私という一頁の物語
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自分の見せたい面と、見せたくない面。
他者の見えている面と、見えていない面。
人間は多面的だから、私たちは、たまに軋轢を生む。
「迅さんの母親のこと、知ってますか?」
「知ってるよ」
おそらく、三輪くんは、迅くんの母親が近界民に殺されたことを指しているのだろう。
「それなのに、どうして近界民を恨まずにいられるんですか……?」
「恨んでないのかな?」
「え?」
「殺した近界民のこと、恨んでないかどうかは、私には分からないよ」
三輪くんは、口を引き結んだ。
「第二次近界民侵攻の時、俺は、迅さんの駒にされるのが嫌でした」
「うん」
「結局、あの人の予知通りになったみたいですけどね」
「嫌だった?」
「……分からないんです。人命は、助けたつもりです。それは、よかったと思います」
「立派だね」
私から視線を外し、彼は両手を握り締める。
「赦さなくちゃいけないと思いますか?」
「思わない」
私は、はっきりと口にした。
「赦さなくてはならない、とは思わない。赦したいのなら、応援するけど」
「そうですか。もう少し、自分で考えてみます」
「うん。無理はしないように」
「はい」
退室する三輪くんを見送る。
来客用のマグカップと皿を片付け、デスク前に座り、ココアを飲んだ。
実のところ、私は参っている。
「冬季うつかねぇ…………」
クッキーを一齧りして、溜め息をついた。
もちろん、それだけではない。連日の予約いっぱいのカウンセリング。寝ても覚めても、カウンセリングのことで頭がいっぱい。自身のケアもしなくてはならない。
私は、折れてはいけないから。
「俺は、大丈夫」と、呪文を唱える。
自分を騙せ。脳を騙せ。精神を騙せ。
そういえば。
あまりにも忙しくて、最近全く趣味が捗らないし、遊びにも行けないでいる。
遊びに行く約束、してたんだけどな。延期になってしまった。
かろうじて、ソシャゲとSNSだけは出来ているけど。インプット不足と時間不足で、小説が書けない。
それにしても、神様は無慈悲だ。私のクソみたいな親族はピンピンしてるのに、大切に想われていた人々は、“あの日”にいなくなってしまった。
この世界は、残酷なSF劇のよう。かつて、私は、SFみたいに世界が滅びることを望んでいた。それが罪? これが罰?
世界中に迷惑かけても、生き抜いてやるけどね。生き汚くて、結構。
だって、この世界は————————。
ノックの音がする。
「はい。どうぞ」
「失礼します」
次のクライアントが来た。
私は、カウンセラーという役をこなす。
もっと、システマチックになれたらいいのに。
他者の見えている面と、見えていない面。
人間は多面的だから、私たちは、たまに軋轢を生む。
「迅さんの母親のこと、知ってますか?」
「知ってるよ」
おそらく、三輪くんは、迅くんの母親が近界民に殺されたことを指しているのだろう。
「それなのに、どうして近界民を恨まずにいられるんですか……?」
「恨んでないのかな?」
「え?」
「殺した近界民のこと、恨んでないかどうかは、私には分からないよ」
三輪くんは、口を引き結んだ。
「第二次近界民侵攻の時、俺は、迅さんの駒にされるのが嫌でした」
「うん」
「結局、あの人の予知通りになったみたいですけどね」
「嫌だった?」
「……分からないんです。人命は、助けたつもりです。それは、よかったと思います」
「立派だね」
私から視線を外し、彼は両手を握り締める。
「赦さなくちゃいけないと思いますか?」
「思わない」
私は、はっきりと口にした。
「赦さなくてはならない、とは思わない。赦したいのなら、応援するけど」
「そうですか。もう少し、自分で考えてみます」
「うん。無理はしないように」
「はい」
退室する三輪くんを見送る。
来客用のマグカップと皿を片付け、デスク前に座り、ココアを飲んだ。
実のところ、私は参っている。
「冬季うつかねぇ…………」
クッキーを一齧りして、溜め息をついた。
もちろん、それだけではない。連日の予約いっぱいのカウンセリング。寝ても覚めても、カウンセリングのことで頭がいっぱい。自身のケアもしなくてはならない。
私は、折れてはいけないから。
「俺は、大丈夫」と、呪文を唱える。
自分を騙せ。脳を騙せ。精神を騙せ。
そういえば。
あまりにも忙しくて、最近全く趣味が捗らないし、遊びにも行けないでいる。
遊びに行く約束、してたんだけどな。延期になってしまった。
かろうじて、ソシャゲとSNSだけは出来ているけど。インプット不足と時間不足で、小説が書けない。
それにしても、神様は無慈悲だ。私のクソみたいな親族はピンピンしてるのに、大切に想われていた人々は、“あの日”にいなくなってしまった。
この世界は、残酷なSF劇のよう。かつて、私は、SFみたいに世界が滅びることを望んでいた。それが罪? これが罰?
世界中に迷惑かけても、生き抜いてやるけどね。生き汚くて、結構。
だって、この世界は————————。
ノックの音がする。
「はい。どうぞ」
「失礼します」
次のクライアントが来た。
私は、カウンセラーという役をこなす。
もっと、システマチックになれたらいいのに。