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海賊船に潜り込んだ馬鹿な私。
「どういうつもりだ? ナマエ」
クラハドールさん、いや、クロが私に尋ねる。
「私は、あなたについて行きます。私の想いが消えるまで」
「想い? はは。バカだな、お前」
「そうですね……」
「行くぞ」
腕を掴まれ、引っ張られた。
船を降りるのだそうだ。
止めようとする船員たちを切り捨てながら、小舟を降ろして乗り込む。
故郷のシロップ村が遠退いた。どこかの、小さな村の片隅。そこの廃屋に、私たちは隠れた。
「ナマエ、お前が必要な物を調達しろ」
「はい。分かりました」
私は、村に出て、食料や日用品を買う。
雑貨屋の店主が、私に質問した。
「あんた、どこのもんだい?」
「旅の者です。連れが病気でして、私が看病しております」
「そりゃ、大変だ。医者をやろう」
「いえ、ご心配なく。生まれながらの病なのです。薬だけいただければ」
「あんた、名前は?」
「ナマエと申します」
「ナマエさん、何か困ったことがあったら、いつでも言いな」
「ありがとうございます」
荷物を抱えて、廃屋へ戻る。
「ただいま戻りました」
「…………」
「クラハドールさん……あ、いえ、クロさん……」
「クラハドールでいい」
「はい」
カヤお嬢様は、どうしているだろうか? 私が書いた置き手紙を読んだだろうか?
お屋敷を勝手に出て、申し訳ありません。
しばらく、ゆっくりとした時間が流れた。
「私、この家の補修をお願いしてきます。あなたは、布団を被っていてください」
「ああ」
村の大工に、工事を頼み、少し住みやすくなる。もう廃墟ではない。
月日は進む。ある晩、彼が私を呼んだ。
「ナマエ」
「はい」
腕を引かれて、私は、ベッドに腰かける背の高い彼に抱き締められる。
「クラハドールさん……」
「黙ってろ」
「はい……」
何故、頬ずるの?
それは、きっと気紛れ。
三日月の夜に、私は彼に抱かれた。
私の感情は、めちゃくちゃで、悲しいのか嬉しいのかも分からない。ただ、抵抗はしなかった。それが事実。
朝になって、幾分冷静になった私は、尋ねた。
「クラハドールさん、私は、なんですか? 人形ですか? ペットですか?」
「人形やペットを抱くシュミはねぇ」
「……そうですか」
都合のいい肉の塊、とかですか?
私は、それ以上は訊かなかった。思考停止が、一番楽だから。
どうしたいのだろう? どう生きていけばいいのだろう?
そんな疑問にも、蓋をする。
私は、折れてしまったのだと思う。花は折れて、それでも地を這うように足掻いている。
使ってくださって、ありがとうございます。とか、思うことも出来ないけれど。私は、そんな根っからの使用人ではない。
もう、何が欲しいのかも分からないのです。
◆◆◆
人形みたいに好き勝手に抱かれた後は、気分がよくない。
それでも、私には抵抗する気持ちはなかった。
「ナマエ」
「はい」
「想いとやらは消えたか?」
「……いいえ」
あなたは、私が愛したクラハドールさんではない。それは、虚像だった。
それでもなお、この男を恨むだけの人間にはなれずにいる。
「私の気持ちなど、あなたには関係ないでしょうに…………」
「そうだな。おまえと遊ぶのは、ただの暇潰しだ」
彼の両手が、私の首を絞めるように触れた。
「…………」
「つまらないな、おまえは」
射抜くような冷たい眼差し。
「そうですか」
殺された方が、今みたいに生きるよりは余程いいのかもしれない。そんなことを考えた。
その後。身支度を整えてから、村へ買い出しに行く。
そして、帰り道で賊に絡まれた。
「身なりがいいなぁ、おまえ」
「金目のもんを全部出しな」
「……嫌です」
私は、もう全く生きていたくはなくて。賊たちに歯向かった。
「じゃあ、人質になってもらおうか」
「そんな価値はありません。この村にとって、私は余所者ですから」
「でまかせだろ」
「そうだそうだ」
馬鹿な男たちは、私を拘束し、村の人たちを脅す。
「金を出さないと、コイツを殺す!」と、賊が吠えた。
「あの人、旅の方よね?」
「ああ」
村人たちは、ひそひそと話している。
ほら。だから言ったのに。
「なんだぁ? 薄情な連中だなぁ」
「まあいい。それでも、コイツを殺せばビビるだろうさ」
煌めくナイフが、首筋に当てられた。
これが最期か。愚か者の末路としては、丁度いい。
私は、目を閉じた。
「ぎゃっ!」
「うわぁっ!」
「ひ…………」
悲鳴が聴こえる。目を開けると、賊たちの死体が転がっていた。
「……クラハドールさん」
クロが、何故かいる。彼は、私の拘束を解いた。
「遅いから、様子を見に来てみれば……不運な奴だな、ナマエ……?」
「計画が水の泡になったあなたほどではありませんよ」
「ふん。帰るぞ」
「はい」
賊に奪われた荷物を取り戻し、先を行く彼を追いかける。
まだ地面をのた打っていろと言うの? この世界は残酷だ。
「ナマエ」
帰るや否や、名前を呼ばれる。
「はい。どうかしました?」
「血が出てる」
「っ!?」
首筋を舐められ、心臓が跳ねた。
「不味いな」
「…………」
いつもの気紛れだろう。いちいち驚いて、馬鹿みたいだ。
「明日には、ここを出るぞ」
「……はい」
私の旅路は、まだ終わらないらしい。
沈む太陽が、私の影を伸ばしている。
「どういうつもりだ? ナマエ」
クラハドールさん、いや、クロが私に尋ねる。
「私は、あなたについて行きます。私の想いが消えるまで」
「想い? はは。バカだな、お前」
「そうですね……」
「行くぞ」
腕を掴まれ、引っ張られた。
船を降りるのだそうだ。
止めようとする船員たちを切り捨てながら、小舟を降ろして乗り込む。
故郷のシロップ村が遠退いた。どこかの、小さな村の片隅。そこの廃屋に、私たちは隠れた。
「ナマエ、お前が必要な物を調達しろ」
「はい。分かりました」
私は、村に出て、食料や日用品を買う。
雑貨屋の店主が、私に質問した。
「あんた、どこのもんだい?」
「旅の者です。連れが病気でして、私が看病しております」
「そりゃ、大変だ。医者をやろう」
「いえ、ご心配なく。生まれながらの病なのです。薬だけいただければ」
「あんた、名前は?」
「ナマエと申します」
「ナマエさん、何か困ったことがあったら、いつでも言いな」
「ありがとうございます」
荷物を抱えて、廃屋へ戻る。
「ただいま戻りました」
「…………」
「クラハドールさん……あ、いえ、クロさん……」
「クラハドールでいい」
「はい」
カヤお嬢様は、どうしているだろうか? 私が書いた置き手紙を読んだだろうか?
お屋敷を勝手に出て、申し訳ありません。
しばらく、ゆっくりとした時間が流れた。
「私、この家の補修をお願いしてきます。あなたは、布団を被っていてください」
「ああ」
村の大工に、工事を頼み、少し住みやすくなる。もう廃墟ではない。
月日は進む。ある晩、彼が私を呼んだ。
「ナマエ」
「はい」
腕を引かれて、私は、ベッドに腰かける背の高い彼に抱き締められる。
「クラハドールさん……」
「黙ってろ」
「はい……」
何故、頬ずるの?
それは、きっと気紛れ。
三日月の夜に、私は彼に抱かれた。
私の感情は、めちゃくちゃで、悲しいのか嬉しいのかも分からない。ただ、抵抗はしなかった。それが事実。
朝になって、幾分冷静になった私は、尋ねた。
「クラハドールさん、私は、なんですか? 人形ですか? ペットですか?」
「人形やペットを抱くシュミはねぇ」
「……そうですか」
都合のいい肉の塊、とかですか?
私は、それ以上は訊かなかった。思考停止が、一番楽だから。
どうしたいのだろう? どう生きていけばいいのだろう?
そんな疑問にも、蓋をする。
私は、折れてしまったのだと思う。花は折れて、それでも地を這うように足掻いている。
使ってくださって、ありがとうございます。とか、思うことも出来ないけれど。私は、そんな根っからの使用人ではない。
もう、何が欲しいのかも分からないのです。
◆◆◆
人形みたいに好き勝手に抱かれた後は、気分がよくない。
それでも、私には抵抗する気持ちはなかった。
「ナマエ」
「はい」
「想いとやらは消えたか?」
「……いいえ」
あなたは、私が愛したクラハドールさんではない。それは、虚像だった。
それでもなお、この男を恨むだけの人間にはなれずにいる。
「私の気持ちなど、あなたには関係ないでしょうに…………」
「そうだな。おまえと遊ぶのは、ただの暇潰しだ」
彼の両手が、私の首を絞めるように触れた。
「…………」
「つまらないな、おまえは」
射抜くような冷たい眼差し。
「そうですか」
殺された方が、今みたいに生きるよりは余程いいのかもしれない。そんなことを考えた。
その後。身支度を整えてから、村へ買い出しに行く。
そして、帰り道で賊に絡まれた。
「身なりがいいなぁ、おまえ」
「金目のもんを全部出しな」
「……嫌です」
私は、もう全く生きていたくはなくて。賊たちに歯向かった。
「じゃあ、人質になってもらおうか」
「そんな価値はありません。この村にとって、私は余所者ですから」
「でまかせだろ」
「そうだそうだ」
馬鹿な男たちは、私を拘束し、村の人たちを脅す。
「金を出さないと、コイツを殺す!」と、賊が吠えた。
「あの人、旅の方よね?」
「ああ」
村人たちは、ひそひそと話している。
ほら。だから言ったのに。
「なんだぁ? 薄情な連中だなぁ」
「まあいい。それでも、コイツを殺せばビビるだろうさ」
煌めくナイフが、首筋に当てられた。
これが最期か。愚か者の末路としては、丁度いい。
私は、目を閉じた。
「ぎゃっ!」
「うわぁっ!」
「ひ…………」
悲鳴が聴こえる。目を開けると、賊たちの死体が転がっていた。
「……クラハドールさん」
クロが、何故かいる。彼は、私の拘束を解いた。
「遅いから、様子を見に来てみれば……不運な奴だな、ナマエ……?」
「計画が水の泡になったあなたほどではありませんよ」
「ふん。帰るぞ」
「はい」
賊に奪われた荷物を取り戻し、先を行く彼を追いかける。
まだ地面をのた打っていろと言うの? この世界は残酷だ。
「ナマエ」
帰るや否や、名前を呼ばれる。
「はい。どうかしました?」
「血が出てる」
「っ!?」
首筋を舐められ、心臓が跳ねた。
「不味いな」
「…………」
いつもの気紛れだろう。いちいち驚いて、馬鹿みたいだ。
「明日には、ここを出るぞ」
「……はい」
私の旅路は、まだ終わらないらしい。
沈む太陽が、私の影を伸ばしている。
