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ひとり、小舟で大海を漂っていた。
お腹が空いて、力が出なくて。降り注ぐ日光で干からびそう。
いよいよ死を覚悟した時、海上レストラン「バラティエ」に拾われた。
私は、水と消化のいい食事をいただき、生き延びる。
「ご馳走さまでした。ありがとうございます」
「レディ、食後のデザートはいかがですか?」
「いいんですか?」
「もちろんだ」
「いただきます」
さっぱりとした柑橘類のゼリーは、とても美味しかった。
「あの、私、正確にはレディじゃないです……すいません、ややこしくて…………」
「キリエさん……?」
「私、性自認が男だったり女だったりするタイプでして。身体は女ですけど……」
「失礼。じゃあ、キリエさんは、キリエさんだな」
「はい。ありがとうございます」
彼は、とても善い人だと思う。サンジくんは、“美味しい料理を出す人”だから。
私は、“料理を美味しく食べる人”でありたいものだ。
「キリエさん、この後はどうする?」
「その~、こちらにしばらく厄介になってもいいですか? お金が尽きてまして。皿洗いくらいしか出来ませんが……」
そう言うと、オーナーに大声で私のことを伝えて、許可を取ってくれた。
ところで、私は、民俗学者である。バラティエの成り立ちや今後のことが気になった。
「どうして、海上にレストランを作ろうと思ったんですか?」「ここには、独自のおまじないやジンクスは、ありますか?」「今後も運営するにあたり、何か展望は?」などの質問を呑み込む。
まずは、信頼されなくてはならない。私の研究は、それが大切だ。土足で他人の領域に踏み込むなんてことは、してはいけないのだ。
人が集まるところに、文化あり。私は、それを書き記すのが生き甲斐だ。
その後。私は、バラティエで働きながら、ここの文化と歴史を学んでいった。
お腹を空かせた人に、善悪は関係ない。ここは、そういう場所。飢える者に、与えるところ。
当然、空腹を満たした後に襲ってくる賊もいた。バラティエの人々は、強い。大抵の者は返り討ちにした。
私は、戦闘面では役に立てないので、こっそり彼らを覗いて記録する。
大海賊時代。東の海にて。海上レストラン「バラティエ」あり。強き男たちにより、弱きは守られ、食事にありつける。
今日も、実りある一日だった。
こうして日々は過ぎていき、私は自分の旅に戻ることになる。
「サンジくん」
「なんだい? キリエさん」
「凪の日も嵐の日も、君が楽しく生きられますように」と、両手を組んで言った。
「それ……」
「私の故郷に伝わるおまじないだよ」
「ありがとう。寂しくなるな……」
私のような者に、心を残すべきではないよ。
「サンジくんは善い人だから、私のことなんて忘れなさい」
「でも、キリエさん…………」
そんなに悲しそうにしないで。
「それじゃあ、そうだな。もし、またどこかで会えたら、その時は、よろしくね」
「ああ。またな、キリエさん」
「さよなら」
私は、手を振り、海へ出た。
ある晴れた日に、私は次の研究のために進む。
どうか、元気でね。
お腹が空いて、力が出なくて。降り注ぐ日光で干からびそう。
いよいよ死を覚悟した時、海上レストラン「バラティエ」に拾われた。
私は、水と消化のいい食事をいただき、生き延びる。
「ご馳走さまでした。ありがとうございます」
「レディ、食後のデザートはいかがですか?」
「いいんですか?」
「もちろんだ」
「いただきます」
さっぱりとした柑橘類のゼリーは、とても美味しかった。
「あの、私、正確にはレディじゃないです……すいません、ややこしくて…………」
「キリエさん……?」
「私、性自認が男だったり女だったりするタイプでして。身体は女ですけど……」
「失礼。じゃあ、キリエさんは、キリエさんだな」
「はい。ありがとうございます」
彼は、とても善い人だと思う。サンジくんは、“美味しい料理を出す人”だから。
私は、“料理を美味しく食べる人”でありたいものだ。
「キリエさん、この後はどうする?」
「その~、こちらにしばらく厄介になってもいいですか? お金が尽きてまして。皿洗いくらいしか出来ませんが……」
そう言うと、オーナーに大声で私のことを伝えて、許可を取ってくれた。
ところで、私は、民俗学者である。バラティエの成り立ちや今後のことが気になった。
「どうして、海上にレストランを作ろうと思ったんですか?」「ここには、独自のおまじないやジンクスは、ありますか?」「今後も運営するにあたり、何か展望は?」などの質問を呑み込む。
まずは、信頼されなくてはならない。私の研究は、それが大切だ。土足で他人の領域に踏み込むなんてことは、してはいけないのだ。
人が集まるところに、文化あり。私は、それを書き記すのが生き甲斐だ。
その後。私は、バラティエで働きながら、ここの文化と歴史を学んでいった。
お腹を空かせた人に、善悪は関係ない。ここは、そういう場所。飢える者に、与えるところ。
当然、空腹を満たした後に襲ってくる賊もいた。バラティエの人々は、強い。大抵の者は返り討ちにした。
私は、戦闘面では役に立てないので、こっそり彼らを覗いて記録する。
大海賊時代。東の海にて。海上レストラン「バラティエ」あり。強き男たちにより、弱きは守られ、食事にありつける。
今日も、実りある一日だった。
こうして日々は過ぎていき、私は自分の旅に戻ることになる。
「サンジくん」
「なんだい? キリエさん」
「凪の日も嵐の日も、君が楽しく生きられますように」と、両手を組んで言った。
「それ……」
「私の故郷に伝わるおまじないだよ」
「ありがとう。寂しくなるな……」
私のような者に、心を残すべきではないよ。
「サンジくんは善い人だから、私のことなんて忘れなさい」
「でも、キリエさん…………」
そんなに悲しそうにしないで。
「それじゃあ、そうだな。もし、またどこかで会えたら、その時は、よろしくね」
「ああ。またな、キリエさん」
「さよなら」
私は、手を振り、海へ出た。
ある晴れた日に、私は次の研究のために進む。
どうか、元気でね。