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近道しようと思って、公園を突っ切ることにした。
そうしたら、真っ黒な不審者がいた。
夕暮れ時の公園の砂場で、前髪で目が見えず、口端が赤い糸で縫われた人がいる。男とも女ともつかない。
砂場の縁に腰掛けて、ティーカップに入れた砂をさらさらとこぼしている。
「こんにちは」
こちらに気付いた怪人物は、挨拶をした。
声の低い女性とも、声の高い男性とも思える。
「……こんにちは。なにしてるんですか?」
つい、そんな質問をしてしまう。
「ひとりで、砂遊びしてます」
見たままだったらしい。
「あなたは?」
「帰る途中です」
「そうですか」
スッと立つ彼? 彼女?
身長は、170㎝くらい。
「では、さようなら」
小さく手を振りながら言う。
「さよなら」と、返して、足早に去った。
帰宅し、砂場の謎の人物の話を家族にすると。
「それ、すなえさんだよ」
小学生の弟が、意外な答えを言った。
「すなえさん?」
「たまに、一緒に遊んでる」
「マジか」
「マジ」
弟の交友関係に、あんな謎の人がいたとは。
弟が言うには、すなえさんは、ふらっと公園にやって来ては、ひとりで遊んでいるらしい。
ブランコに乗ったり、ジャングルジムの天辺でぼんやりしていたり、滑り台を滑ったり。希に、エアガンで空き缶を撃ったり、爆竹を鳴らしたりもするようだった。
そんな、すなえさんを面白がって、怖いもの知らずの小学生たちは、話しかけたみたい。
“なんで、ひとりで遊んでるの?”
“友達がいないからです”
“ふーん。一緒に遊ぶ?”
“はい。よろしくお願いします”
すなえさんは、小学生たちに付き合い、かくれんぼやゲーム機の通信機能を用いた鬼ごっこなどにも参加してくれたとか。
小学生たちには、気さくな謎の黒ずくめの大人として有名らしい。
なんかもう、そういう怪異じゃない? 公園に棲み着いてない?
翌日の夕方。また、公園を通ることにした。
すると、歌声が聴こえる。
すなえさんが、砂場に立って、歌っていた。どこか不気味な童謡みたいな旋律。
「すなえさん」
「はい」
呼ぶと、すぐに歌うのをやめて、こちらを向く。
「弟が、お世話になってるみたいで」
「そうでしたか。それで名前を?」
「はい。すなえさんって何者なんですか?」
「私は、こういう者です」
意外にも、名刺を差し出された。
フルネームは、「砂江すなえ」。職業は、文筆家。QRコード付き。
「小説とか書くんですか?」
「はい。あとは、エッセイや短歌や作詞など」
「へー」
もはや、怪人ではなくなってきた。謎は多いけど、普通の人間らしい。
「趣味はなんですか?」
「媒体を問わず、物語鑑賞です」
そう答えて、ニッと笑うすなえさん。ギザギザの歯が覗いている。
夕日を背にして笑う様は、やっぱり少し怪人みたいだった。
そうしたら、真っ黒な不審者がいた。
夕暮れ時の公園の砂場で、前髪で目が見えず、口端が赤い糸で縫われた人がいる。男とも女ともつかない。
砂場の縁に腰掛けて、ティーカップに入れた砂をさらさらとこぼしている。
「こんにちは」
こちらに気付いた怪人物は、挨拶をした。
声の低い女性とも、声の高い男性とも思える。
「……こんにちは。なにしてるんですか?」
つい、そんな質問をしてしまう。
「ひとりで、砂遊びしてます」
見たままだったらしい。
「あなたは?」
「帰る途中です」
「そうですか」
スッと立つ彼? 彼女?
身長は、170㎝くらい。
「では、さようなら」
小さく手を振りながら言う。
「さよなら」と、返して、足早に去った。
帰宅し、砂場の謎の人物の話を家族にすると。
「それ、すなえさんだよ」
小学生の弟が、意外な答えを言った。
「すなえさん?」
「たまに、一緒に遊んでる」
「マジか」
「マジ」
弟の交友関係に、あんな謎の人がいたとは。
弟が言うには、すなえさんは、ふらっと公園にやって来ては、ひとりで遊んでいるらしい。
ブランコに乗ったり、ジャングルジムの天辺でぼんやりしていたり、滑り台を滑ったり。希に、エアガンで空き缶を撃ったり、爆竹を鳴らしたりもするようだった。
そんな、すなえさんを面白がって、怖いもの知らずの小学生たちは、話しかけたみたい。
“なんで、ひとりで遊んでるの?”
“友達がいないからです”
“ふーん。一緒に遊ぶ?”
“はい。よろしくお願いします”
すなえさんは、小学生たちに付き合い、かくれんぼやゲーム機の通信機能を用いた鬼ごっこなどにも参加してくれたとか。
小学生たちには、気さくな謎の黒ずくめの大人として有名らしい。
なんかもう、そういう怪異じゃない? 公園に棲み着いてない?
翌日の夕方。また、公園を通ることにした。
すると、歌声が聴こえる。
すなえさんが、砂場に立って、歌っていた。どこか不気味な童謡みたいな旋律。
「すなえさん」
「はい」
呼ぶと、すぐに歌うのをやめて、こちらを向く。
「弟が、お世話になってるみたいで」
「そうでしたか。それで名前を?」
「はい。すなえさんって何者なんですか?」
「私は、こういう者です」
意外にも、名刺を差し出された。
フルネームは、「砂江すなえ」。職業は、文筆家。QRコード付き。
「小説とか書くんですか?」
「はい。あとは、エッセイや短歌や作詞など」
「へー」
もはや、怪人ではなくなってきた。謎は多いけど、普通の人間らしい。
「趣味はなんですか?」
「媒体を問わず、物語鑑賞です」
そう答えて、ニッと笑うすなえさん。ギザギザの歯が覗いている。
夕日を背にして笑う様は、やっぱり少し怪人みたいだった。