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だって、バカみたいじゃない?
好きとか嫌いとか。愛してるとか愛してないとか。
恋愛って、古臭い癖にマジョリティぶっててさ。
ぶってるって言うか、ずっと大人気コンテンツだよね。
バカみたいじゃない? 人間って。
まあ、俺も愚かな人間なんだけどさ。
「森田、金返せよ」
「あ、コロボックル!」
「おい、コラ」
俺を無視して、森田は走り去った。
同じ彫刻科である森田忍は、天才で、変人で、金が好きである。
俺、ミョウジナマエは、そんな彼のことが好き。頭が痛くなってくる。
実のところ、金なんてあげてしまってもいいし、森田の作品を見ても嫉妬するどころか感動するし、アイツに振り回されても悪い気はしないし。
なんで森田のことが好きなのかは、全然分からないけど。
「ミョウジさん?」
「おー、真山じゃん」
「森田さんですか?」
「もう逃げられたよ」
「相変わらずですね」
真山は、森田と同じ寮に住んでいる。
「ミョウジさんは……」
やめて。
「……森田さんのこと好きなんですか?」
「……どうかな。執着してるだけかも」
「それも恋じゃないですか?」
「…………」
返す言葉を失う。
「すいません、生意気なこと言って」
「いや、別にいいよ」
真山と別れ、作りかけの彫刻の元へ向かった。
その木彫りの像は、一見人間のように見えるが、決定的にそうではない部分がある。
長く鋭い、角と爪。
「ミョウジ」
「はい」
丹下先生に呼ばれ、返事をした。
「お前は、人間が嫌いか?」
「はい。無駄が多過ぎますから」
「そうか。何が無駄なんだ?」
「これですよ。芸術なんて、無駄の極致じゃないですか」
丹下先生は、溜め息をつく。
「ミョウジ。お前の“病み”はいいものを作るが、それをワシは看過出来ん」
「ははは。そうですよね」
「健やかであれよ、ミョウジ」
「善処します」
丹下先生が去り、ひとりで作品と向き合う。
ノミを手にして、心臓部分に穴を空けていった。
角と爪があり、心がないもの。それは、鬼とも違う気がした。
「お前は、化け物だ」
人になりたかったけど、なれなかった哀れな存在。
「ミョウジが、また怖いもん作ってら」
「森田……」
いつの間にか、背後に彼がいた。
「ミョウジ。お前、大丈夫か?」
「……大丈夫、じゃない」
誰のせいだと思ってるんだ? 全てがお前のせいだとは言わないが、半分くらいは森田のせいだぞ。
「じゃあ、ちょっと来いよ」
「え?」
森田が、俺の腕を引いて走る。
そして、そのまま、アイスクリーム屋に連れて行かれた。
「何がいい?」
「え、と。チョコレートかな」
「もうひとつは」
ダブルなんだ。
「ヨーグルト」
「あと、ひとつ!」
トリプルなんだ。
「キャラメル」
「よし! 分かった!」
森田は、俺にアイス(トリプル)を奢ってくれるつもりらしい。
今日って、世界が終わる日?
「ほら」
「ありがとう、森田……」
アイスのカップを渡され、店の前の椅子に座って食べる。
森田のトリプルアイスは、全部期間限定のフレーバーだった。
「美味いか?」
「うん」
アイスクリームの存在って、数少ない人間の功績だよな。
春。柔らかな風が吹く中で。
俺は、好きな人の隣にいた。
熱くなる頭に、冷たいアイスはぴったりだった。
好きとか嫌いとか。愛してるとか愛してないとか。
恋愛って、古臭い癖にマジョリティぶっててさ。
ぶってるって言うか、ずっと大人気コンテンツだよね。
バカみたいじゃない? 人間って。
まあ、俺も愚かな人間なんだけどさ。
「森田、金返せよ」
「あ、コロボックル!」
「おい、コラ」
俺を無視して、森田は走り去った。
同じ彫刻科である森田忍は、天才で、変人で、金が好きである。
俺、ミョウジナマエは、そんな彼のことが好き。頭が痛くなってくる。
実のところ、金なんてあげてしまってもいいし、森田の作品を見ても嫉妬するどころか感動するし、アイツに振り回されても悪い気はしないし。
なんで森田のことが好きなのかは、全然分からないけど。
「ミョウジさん?」
「おー、真山じゃん」
「森田さんですか?」
「もう逃げられたよ」
「相変わらずですね」
真山は、森田と同じ寮に住んでいる。
「ミョウジさんは……」
やめて。
「……森田さんのこと好きなんですか?」
「……どうかな。執着してるだけかも」
「それも恋じゃないですか?」
「…………」
返す言葉を失う。
「すいません、生意気なこと言って」
「いや、別にいいよ」
真山と別れ、作りかけの彫刻の元へ向かった。
その木彫りの像は、一見人間のように見えるが、決定的にそうではない部分がある。
長く鋭い、角と爪。
「ミョウジ」
「はい」
丹下先生に呼ばれ、返事をした。
「お前は、人間が嫌いか?」
「はい。無駄が多過ぎますから」
「そうか。何が無駄なんだ?」
「これですよ。芸術なんて、無駄の極致じゃないですか」
丹下先生は、溜め息をつく。
「ミョウジ。お前の“病み”はいいものを作るが、それをワシは看過出来ん」
「ははは。そうですよね」
「健やかであれよ、ミョウジ」
「善処します」
丹下先生が去り、ひとりで作品と向き合う。
ノミを手にして、心臓部分に穴を空けていった。
角と爪があり、心がないもの。それは、鬼とも違う気がした。
「お前は、化け物だ」
人になりたかったけど、なれなかった哀れな存在。
「ミョウジが、また怖いもん作ってら」
「森田……」
いつの間にか、背後に彼がいた。
「ミョウジ。お前、大丈夫か?」
「……大丈夫、じゃない」
誰のせいだと思ってるんだ? 全てがお前のせいだとは言わないが、半分くらいは森田のせいだぞ。
「じゃあ、ちょっと来いよ」
「え?」
森田が、俺の腕を引いて走る。
そして、そのまま、アイスクリーム屋に連れて行かれた。
「何がいい?」
「え、と。チョコレートかな」
「もうひとつは」
ダブルなんだ。
「ヨーグルト」
「あと、ひとつ!」
トリプルなんだ。
「キャラメル」
「よし! 分かった!」
森田は、俺にアイス(トリプル)を奢ってくれるつもりらしい。
今日って、世界が終わる日?
「ほら」
「ありがとう、森田……」
アイスのカップを渡され、店の前の椅子に座って食べる。
森田のトリプルアイスは、全部期間限定のフレーバーだった。
「美味いか?」
「うん」
アイスクリームの存在って、数少ない人間の功績だよな。
春。柔らかな風が吹く中で。
俺は、好きな人の隣にいた。
熱くなる頭に、冷たいアイスはぴったりだった。
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