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恥じ晒し。ろくでもない。最低の女。
ミョウジナマエは、親族から、そう言われている。私、そんなに罪深いことをしましたか?
ただ、夫の浮気をゆるせなかっただけです。ゆるしてやるのが女の甲斐性だと言われたけれど、私には無理でした。
私は、16歳で結婚して、東京へ嫁いだ。そして、不倫が発覚し、19歳で離婚した。故郷の哭倉村へ出戻り、龍賀の家で女中をしている。
実家である分家筋のミョウジ家から、厄介払いされたのだ。
女中仲間からも、腫れ物扱いされており、私には居場所がない。
そんな私が、唯一大切に想っていること。それは、沙代お嬢様の存在だ。
彼女は、私にも優しい。度々、東京の話をせがまれて、話した。
フルーツパーラーのこととか、闇市のこととか、サーカスのこととか。
沙代お嬢様は、瞳を輝かせながら聞いてくれた。
「私も、東京へ行きたい……」
「行けますよ、きっと」
そう答えると、寂しげに笑うあなた。
私が、あなたを連れ出せたらいいのに。以前、それを提案したら、今度こそ本当に私の居どころがなくなってしまうから、と断られた。
私は、私の人生をあなたに捧げてもいいかどうか、答えを出せないでいる。
ただ、私は、お嬢様の味方でいたい。それは、本心なのですよ。
ある日、時貞様がお亡くなりになった。それからすぐに、よそ者が来訪する。
その男は、水木といった。沙代お嬢様は、親切にされたらしく、すっかり慕っている。
「ナマエさん、私、あの方と東京へ行きます」
「……そうですか。ナマエは、応援しておりますよ」
「ありがとうございます」
そんなやり取りをしたけれど、結局、お嬢様はこの村から出られなかった。
知らなかったのです。まさか、あなたがそんな目に遭っていたなんて。
「沙代お嬢様…………」
知らぬことは罪です。私は、龍賀の行いに加担していたも同然です。
「ナマエは、もし、またあなたに会えたら、その時は必ず…………」
私は、化物に襲われて、命を落とした。
◆◆◆
目覚めた時、私は、中空を漂っていた。
『私は…………』
『ナマエさん』
『沙代お嬢様』
『行きましょう』
『はい』
どこへ、とは訊かない。私たちが行けるところは、きっとひとつだけだから。
『申し訳ありませんでした、お嬢様』
あなたに人生を懸けられなくて。
『ナマエさん、覚えていますか? 白いリボンのこと』
『はい。私が、東京で買ったものでございますね。お嬢様に、差し上げたものです』
『私、本当に嬉しかった。でも、あなたのことを、私が…………』
『お嬢様は、悪くありません。私が、もっと早く気付いていれば……』
あなたの手を引いて、東京でもどこでも行ったのに。
今度は、私は、あなたの手を離さない。どこまでも一緒に行こう。
ミョウジナマエは、親族から、そう言われている。私、そんなに罪深いことをしましたか?
ただ、夫の浮気をゆるせなかっただけです。ゆるしてやるのが女の甲斐性だと言われたけれど、私には無理でした。
私は、16歳で結婚して、東京へ嫁いだ。そして、不倫が発覚し、19歳で離婚した。故郷の哭倉村へ出戻り、龍賀の家で女中をしている。
実家である分家筋のミョウジ家から、厄介払いされたのだ。
女中仲間からも、腫れ物扱いされており、私には居場所がない。
そんな私が、唯一大切に想っていること。それは、沙代お嬢様の存在だ。
彼女は、私にも優しい。度々、東京の話をせがまれて、話した。
フルーツパーラーのこととか、闇市のこととか、サーカスのこととか。
沙代お嬢様は、瞳を輝かせながら聞いてくれた。
「私も、東京へ行きたい……」
「行けますよ、きっと」
そう答えると、寂しげに笑うあなた。
私が、あなたを連れ出せたらいいのに。以前、それを提案したら、今度こそ本当に私の居どころがなくなってしまうから、と断られた。
私は、私の人生をあなたに捧げてもいいかどうか、答えを出せないでいる。
ただ、私は、お嬢様の味方でいたい。それは、本心なのですよ。
ある日、時貞様がお亡くなりになった。それからすぐに、よそ者が来訪する。
その男は、水木といった。沙代お嬢様は、親切にされたらしく、すっかり慕っている。
「ナマエさん、私、あの方と東京へ行きます」
「……そうですか。ナマエは、応援しておりますよ」
「ありがとうございます」
そんなやり取りをしたけれど、結局、お嬢様はこの村から出られなかった。
知らなかったのです。まさか、あなたがそんな目に遭っていたなんて。
「沙代お嬢様…………」
知らぬことは罪です。私は、龍賀の行いに加担していたも同然です。
「ナマエは、もし、またあなたに会えたら、その時は必ず…………」
私は、化物に襲われて、命を落とした。
◆◆◆
目覚めた時、私は、中空を漂っていた。
『私は…………』
『ナマエさん』
『沙代お嬢様』
『行きましょう』
『はい』
どこへ、とは訊かない。私たちが行けるところは、きっとひとつだけだから。
『申し訳ありませんでした、お嬢様』
あなたに人生を懸けられなくて。
『ナマエさん、覚えていますか? 白いリボンのこと』
『はい。私が、東京で買ったものでございますね。お嬢様に、差し上げたものです』
『私、本当に嬉しかった。でも、あなたのことを、私が…………』
『お嬢様は、悪くありません。私が、もっと早く気付いていれば……』
あなたの手を引いて、東京でもどこでも行ったのに。
今度は、私は、あなたの手を離さない。どこまでも一緒に行こう。