A級9位!秋津隊
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初めて彼を見た時、前髪というか髪長っと思った。
冷泉冬樹は、前髪で完全に両目が隠れており、長い髪を低い位置でひとつに結んでいる。
水上敏志は、そんな彼のクラスメイトだ。そして、今では仲が良い。ふたりとも、落語が好きだからである。
冷泉の好きな演目は、「死神」だそうだ。丸々暗記しているらしい。
昼休みに、ふたりは一緒に昼食を摂る。
「冷泉」
「なに?」
「死神、演って見せてや」
「ふたりきりの時なら、いいよ」
冷泉が、扇子を持ち歩いていることは、知っている。だが、“演れる”ということは初めて知った。
「死神以外も演れるん?」
「出来ないよ」
「へぇ」
冷泉は、私服がいつも黒い。ともすれば、彼が“死神”みたいに見える。そういうミステリアスさがあった。
両目を隠している理由。髪を伸ばしている理由。黒い服しか着ない理由。水上は、冷泉に対して、知らないことだらけだ。
訊けば教えてくれるのだろうか?
しかし、なんとなく知らないままでもいい気がしている。
「ここで、問題です」
「急やな」
「秋津隊のメンバーの共通点は」
「名前に四季が入っとる」
「ですが、もうひとつの共通点は?」
秋津豊久、澪川四季、夏海恭一、春日井香介、冷泉冬樹。
「みんな、水関係の苗字やな」
「正解。これは、偶然らしいけどね」
冷泉は、微笑む。
「水が好きなんだ。泳ぐの好きだから」
「せやんな」
「だからね、“水上”も好きだよ」
「そりゃあ、ありがとさん」
屈託のない好意が、少しむず痒い。
ミステリアスな癖に面倒見がいい、この友人のことを、水上は気に入っている。面白いから。
◆◆◆
冷泉冬樹にとって、水上敏志は親友である。
でも、水上にとって、僕は特別じゃないかもしれない。
そう思うこともあるが、別に構わなかった。
冷泉は、自分からの好意に見返りを求めない性質なのである。
好きな人の幸せが、自分の幸せ。そんな、悟ったような価値観の男。
「ほれ、これを見てみな」
「ありゃ、随分蝋燭がたくさんあるね。何ですこりゃ」
「これは全部、人の寿命だ」
冷泉のひとり芝居は、大層上手かった。水上は、ふたりきりの秋津隊隊室で、それを見ている。
「おめぇの寿命だよ」
「だ、だってこれ、今にも消えそうじゃないか」
「消えそうだな。消えた途端に命はない。もうじき死ぬよ」
死神は順調に進んでいく。
「ほら、早くしな。早くしないと消えるよ。フフ、フフフフフ……ほら早く。もうすぐ消えるよ、ヒヒヒ、消えるよ、消える、消えるよ、ヒヒヒヒ………」
「うるせえ! つけ! つけ! つけったらつけよ、こん畜生!」
「消える、消える。死ぬよ、死ぬよ。ほらもう消えるよ。ヒヒ、ヒヒヒ……」
「あぁ、消えちまう! 消えちまう! あぁぁ……」
「ほら、消えた」
ぱたり、と冷泉が力なく倒れ、死神を演じ切った。
水上は、拍手を贈る。
「見事なもんやなぁ」
「ありがとう。たまに、ひとりで演ってるんだ」
「そうなんや」
「水上は演らないの?」
「うーん。俺は、別にええかな」
「たくさん覚えてるのに?」
「まあ、機会があったらっちゅうことで」
「楽しみにしとく」
その後、一緒に落語を見に行く約束をした。
謎多きふたり組だと言われていることを、冷泉と水上は知らない。
冷泉冬樹は、前髪で完全に両目が隠れており、長い髪を低い位置でひとつに結んでいる。
水上敏志は、そんな彼のクラスメイトだ。そして、今では仲が良い。ふたりとも、落語が好きだからである。
冷泉の好きな演目は、「死神」だそうだ。丸々暗記しているらしい。
昼休みに、ふたりは一緒に昼食を摂る。
「冷泉」
「なに?」
「死神、演って見せてや」
「ふたりきりの時なら、いいよ」
冷泉が、扇子を持ち歩いていることは、知っている。だが、“演れる”ということは初めて知った。
「死神以外も演れるん?」
「出来ないよ」
「へぇ」
冷泉は、私服がいつも黒い。ともすれば、彼が“死神”みたいに見える。そういうミステリアスさがあった。
両目を隠している理由。髪を伸ばしている理由。黒い服しか着ない理由。水上は、冷泉に対して、知らないことだらけだ。
訊けば教えてくれるのだろうか?
しかし、なんとなく知らないままでもいい気がしている。
「ここで、問題です」
「急やな」
「秋津隊のメンバーの共通点は」
「名前に四季が入っとる」
「ですが、もうひとつの共通点は?」
秋津豊久、澪川四季、夏海恭一、春日井香介、冷泉冬樹。
「みんな、水関係の苗字やな」
「正解。これは、偶然らしいけどね」
冷泉は、微笑む。
「水が好きなんだ。泳ぐの好きだから」
「せやんな」
「だからね、“水上”も好きだよ」
「そりゃあ、ありがとさん」
屈託のない好意が、少しむず痒い。
ミステリアスな癖に面倒見がいい、この友人のことを、水上は気に入っている。面白いから。
◆◆◆
冷泉冬樹にとって、水上敏志は親友である。
でも、水上にとって、僕は特別じゃないかもしれない。
そう思うこともあるが、別に構わなかった。
冷泉は、自分からの好意に見返りを求めない性質なのである。
好きな人の幸せが、自分の幸せ。そんな、悟ったような価値観の男。
「ほれ、これを見てみな」
「ありゃ、随分蝋燭がたくさんあるね。何ですこりゃ」
「これは全部、人の寿命だ」
冷泉のひとり芝居は、大層上手かった。水上は、ふたりきりの秋津隊隊室で、それを見ている。
「おめぇの寿命だよ」
「だ、だってこれ、今にも消えそうじゃないか」
「消えそうだな。消えた途端に命はない。もうじき死ぬよ」
死神は順調に進んでいく。
「ほら、早くしな。早くしないと消えるよ。フフ、フフフフフ……ほら早く。もうすぐ消えるよ、ヒヒヒ、消えるよ、消える、消えるよ、ヒヒヒヒ………」
「うるせえ! つけ! つけ! つけったらつけよ、こん畜生!」
「消える、消える。死ぬよ、死ぬよ。ほらもう消えるよ。ヒヒ、ヒヒヒ……」
「あぁ、消えちまう! 消えちまう! あぁぁ……」
「ほら、消えた」
ぱたり、と冷泉が力なく倒れ、死神を演じ切った。
水上は、拍手を贈る。
「見事なもんやなぁ」
「ありがとう。たまに、ひとりで演ってるんだ」
「そうなんや」
「水上は演らないの?」
「うーん。俺は、別にええかな」
「たくさん覚えてるのに?」
「まあ、機会があったらっちゅうことで」
「楽しみにしとく」
その後、一緒に落語を見に行く約束をした。
謎多きふたり組だと言われていることを、冷泉と水上は知らない。