A級9位!秋津隊
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自分は、孤独な鯨だと思っていた。
冷泉冬樹は、くじら座である。だから鯨が好きだし、水泳が好きな自分を鯨に例えた。
昔、冷めた瞳だと言われたことがある。感情が顔に出ないだけだったのに、感情がないと思われた。
「冬樹くんは、私のこと好きじゃないんだね」
恋人は、冷泉の元を去る。それを追いかける勇気があれば、まだ恋は壊れなかったのだろうか?
そして彼は、前髪で目を隠した。
もういいよ。誰も僕を見ないでくれ。僕も何も見たくないから。
泣いても喚いても、独りきり。涙が海を作り、そこに深く沈む。深い海を泳ぐ鯨。
ある日、水の上で何かが光った。
それが気になって、水面から顔を出すと、君がいたんだ。
水上敏志は、とても賢い、ともすれば賢しい男だった。知性の煌めく、その素養に惹かれる冷泉。
友達になりたい。そう思った。
彼のことを探ってみると、落語が好きなことが分かり、近付くチャンスだと考える。
「水上くん」
「ん?」
「僕も、落語好きなんだ」
「そうなんや。好きな演目は?」
「死神が一番好き。あとは、粗忽長屋とか松曳きとか」
「ええな」
それから、ふたりは仲良くなっていき、冷泉は水上のことを親友だと思うようになった。
水上は、冷泉の過去や前髪で隠した秘密を探ろうとはしなかったから。彼の隣は、居心地がよかった。
「冷泉」
「なに?」
「将棋、付き合うてくれへん?」
「いいよ」
生駒隊の隊室で、将棋盤を挟んで向かい合う。
「飛車、角、金、銀抜こか?」
「いや、最初は全力でお願いする」
「ほな、始めるか」
結果は、水上の圧勝。奨励会にいたのだから、当然と言えば当然か。
「飛車、角、金、銀、桂馬、香車抜きで」
「ええで」
冷泉は、多少善戦したが、結局負けた。
「流石だなぁ」
「昔取った杵柄やな」
「潜水なら負けないんだけど」
「なんぼ行く?」
「25メートル」
「負けやわ」
お互いに、薄く笑う。
「あとは、学校の成績でも競う?」
「別にええけど」
「せっかくだから、何か賭けようか?」
「そうやなぁ。なら、ひとつ願いを叶える、で。出来る範囲でな」
「オーケー。乗った」
勝ったら、なにを願おうか? これからも仲良くしてね、くらいしか思い付かない。
「水上は、お願い決まってるの?」
「ああ、決まっとるで」
「そうなんだ」
冷泉は、勉強の成績なら、勝率は五分だと考えている。
どちらが勝っても、僕は嬉しい。
なにをお願いされるのか? なにをお願いしたいのか?
今は、まだ分からないけれど、もう孤独ではないから、この先を楽しみにしていよう。
冷泉冬樹は、くじら座である。だから鯨が好きだし、水泳が好きな自分を鯨に例えた。
昔、冷めた瞳だと言われたことがある。感情が顔に出ないだけだったのに、感情がないと思われた。
「冬樹くんは、私のこと好きじゃないんだね」
恋人は、冷泉の元を去る。それを追いかける勇気があれば、まだ恋は壊れなかったのだろうか?
そして彼は、前髪で目を隠した。
もういいよ。誰も僕を見ないでくれ。僕も何も見たくないから。
泣いても喚いても、独りきり。涙が海を作り、そこに深く沈む。深い海を泳ぐ鯨。
ある日、水の上で何かが光った。
それが気になって、水面から顔を出すと、君がいたんだ。
水上敏志は、とても賢い、ともすれば賢しい男だった。知性の煌めく、その素養に惹かれる冷泉。
友達になりたい。そう思った。
彼のことを探ってみると、落語が好きなことが分かり、近付くチャンスだと考える。
「水上くん」
「ん?」
「僕も、落語好きなんだ」
「そうなんや。好きな演目は?」
「死神が一番好き。あとは、粗忽長屋とか松曳きとか」
「ええな」
それから、ふたりは仲良くなっていき、冷泉は水上のことを親友だと思うようになった。
水上は、冷泉の過去や前髪で隠した秘密を探ろうとはしなかったから。彼の隣は、居心地がよかった。
「冷泉」
「なに?」
「将棋、付き合うてくれへん?」
「いいよ」
生駒隊の隊室で、将棋盤を挟んで向かい合う。
「飛車、角、金、銀抜こか?」
「いや、最初は全力でお願いする」
「ほな、始めるか」
結果は、水上の圧勝。奨励会にいたのだから、当然と言えば当然か。
「飛車、角、金、銀、桂馬、香車抜きで」
「ええで」
冷泉は、多少善戦したが、結局負けた。
「流石だなぁ」
「昔取った杵柄やな」
「潜水なら負けないんだけど」
「なんぼ行く?」
「25メートル」
「負けやわ」
お互いに、薄く笑う。
「あとは、学校の成績でも競う?」
「別にええけど」
「せっかくだから、何か賭けようか?」
「そうやなぁ。なら、ひとつ願いを叶える、で。出来る範囲でな」
「オーケー。乗った」
勝ったら、なにを願おうか? これからも仲良くしてね、くらいしか思い付かない。
「水上は、お願い決まってるの?」
「ああ、決まっとるで」
「そうなんだ」
冷泉は、勉強の成績なら、勝率は五分だと考えている。
どちらが勝っても、僕は嬉しい。
なにをお願いされるのか? なにをお願いしたいのか?
今は、まだ分からないけれど、もう孤独ではないから、この先を楽しみにしていよう。