A級9位!秋津隊
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那須玲さんのことが好きだけど、彼女はめちゃくちゃモテるので、諦めた。お嬢様学校に通ってるし。
だから、奈良坂透に狙いを変えた。
顔はコイツもイイし、同じ学校だし。
なにより、すでに結構仲が良い。
「奈良坂~」
「なんだ? 春日井」
「好きだ。付き合おう」
「え…………?」
奈良坂は、大層驚いた顔をして、春日井の顔を窺う。それから、周りのクラスメイトを。幸いにも、昼休みの雑踏は、彼らの会話を消していた。
「春日井、俺のこと…………」
「好きだよ!」
ただし、2番目にである!
「そう、なのか…………でも、どうして?」
「顔から性格から血の一滴に至るまで、全部が好きだよ」
春日井は、笑顔で悪魔みたいなことを言う。思い切り那須玲のことを意識した台詞なのだが。それを、とてもロマンティックな告白だと勘違いしてしまったのが、奈良坂透の運の尽き。
ふたりは、交際を始めた。
◆◆◆
「奈良坂、合同訓練行こうぜ」
「あ、ああ」
付き合い始めてからというもの、奈良坂は春日井にリードされっぱなしである。
昨日、初めてキスしたのに、春日井は平然としてて凄いな。
奈良坂は、友人として春日井を見てきたが、新たな一面に、ときめきのようなものを感じている。
春日井の身長は、175㎝。決して小さくはない。しかし、可愛らしい顔立ちをしており、マスコット的な扱いをされることも多い。特に、彼の所属する秋津隊では、一番年少者なのもあり、可愛がられていた。
性質の悪いことに、春日井は「おれって可愛いんだな」と、可愛さに自覚的であり、しばしばそれを利用する。上目遣いで“お願い”すれば、大抵の要望は通ってしまう。
昨日は、奈良坂に、「ねぇ、キスしよ?」と澄んだ瞳で提案して、それを叶えてみせた。
この調子でいくと、いずれ抱かれるのでは? と奈良坂は考えている。
考え事を断ち切り、的を狙う。精密に中央を撃ち抜く。
春日井もまた、冷静に緻密な射撃をした。
奈良坂は、以前、春日井から聞いたサイドエフェクトについて思い出す。
“おれのサイドエフェクトは、感情制御。怒りも悲しみも恐怖も、全てコントロール出来るんだ。だから、狙撃の時は無心でやってるよ”
きっと、今は俺のことを好きな気持ちもないんだろうな。
そう思うと、少し寂しい。
でも、そういう人間を好きになってしまったのだから、仕方がない。
奈良坂は、再び射撃訓練に集中した。
◆◆◆
どれが本当の気持ちか、分かんなくなっちゃった。
おれの副作用は感情制御である。もっと正確に言うのなら、自分の感情の完全な制御だ。
おれの恋は、嘘っぱち。那須さんが美人だったから、なんとなく“好きになってみたかった”だけ。で、高嶺の花過ぎて飽きたから、奈良坂を“好きということにした”だけ。
おれの本当の気持ちって、なに?
そんなものないよ。産まれた時、おれは泣かない赤ん坊だったんだって。
殴りたいくらい怒ったことがあるよ。すぐ消したけど。
死にたいくらい悲しいことがあったよ。すぐ捨てたけど。
泣きたいくらい怖いことがあったよ。すぐ手放したけど。
今だって、“冷静でいる”ことを自分に命じているんだよ。
おれは、生まれつきの嘘つき。全てが、まやかし。
感情と引き金を引く指が切り離せることは、才能だって、荒船先輩に言われたけど、そんないいもんじゃないと思う。
春日井香介は、少し憂鬱になった。だから、その憂鬱を消す。
奈良坂のこと、好きだけど、やっぱりこれも嘘なのかなぁ?
◆◆◆
「奈良坂、おれ、きみのこと好きでいていいのかな……?」
「好きでいてくれると、嬉しい」
「そっかぁ。じゃあ、“好きでいる”ね。それで……奈良坂が、おれのこといらなくなったら、やめる…………」
「春日井」
「わっ!」
ぎゅっと抱き締められた。心臓が、どきどきする。
「……無理はしないでくれ」
「無理してないよぉ。無理をしないで生きてたら、嘘つきになっちゃった」
「恋愛ごっこがしたいのか?」
「今は、奈良坂のこと好きで、どきどきもしてて。でも、全部嘘かもしれなくて……」
春日井が、一筋の涙をこぼした。
「涙、止めた方がいい?」
「止めなくてもいい」
「制服、濡れちゃうよ……?」
「構わない」
優しい言葉に、救われる。春日井は、泣くのを止めない。悲しむのをやめない。
「……辛いのって嫌だね。でも、これがきっと、おれの真実なんだ」
ずっと泣き喚いている子供。いつも理性に抑えつけられてきた感情。
「感情が、ぐちゃぐちゃしてて、怖いよ……」
「大丈夫だ。俺がいる」
「うん…………」
混沌とした内面。整理するのをやめた心。
気持ち悪くて、汚くて、おぞましい。
「おれは、きみのことを好きでいたいよ」
「春日井…………」
ただ、静かに抱き締めてくれる腕が、愛しかった。
だから、奈良坂透に狙いを変えた。
顔はコイツもイイし、同じ学校だし。
なにより、すでに結構仲が良い。
「奈良坂~」
「なんだ? 春日井」
「好きだ。付き合おう」
「え…………?」
奈良坂は、大層驚いた顔をして、春日井の顔を窺う。それから、周りのクラスメイトを。幸いにも、昼休みの雑踏は、彼らの会話を消していた。
「春日井、俺のこと…………」
「好きだよ!」
ただし、2番目にである!
「そう、なのか…………でも、どうして?」
「顔から性格から血の一滴に至るまで、全部が好きだよ」
春日井は、笑顔で悪魔みたいなことを言う。思い切り那須玲のことを意識した台詞なのだが。それを、とてもロマンティックな告白だと勘違いしてしまったのが、奈良坂透の運の尽き。
ふたりは、交際を始めた。
◆◆◆
「奈良坂、合同訓練行こうぜ」
「あ、ああ」
付き合い始めてからというもの、奈良坂は春日井にリードされっぱなしである。
昨日、初めてキスしたのに、春日井は平然としてて凄いな。
奈良坂は、友人として春日井を見てきたが、新たな一面に、ときめきのようなものを感じている。
春日井の身長は、175㎝。決して小さくはない。しかし、可愛らしい顔立ちをしており、マスコット的な扱いをされることも多い。特に、彼の所属する秋津隊では、一番年少者なのもあり、可愛がられていた。
性質の悪いことに、春日井は「おれって可愛いんだな」と、可愛さに自覚的であり、しばしばそれを利用する。上目遣いで“お願い”すれば、大抵の要望は通ってしまう。
昨日は、奈良坂に、「ねぇ、キスしよ?」と澄んだ瞳で提案して、それを叶えてみせた。
この調子でいくと、いずれ抱かれるのでは? と奈良坂は考えている。
考え事を断ち切り、的を狙う。精密に中央を撃ち抜く。
春日井もまた、冷静に緻密な射撃をした。
奈良坂は、以前、春日井から聞いたサイドエフェクトについて思い出す。
“おれのサイドエフェクトは、感情制御。怒りも悲しみも恐怖も、全てコントロール出来るんだ。だから、狙撃の時は無心でやってるよ”
きっと、今は俺のことを好きな気持ちもないんだろうな。
そう思うと、少し寂しい。
でも、そういう人間を好きになってしまったのだから、仕方がない。
奈良坂は、再び射撃訓練に集中した。
◆◆◆
どれが本当の気持ちか、分かんなくなっちゃった。
おれの副作用は感情制御である。もっと正確に言うのなら、自分の感情の完全な制御だ。
おれの恋は、嘘っぱち。那須さんが美人だったから、なんとなく“好きになってみたかった”だけ。で、高嶺の花過ぎて飽きたから、奈良坂を“好きということにした”だけ。
おれの本当の気持ちって、なに?
そんなものないよ。産まれた時、おれは泣かない赤ん坊だったんだって。
殴りたいくらい怒ったことがあるよ。すぐ消したけど。
死にたいくらい悲しいことがあったよ。すぐ捨てたけど。
泣きたいくらい怖いことがあったよ。すぐ手放したけど。
今だって、“冷静でいる”ことを自分に命じているんだよ。
おれは、生まれつきの嘘つき。全てが、まやかし。
感情と引き金を引く指が切り離せることは、才能だって、荒船先輩に言われたけど、そんないいもんじゃないと思う。
春日井香介は、少し憂鬱になった。だから、その憂鬱を消す。
奈良坂のこと、好きだけど、やっぱりこれも嘘なのかなぁ?
◆◆◆
「奈良坂、おれ、きみのこと好きでいていいのかな……?」
「好きでいてくれると、嬉しい」
「そっかぁ。じゃあ、“好きでいる”ね。それで……奈良坂が、おれのこといらなくなったら、やめる…………」
「春日井」
「わっ!」
ぎゅっと抱き締められた。心臓が、どきどきする。
「……無理はしないでくれ」
「無理してないよぉ。無理をしないで生きてたら、嘘つきになっちゃった」
「恋愛ごっこがしたいのか?」
「今は、奈良坂のこと好きで、どきどきもしてて。でも、全部嘘かもしれなくて……」
春日井が、一筋の涙をこぼした。
「涙、止めた方がいい?」
「止めなくてもいい」
「制服、濡れちゃうよ……?」
「構わない」
優しい言葉に、救われる。春日井は、泣くのを止めない。悲しむのをやめない。
「……辛いのって嫌だね。でも、これがきっと、おれの真実なんだ」
ずっと泣き喚いている子供。いつも理性に抑えつけられてきた感情。
「感情が、ぐちゃぐちゃしてて、怖いよ……」
「大丈夫だ。俺がいる」
「うん…………」
混沌とした内面。整理するのをやめた心。
気持ち悪くて、汚くて、おぞましい。
「おれは、きみのことを好きでいたいよ」
「春日井…………」
ただ、静かに抱き締めてくれる腕が、愛しかった。