってねぇだろうな。
「お前ら、昨日のこと誰かに話した?」
「いや」
「話してません!」
「そ。じゃあ、宇宙人かな。オレの渾名」
「は?」
もういいか。コイツら、なんか口軽くないみたいだし。
ミョウジは、つっかえながら、訳を話した。ふたりは、ただ黙って聞いている。
言葉が出てこないこと。文章が組み立てられないこと。イジメのこと。全て話した。
「お前も、テザーが必要なんだな」
「テザー?」
宇野が、元気に説明する。宇宙を歩くための命綱のことを。
「テザー、ね。オレの場合、宇宙服からかもねぇ」
笑いたかった。笑おうとした。しかし、無理だった。
「ミョウジ、お前は、どうしたい?」
「なにを?」
「周りに合わせ過ぎてんじゃね?」
「そう、か……うん。そうだな……」
もう、正直に話してしまおう。
「嫌だ。やめたいよ……でも、宇宙人になるのは怖い……」
「その辺のバランス? まあ、難しいよな」
「ミョウジくん」
「ん?」
「アルファルドは孤独なものですが、明るくて綺麗な星です!」
「はぁ?」
「え、えっと…………」
「……ミョウジが、宇宙人じゃないってこと?」
焦る宇野に、小林が助け船を出す。
「はい! 僕は、そう思います!」
ああ、なんとなく分かった。
「そんなんじゃねぇよ」
だけど、そうなれたらいいのに。
ミョウジナマエは、そのように日常を送っていた。
「ミョウジ~」
「朔じゃん。どしたん?」
「宇野ちゃんってヤバくね?」
転校生、宇野啓介。
「やべーよなー」
「なっ。あ、こば~」
満足したのか、朔は、小林大和の元へ向かう。
自分は“正解”を引けたらしい。ミョウジは、一安心する。
気を付けないと、浮いてしまうから。
“宇宙人~!”
“コイツに触るとバカが移るぞ!”
“なんで学校来てんの?”
イジメに遭っていた頃のことを思い出し、ミョウジは拳を握った。
上手くやっているはずなのに、たまに息が苦しくなるのは何故?
「たでーま」
「お帰り。アンタ、ご飯作ってよ」
母親が、ダルそうに言った。
「えー、やだよ」
だって、レシピの内容が理解出来ないし。適量とか少々って何?
「冗談、冗談。安心して、アンタにそんな期待してないから」
「ひっでー」
今、ちゃんと笑えてる? 全然安心出来ないんだけど?
自室へ行き、ドアを閉め、その場に座り込む。
「クソ…………」
なんか、消えたい。死にたいのかな?
「よく分かんねぇ」
薄暗い気持ちのまま、その日は終わった。
翌日。登校して教室に入ったら、件の宇野と小林がメモ帳を見せ合っていた。
なにアレ?
「はよーっす。ふたり、なにしてんの?」
「はよ」
「ミョウジナマエくん、おはようございます!」
「元気だねー、宇野くん」
へらへら笑いながら、その元気さに引いている自分がいた。
「あー、なんつーの? メモの取り方の相談?」
「なんのメモ?」
「仕事とか」
「仕事……! マジメちゃんかよ」
「うるせ」
「あはは。ま、がんばれー」
学校だけでも人だらけで嫌なのに、バイト? 最悪だろう、そんなもの。
ミョウジには、理解出来ない。
テキトーに寝たり、ぼーっとしたりして、授業をやり過ごす。
あとは、帰るだけ。
「ミョウジ、カラオケ行かね?」
「いいねぇ!」
全然行きたくない。行きたくないけど、“ノリが悪い奴”だと思われたら、おしまいだから。
笑みを張り付け、クラスメイトたちと歩く。
「アレ? ミョウジじゃん」
「え?」
偶然、曲がり角からやって来たのは、かつてミョウジをイジメていた連中だった。
「地球には慣れたぁ?」
「ひーっ! やめたれよ!」
「ミョウジ? コイツら誰?」
「あ……え…………」
頭の中が、真っ白になる。冷や汗が流れ、吐き気がする。
「ごめ……帰る……!」
クラスメイトが、何か言っているが、聴こえない。
ミョウジは、走った。無我夢中で駆け抜けた。
そして。
「うっ…………おえっ…………」
草むらに、吐瀉した。気持ち悪い。
アイツら、クラスの奴らに、なんか言ったかな? 明日から、また“宇宙人”に逆戻り?
「ミョウジ? どうした?」
「具合が悪いですか?」
「お前ら…………」
心配そうな、小林と宇野。
「いや、別になんでも……」
「吐いたのに、なんでもないことはないです!」
「吐いたのか? 水いるか?」
「う、うるせぇーんだよ! なんでもねぇんだって! そうじゃなきゃ、オレ…………」
決壊寸前の心。だが、ミョウジには状況を説明することが出来ない。
「なんでもない! 話しかけんなっ!」
「ミョウジナマエくん! 吐いた後は、口をゆすいだ方がいいです!」
「んー、じゃあ、水置いて、俺たち行くわ」
小林が、ペットボトルを置き、宇野を連れて去って行く。
「はぁ……はぁ……」
結局、どこにいても苦しいじゃないかと、ミョウジは思った。
「チクショー…………」
明日が来なければいいのに。
◆◆◆
朝が来た。いつもより、体が重い。
学校に行きたくない。
「サボろ」
ベッドに寝転がり、ただ天井を見上げた。
両親は、とうに家を出ている。
現実逃避をするために、ミョウジは眠ることにした。そうして、次に目覚めたのは、夕方。
インターホンの音に起こされた。
「ああ?」
ドア穴を覗くと、小林と宇野がいる。
「はぁ?」
仕方なくドアを開けると、ふたりは「見舞いに来た」と言う。
「上がれば?」
「ああ」
「お邪魔します!」
ふたりを居間に通し、麦茶を出した。
「で?」
小林が、口を開く。
なんだ? で? って。
「昨日、なんかあったんだろ?」
「ああ、ソレね……」
クラスで、オレの渾名、“宇宙人”とか“ゲロ”とかになってねぇだろうな。
「お前ら、昨日のこと誰かに話した?」
「いや」
「話してません!」
「そ。じゃあ、宇宙人かな。オレの渾名」
「は?」
もういいか。コイツら、なんか口軽くないみたいだし。
ミョウジは、つっかえながら、訳を話した。ふたりは、ただ黙って聞いている。
言葉が出てこないこと。文章が組み立てられないこと。イジメのこと。全て話した。
「お前も、テザーが必要なんだな」
「テザー?」
宇野が、元気に説明する。宇宙を歩くための命綱のことを。
「テザー、ね。オレの場合、宇宙服からかもねぇ」
笑いたかった。笑おうとした。しかし、無理だった。
「ミョウジ、お前は、どうしたい?」
「なにを?」
「周りに合わせ過ぎてんじゃね?」
「そう、か……うん。そうだな……」
もう、正直に話してしまおう。
「嫌だ。やめたいよ……でも、宇宙人になるのは怖い……」
「その辺のバランス? まあ、難しいよな」
「ミョウジくん」
「ん?」
「アルファルドは孤独なものですが、明るくて綺麗な星です!」
「はぁ?」
「え、えっと…………」
「……ミョウジが、宇宙人じゃないってこと?」
焦る宇野に、小林が助け船を出す。
「はい! 僕は、そう思います!」
ああ、なんとなく分かった。
「そんなんじゃねぇよ」
だけど、そうなれたらいいのに。