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仕事終わりだから、しばらくキスは出来ない。
俺は勇者、《毒沼》ミョウジ。エーテル知覚は、自分の体液を毒にするものだ。
恋人は、それを聞いて「じゃあ、メダリオンでもしましょうか」と言う。
「いいぜ。俺の“バッド・メディシン”デッキが勝つけどな」
いつもの光景だった。
それは、過ぎ去った情景。
◆◆◆
「ミョウジさん」
「ん? なんだ?」
イシノオに声をかけられたのは、エドの店を後にして、並んで歩いている時だった。
「ミョウジさんって、ぼくのことが好きなんですか?」
「は……?」
図星である。俺は、間抜けなツラをしているだろう。
「いえ、違うなら別にそれでいいんですけど」
「……違わない。俺は、お前のことが好きだ」
「そうですか……」
「お前は? 俺のことをどう思ってる?」
イシノオは、少し考える仕草をした。
「ぼくも、ミョウジさんのことが好きですよ」
「そ、そんな素振りなかったじゃねぇか……」
思わず出た声が掠れる。
「まあ、最近そうなったので。それで、あなたのことをよく見るようになったら、どうもミョウジさんの視線が気になりまして」
恥っず。
俺は、片手で顔を覆った。
「ぼくたち、付き合いませんか?」
「うん。よろしく」
「はい。よろしくお願いします」
俺とイシノオは、握手をする。
それから、歩きながら話した。
「アイツらには黙ってようぜ。弄り倒されるに決まってる。エドにはバレそうだが」
「わざわざ言うことでもありませんからね」
ふたりのことを、ヤシロたちには何も言わないことにする。
「イシノオ。俺ん家に来ねぇか?」
「おや、一体なにをされてしまうんでしょう?」
「はは。なにをされたいか考えとけ」
自宅へ招き入れてすぐ、俺はイシノオを抱き締めた。
「好きだ……」
「知ってます」
イシノオの腕が、俺の背中に回される。
しばらく、そのまま抱き合っていた。
「なあ、キスしてもいいか?」
「はい」と答え、イシノオは笑う。
俺は、彼の頬に手を添え、唇を重ねた。
「ん……」
舌を口内に侵入させると、イシノオから吐息が漏れる。
「ふ……」
イシノオも、積極的に舌を絡めてきて、俺はドキリとした。
「怖くねぇか?」
俺の体液は、毒になるもの。人を殺すもの。
「怖くないですよ。ミョウジさんのことを信頼してますから」
「それならいいんだけどよ」
「ふふ。ねぇ、しちゃいますか?」
イシノオは、俺の手に手を重ね、艶っぽく言った。
俺には、その誘いを断れそうにない。
「後悔すんなよ?」
「しませんよ」
俺は、イシノオの体を抱き上げ、ベッドまで運んで、押し倒した。
「ミョウジさん」
「なんだ?」
「あなたの好きにしてください」
「…………」
その台詞は、甘い毒のようで。頭がくらくらした。
首筋にキスを落とすと、イシノオはクスクスと笑う。
顔を上げると、手袋を外した彼の両手が俺の首に回されて、キスをされた。
愛というものは、猛毒である。
◆◆◆
イシノオを失ったら、俺はどうなるだろうか?
そんなことを、たまに考える。
「ミョウジさん?」
「なんでもねぇよ」
するりと、恋人の頬に手を滑らせた。
「そうですか。それじゃあ、しますか?」
「ああ」
俺は、ベッドの上でイシノオを味わい尽くす。
「ミョウジさんって、ぼくのことが本当に好きですよね」
事後。イシノオが呟くように言った。
「当たり前だろ」
イシノオの額にキスを落として返事をする。
「そんなことありませんよ」と、イシノオは笑った。
「ぼくの趣味、ご存知でしょう?」
《音楽屋》イシノオは、人の断末魔の悲鳴を録音するのが好きである。
「俺も似たようなもんだからなぁ……」
「ふふ。そうでしたね」
俺の手を握り、指を絡ませてくるイシノオ。
その手が愛おしくて、俺は頬をすり寄せた。
「ミョウジさんの悲鳴、聴いてみたいです」
「そりゃ、無理だな。何されても悲鳴なんて上げねぇよ」
「冗談です」
「そうかい」
空いている方の手で、イシノオの頭を撫でる。
イシノオは、気持ちよさそうに目を細めた。
「眠そうだな。寝るか?」
「はい……」
ふたりで就寝する。
この温度に、いつか、完全に慣れてしまうのが少し怖かった。
翌朝。
「おはようございます」
「はよー」
先に起きていたイシノオに、挨拶を返す。
「ねみー」
「おや」
イシノオに体重を預けるように抱き付いた。
「ミョウジさん、相変わらず朝に弱いですねえ」
「うん……好きだ、イシノオ…………」
「ふふふ。寝ぼけてますね」
それから。ふたりで身支度をして、朝食を食べた。
「それでは、また後で」
「ああ、またな」
イシノオを見送る。
自宅にひとりになった俺は、煙草に火を着けた。
「ふぅ」
どうせ。すぐにエドの店で会えるってのに。
寂しい、な。
「はぁ~」
テーブルに突っ伏し、溜め息をつく。
自分が、どんどん弱くなっているようで。でも、どうしようもなくて。
別に、“愛”って、人を強くするとは限らないようだ。
煙草を灰皿に押し付けてから、俺は仕事にかかることにする。
帰りにいつもの店に寄ると、イシノオとヤシロとジョーがいた。
「よう、ミョウジ」
「お疲れさん」
ヤシロと挨拶を交わす。
「お疲れ様です」
「イシノオも、お疲れさん」
愛しい時間が戻った。
俺たちは、いつものように酒を飲み、メダリオンをして遊ぶ。
こんな日々が続いていくと思っていた。
俺は、すでに、こんな日常を愛していたんだ。
取り返しがつかないくらい弱くなっていた。
数日後。E4について調べてみると言った勇者、《音楽屋》イシノオは殺された。
◆◆◆
俺の悲鳴が聴こえるか?
「…………」
実際の俺は、無言でベッドの上に横たわっているだけだ。
だが、精神がズタズタで、心が軋んでいる。嫌な音がした。
それは、まさに悲鳴である。
「イシノオ……」
恋人の名を呼ぶ。返事はない。
ヤシロたちは、復讐のために動いているってのに。
俺だって、そうしてやりたいのに。
イシノオに会いたい。今すぐ会いに行きたい。
それは、俺が死ぬことを意味している。
“ミョウジさん”
“どうせ会いに来るというなら”
“せっかくですから”
「ああ……そうだな……イシノオ。お前を殺した奴らを、ひとりでも多く地獄へ送ってやるよ」
勇者、《毒沼》ミョウジは、決意を固めた。
「お前に会いに行くのは、その後だ」
俺は、ヤシロたちに続いて復讐をすることにする。
準備に抜かりはない。
必要な武器は、特注品の水鉄砲と、無数の針。そして、E3。
俺は、標的を追跡した。
そして、すれ違い様に、俺の指を刺した後の針を相手の首筋に立てる。
「っが…………!?」
「苦しいか? 情報を吐けば解毒剤をやらないでもねぇが」
標的は、泡を吹き、首を掻きむしった。
「お前、E4って知ってるか?」
「し、らない……!」
「あ、そ。じゃあ死ねや」
俺は、手をひらひらと振りながら、背を向けて去る。
さて。次だ。
次の相手は、近付けそうになかった。
だから、俺の体液を混ぜた水を、水鉄砲で撃つ。
「うわっ!?」
頭から水を被った標的は、やがてそれがただの水ではないと気付くだろう。
「ぎぃっ……!?」
俺の毒は、呼吸を阻害し、意識障害を起こさせる。
苦しめ。
俺は、隠れていた場所から飛び降り、標的に近付いた。
「なあ、探し物をしてんだ。E4っていうんだけどよ」
「ひっ……ひっ…………」
「このままじゃ、数分で死ぬぜ?」
「わかっ、た……はなす、はなすから……」
「ご親切に、どうも」
俺は、解毒剤を注射してやる。
標的の男は、知っていることを話してから、もう勘弁してくれという顔をした。
「《音楽屋》イシノオを殺ったのは誰だ?」
「し、知らない……」
「そうかい」
「えっ?」
男の目玉に針を刺し、俺は立ち去ることにする。
背後から、人が倒れる音がした。
「ふぅ」
煙草に火を着け、吸いながら歩く。
悪いが、いや、全く悪いとは思ってないが、敵は全員殺してやる。
それが、俺なりの手向けだからだ。
先にあの世へ逝って、イシノオに悲鳴を聴かせてやれ。
楽しいか? イシノオ。
俺は、楽しいよ。
ろくでなしだからな、俺は。人を毒殺すんのが楽しいんだ。
その行為は、愛する者を喪った現実を麻痺させる毒で。《毒沼》ミョウジが、自身に与え続けるべきものだった。
毒をもって毒を制すってやつ。
俺は勇者、《毒沼》ミョウジ。エーテル知覚は、自分の体液を毒にするものだ。
恋人は、それを聞いて「じゃあ、メダリオンでもしましょうか」と言う。
「いいぜ。俺の“バッド・メディシン”デッキが勝つけどな」
いつもの光景だった。
それは、過ぎ去った情景。
◆◆◆
「ミョウジさん」
「ん? なんだ?」
イシノオに声をかけられたのは、エドの店を後にして、並んで歩いている時だった。
「ミョウジさんって、ぼくのことが好きなんですか?」
「は……?」
図星である。俺は、間抜けなツラをしているだろう。
「いえ、違うなら別にそれでいいんですけど」
「……違わない。俺は、お前のことが好きだ」
「そうですか……」
「お前は? 俺のことをどう思ってる?」
イシノオは、少し考える仕草をした。
「ぼくも、ミョウジさんのことが好きですよ」
「そ、そんな素振りなかったじゃねぇか……」
思わず出た声が掠れる。
「まあ、最近そうなったので。それで、あなたのことをよく見るようになったら、どうもミョウジさんの視線が気になりまして」
恥っず。
俺は、片手で顔を覆った。
「ぼくたち、付き合いませんか?」
「うん。よろしく」
「はい。よろしくお願いします」
俺とイシノオは、握手をする。
それから、歩きながら話した。
「アイツらには黙ってようぜ。弄り倒されるに決まってる。エドにはバレそうだが」
「わざわざ言うことでもありませんからね」
ふたりのことを、ヤシロたちには何も言わないことにする。
「イシノオ。俺ん家に来ねぇか?」
「おや、一体なにをされてしまうんでしょう?」
「はは。なにをされたいか考えとけ」
自宅へ招き入れてすぐ、俺はイシノオを抱き締めた。
「好きだ……」
「知ってます」
イシノオの腕が、俺の背中に回される。
しばらく、そのまま抱き合っていた。
「なあ、キスしてもいいか?」
「はい」と答え、イシノオは笑う。
俺は、彼の頬に手を添え、唇を重ねた。
「ん……」
舌を口内に侵入させると、イシノオから吐息が漏れる。
「ふ……」
イシノオも、積極的に舌を絡めてきて、俺はドキリとした。
「怖くねぇか?」
俺の体液は、毒になるもの。人を殺すもの。
「怖くないですよ。ミョウジさんのことを信頼してますから」
「それならいいんだけどよ」
「ふふ。ねぇ、しちゃいますか?」
イシノオは、俺の手に手を重ね、艶っぽく言った。
俺には、その誘いを断れそうにない。
「後悔すんなよ?」
「しませんよ」
俺は、イシノオの体を抱き上げ、ベッドまで運んで、押し倒した。
「ミョウジさん」
「なんだ?」
「あなたの好きにしてください」
「…………」
その台詞は、甘い毒のようで。頭がくらくらした。
首筋にキスを落とすと、イシノオはクスクスと笑う。
顔を上げると、手袋を外した彼の両手が俺の首に回されて、キスをされた。
愛というものは、猛毒である。
◆◆◆
イシノオを失ったら、俺はどうなるだろうか?
そんなことを、たまに考える。
「ミョウジさん?」
「なんでもねぇよ」
するりと、恋人の頬に手を滑らせた。
「そうですか。それじゃあ、しますか?」
「ああ」
俺は、ベッドの上でイシノオを味わい尽くす。
「ミョウジさんって、ぼくのことが本当に好きですよね」
事後。イシノオが呟くように言った。
「当たり前だろ」
イシノオの額にキスを落として返事をする。
「そんなことありませんよ」と、イシノオは笑った。
「ぼくの趣味、ご存知でしょう?」
《音楽屋》イシノオは、人の断末魔の悲鳴を録音するのが好きである。
「俺も似たようなもんだからなぁ……」
「ふふ。そうでしたね」
俺の手を握り、指を絡ませてくるイシノオ。
その手が愛おしくて、俺は頬をすり寄せた。
「ミョウジさんの悲鳴、聴いてみたいです」
「そりゃ、無理だな。何されても悲鳴なんて上げねぇよ」
「冗談です」
「そうかい」
空いている方の手で、イシノオの頭を撫でる。
イシノオは、気持ちよさそうに目を細めた。
「眠そうだな。寝るか?」
「はい……」
ふたりで就寝する。
この温度に、いつか、完全に慣れてしまうのが少し怖かった。
翌朝。
「おはようございます」
「はよー」
先に起きていたイシノオに、挨拶を返す。
「ねみー」
「おや」
イシノオに体重を預けるように抱き付いた。
「ミョウジさん、相変わらず朝に弱いですねえ」
「うん……好きだ、イシノオ…………」
「ふふふ。寝ぼけてますね」
それから。ふたりで身支度をして、朝食を食べた。
「それでは、また後で」
「ああ、またな」
イシノオを見送る。
自宅にひとりになった俺は、煙草に火を着けた。
「ふぅ」
どうせ。すぐにエドの店で会えるってのに。
寂しい、な。
「はぁ~」
テーブルに突っ伏し、溜め息をつく。
自分が、どんどん弱くなっているようで。でも、どうしようもなくて。
別に、“愛”って、人を強くするとは限らないようだ。
煙草を灰皿に押し付けてから、俺は仕事にかかることにする。
帰りにいつもの店に寄ると、イシノオとヤシロとジョーがいた。
「よう、ミョウジ」
「お疲れさん」
ヤシロと挨拶を交わす。
「お疲れ様です」
「イシノオも、お疲れさん」
愛しい時間が戻った。
俺たちは、いつものように酒を飲み、メダリオンをして遊ぶ。
こんな日々が続いていくと思っていた。
俺は、すでに、こんな日常を愛していたんだ。
取り返しがつかないくらい弱くなっていた。
数日後。E4について調べてみると言った勇者、《音楽屋》イシノオは殺された。
◆◆◆
俺の悲鳴が聴こえるか?
「…………」
実際の俺は、無言でベッドの上に横たわっているだけだ。
だが、精神がズタズタで、心が軋んでいる。嫌な音がした。
それは、まさに悲鳴である。
「イシノオ……」
恋人の名を呼ぶ。返事はない。
ヤシロたちは、復讐のために動いているってのに。
俺だって、そうしてやりたいのに。
イシノオに会いたい。今すぐ会いに行きたい。
それは、俺が死ぬことを意味している。
“ミョウジさん”
“どうせ会いに来るというなら”
“せっかくですから”
「ああ……そうだな……イシノオ。お前を殺した奴らを、ひとりでも多く地獄へ送ってやるよ」
勇者、《毒沼》ミョウジは、決意を固めた。
「お前に会いに行くのは、その後だ」
俺は、ヤシロたちに続いて復讐をすることにする。
準備に抜かりはない。
必要な武器は、特注品の水鉄砲と、無数の針。そして、E3。
俺は、標的を追跡した。
そして、すれ違い様に、俺の指を刺した後の針を相手の首筋に立てる。
「っが…………!?」
「苦しいか? 情報を吐けば解毒剤をやらないでもねぇが」
標的は、泡を吹き、首を掻きむしった。
「お前、E4って知ってるか?」
「し、らない……!」
「あ、そ。じゃあ死ねや」
俺は、手をひらひらと振りながら、背を向けて去る。
さて。次だ。
次の相手は、近付けそうになかった。
だから、俺の体液を混ぜた水を、水鉄砲で撃つ。
「うわっ!?」
頭から水を被った標的は、やがてそれがただの水ではないと気付くだろう。
「ぎぃっ……!?」
俺の毒は、呼吸を阻害し、意識障害を起こさせる。
苦しめ。
俺は、隠れていた場所から飛び降り、標的に近付いた。
「なあ、探し物をしてんだ。E4っていうんだけどよ」
「ひっ……ひっ…………」
「このままじゃ、数分で死ぬぜ?」
「わかっ、た……はなす、はなすから……」
「ご親切に、どうも」
俺は、解毒剤を注射してやる。
標的の男は、知っていることを話してから、もう勘弁してくれという顔をした。
「《音楽屋》イシノオを殺ったのは誰だ?」
「し、知らない……」
「そうかい」
「えっ?」
男の目玉に針を刺し、俺は立ち去ることにする。
背後から、人が倒れる音がした。
「ふぅ」
煙草に火を着け、吸いながら歩く。
悪いが、いや、全く悪いとは思ってないが、敵は全員殺してやる。
それが、俺なりの手向けだからだ。
先にあの世へ逝って、イシノオに悲鳴を聴かせてやれ。
楽しいか? イシノオ。
俺は、楽しいよ。
ろくでなしだからな、俺は。人を毒殺すんのが楽しいんだ。
その行為は、愛する者を喪った現実を麻痺させる毒で。《毒沼》ミョウジが、自身に与え続けるべきものだった。
毒をもって毒を制すってやつ。
