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幼馴染みのブルーノは、ある日突然いなくなった。
噂によると、何かよくない未来を見て失踪したのだとか。
でも、君がそういう未来を見るなんて、よくあることだったじゃないか。だから、余程のことなんだろう。
世界の終わりでも来るのだろうか? それなら、俺と一緒にいようよ。
“君の恋は叶う”
以前、ブルーノに、そう予言された。だけど、君はいなくなったじゃないか。君がいなくちゃ、俺の恋は叶わない。
君がいないエンカントは、寂しいよ。
なんで、ひとりで行った? 俺も連れてってくれたらよかったのに。
不在の者に何を言ってもしょうがない。帰って来たら、ひっぱたいてやろうか。
思考の川から浮上して、俺は、自室の本棚を見た。これを少し動かして、ふたつ目の本棚を置かなくてはならない。箱詰めになってる書籍たちをなんとかする必要がある。
ふと、窓の外を見ると、ルイーサが歩いていた。
窓を開け、彼女に声をかける。
「やあ、ルイーサ。ちょっと本棚を動かしてもらえるかい?」
「いいよ」
ドアからルイーサを招くと、彼女は本が詰まったままの棚を持ち上げてずらしてくれた。そして、新しい本棚をその隣に置く。
「これでいいかい?」
「ありがとう、本当に助かるよ。これ、お礼に」
家の庭で採れたバナナを箱に詰めて渡した。
「ああ、ありがとう」
片腕で箱を担ぐルイーサを見送り、俺は仕事を始める。
エンカントの郷土史の編纂。それが、ここで唯一の郷土史家である俺の仕事だ。
と言っても、大抵の歴史ある物はマドリガル家にあるので、それらを管理するのは俺の役目ではない。暇な時は、バナナの世話をしている。
それが、俺の平穏な人生だった。
かつて、争いがあったこと。マドリガル家の奇跡。安住の地。全て、忘れてはならない歴史だ。
今日は、新たに、アントニオの魔法のことを綴る。
ブルーノがいなくても、なんともないのが、俺は嫌だと思った。
俺の日常は、欠けたままなのに。
そして、ある日、カシータが崩れた。
この目で見たそれは、衝撃的で。それだけじゃない、そこにはブルーノがいた。
「おい! ブルーノ! どこにいやがった?!」
「や、やあ、久し振り……」
「バカ野郎! 人がどれだけ心配したと……」
振り上げた腕を見て、彼はビクッとする。俺は、その腕を下ろしてブルーノを抱き締めた。
「よかった。無事で」
「いやぁ、それがそうでもなくて」
「なんだよ?」
「……魔法が使えなくなった」
申し訳なさそうに、ブルーノは言う。
「そんな……」
「ごめん」
「そんなこと、どうでもいいわーッ!」
「ひっ……」
「マドリガル家には、感謝してるよ。みんな、そうだ。だけどな、魔法があるからってだけだと思うか? 俺は、郷土史家だぞ。大切なのは、魔法のある土地か? 違うね。この場所で共に生きてる仲間だから、君たちが大切なんだよ」
「ありがとう…………」
「だいたい君はいつも、悪いのは自分だと思い込んだり、悪い未来を見て落ち込んだり、挙げ句の果てには失踪までして。少しは俺に頼れ! 愛してるから!」
「……僕も、愛してるよ」
「あっ……!?」
予言が運命を決めるなら、これが運命なんだろう。これは、俺が望んだ運命だ。
噂によると、何かよくない未来を見て失踪したのだとか。
でも、君がそういう未来を見るなんて、よくあることだったじゃないか。だから、余程のことなんだろう。
世界の終わりでも来るのだろうか? それなら、俺と一緒にいようよ。
“君の恋は叶う”
以前、ブルーノに、そう予言された。だけど、君はいなくなったじゃないか。君がいなくちゃ、俺の恋は叶わない。
君がいないエンカントは、寂しいよ。
なんで、ひとりで行った? 俺も連れてってくれたらよかったのに。
不在の者に何を言ってもしょうがない。帰って来たら、ひっぱたいてやろうか。
思考の川から浮上して、俺は、自室の本棚を見た。これを少し動かして、ふたつ目の本棚を置かなくてはならない。箱詰めになってる書籍たちをなんとかする必要がある。
ふと、窓の外を見ると、ルイーサが歩いていた。
窓を開け、彼女に声をかける。
「やあ、ルイーサ。ちょっと本棚を動かしてもらえるかい?」
「いいよ」
ドアからルイーサを招くと、彼女は本が詰まったままの棚を持ち上げてずらしてくれた。そして、新しい本棚をその隣に置く。
「これでいいかい?」
「ありがとう、本当に助かるよ。これ、お礼に」
家の庭で採れたバナナを箱に詰めて渡した。
「ああ、ありがとう」
片腕で箱を担ぐルイーサを見送り、俺は仕事を始める。
エンカントの郷土史の編纂。それが、ここで唯一の郷土史家である俺の仕事だ。
と言っても、大抵の歴史ある物はマドリガル家にあるので、それらを管理するのは俺の役目ではない。暇な時は、バナナの世話をしている。
それが、俺の平穏な人生だった。
かつて、争いがあったこと。マドリガル家の奇跡。安住の地。全て、忘れてはならない歴史だ。
今日は、新たに、アントニオの魔法のことを綴る。
ブルーノがいなくても、なんともないのが、俺は嫌だと思った。
俺の日常は、欠けたままなのに。
そして、ある日、カシータが崩れた。
この目で見たそれは、衝撃的で。それだけじゃない、そこにはブルーノがいた。
「おい! ブルーノ! どこにいやがった?!」
「や、やあ、久し振り……」
「バカ野郎! 人がどれだけ心配したと……」
振り上げた腕を見て、彼はビクッとする。俺は、その腕を下ろしてブルーノを抱き締めた。
「よかった。無事で」
「いやぁ、それがそうでもなくて」
「なんだよ?」
「……魔法が使えなくなった」
申し訳なさそうに、ブルーノは言う。
「そんな……」
「ごめん」
「そんなこと、どうでもいいわーッ!」
「ひっ……」
「マドリガル家には、感謝してるよ。みんな、そうだ。だけどな、魔法があるからってだけだと思うか? 俺は、郷土史家だぞ。大切なのは、魔法のある土地か? 違うね。この場所で共に生きてる仲間だから、君たちが大切なんだよ」
「ありがとう…………」
「だいたい君はいつも、悪いのは自分だと思い込んだり、悪い未来を見て落ち込んだり、挙げ句の果てには失踪までして。少しは俺に頼れ! 愛してるから!」
「……僕も、愛してるよ」
「あっ……!?」
予言が運命を決めるなら、これが運命なんだろう。これは、俺が望んだ運命だ。