煙シリーズ
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雨が降り始めた。
大学の一角で、ミョウジナマエは立ち尽くす。
彼は、雨が嫌いである。頭が痛くなるから。それに、“あの日”も雨が降っていた。
「ナマエ、なにしてんだよ?」
「洸太郎…………」
諏訪洸太郎が、自分の傘の中にミョウジを入れてやる。
「あの日も、こんな雨が降ってたなって考えてた」
両親が帰って来なくなった日。日常が壊された日。
「大丈夫か?」
ミョウジの手を取り、諏訪は尋ねた。
「……あんまり大丈夫じゃない」
ミョウジは、雨が止んだら、ふたりが帰って来ると、自分に言い聞かせていたけれど、そうはならなかったから。ミョウジ家からは、傘が二本なくなったまま。欠けてしまった日々。
「止まない雨はないって言うけど、止むまでオレが無事とは限らないんだよな」
「俺が、おまえに傘を貸す。いつでも」
「ありがとう。いつも。ほんとに感謝してる」
ミョウジは、ようやく諏訪の目を見て話した。弱々しく笑いながら。
「無理すんなよ?」
「うん」
外の世界は、なんて眩しくて容赦がないのだろうと思っていた。だから、暗闇に逃げ込んだ。しかし、そこでもミョウジは途方に暮れる。一体どこへ進めばいい? そんな時に、諏訪が現れた。月明かりみたいに優しい人。雨の日に、傘を差してくれる人。大好きな親友で、仲間で、恋人。
もしも、おまえを失ったら、オレは立ってられない。
ミョウジは、そう思った。
「ナマエ、行くぞ」
「ああ」
ふたりで、講義へ向かう。“いつも通り”に、とても安心する。
新しい日常は、ふたりの日々は、過ぎていく。
帰る頃には、雨は止んでいた。
「ナマエ、おまえんとこ寄っていいか?」
「いいよ」
気を遣われている。出来るだけ一緒にいようとしてくれている。それが、本当に嬉しい。
ふたりは、ミョウジ宅へと歩みを進めた。
「あ、虹!」
「お、すげーな」
くっきりとした綺麗な虹が、空にかかっている。
おまえが隣にいると、美しいものを美しいとだけ思えるよ。自分を惨めに思わなくて済むよ。
オレの想いは、美しくないけど、いつかは綺麗になれるかな? その時は、「愛してる」って言えるかな。
父さんと母さんに、自分を誇れるようになりたい。ふたりに、おまえのことを話したい。
きっと、両親は喜んでくれる。
ミョウジは、父と母のことを想った。
雨が降ると、思い出す。“あの日”のことを。そして、これからは、傘を持つおまえのことも。
どうしようもない喪失を抱えながらも、ミョウジナマエは懸命に生きていく。隣にいる大切な人と一緒に。
大学の一角で、ミョウジナマエは立ち尽くす。
彼は、雨が嫌いである。頭が痛くなるから。それに、“あの日”も雨が降っていた。
「ナマエ、なにしてんだよ?」
「洸太郎…………」
諏訪洸太郎が、自分の傘の中にミョウジを入れてやる。
「あの日も、こんな雨が降ってたなって考えてた」
両親が帰って来なくなった日。日常が壊された日。
「大丈夫か?」
ミョウジの手を取り、諏訪は尋ねた。
「……あんまり大丈夫じゃない」
ミョウジは、雨が止んだら、ふたりが帰って来ると、自分に言い聞かせていたけれど、そうはならなかったから。ミョウジ家からは、傘が二本なくなったまま。欠けてしまった日々。
「止まない雨はないって言うけど、止むまでオレが無事とは限らないんだよな」
「俺が、おまえに傘を貸す。いつでも」
「ありがとう。いつも。ほんとに感謝してる」
ミョウジは、ようやく諏訪の目を見て話した。弱々しく笑いながら。
「無理すんなよ?」
「うん」
外の世界は、なんて眩しくて容赦がないのだろうと思っていた。だから、暗闇に逃げ込んだ。しかし、そこでもミョウジは途方に暮れる。一体どこへ進めばいい? そんな時に、諏訪が現れた。月明かりみたいに優しい人。雨の日に、傘を差してくれる人。大好きな親友で、仲間で、恋人。
もしも、おまえを失ったら、オレは立ってられない。
ミョウジは、そう思った。
「ナマエ、行くぞ」
「ああ」
ふたりで、講義へ向かう。“いつも通り”に、とても安心する。
新しい日常は、ふたりの日々は、過ぎていく。
帰る頃には、雨は止んでいた。
「ナマエ、おまえんとこ寄っていいか?」
「いいよ」
気を遣われている。出来るだけ一緒にいようとしてくれている。それが、本当に嬉しい。
ふたりは、ミョウジ宅へと歩みを進めた。
「あ、虹!」
「お、すげーな」
くっきりとした綺麗な虹が、空にかかっている。
おまえが隣にいると、美しいものを美しいとだけ思えるよ。自分を惨めに思わなくて済むよ。
オレの想いは、美しくないけど、いつかは綺麗になれるかな? その時は、「愛してる」って言えるかな。
父さんと母さんに、自分を誇れるようになりたい。ふたりに、おまえのことを話したい。
きっと、両親は喜んでくれる。
ミョウジは、父と母のことを想った。
雨が降ると、思い出す。“あの日”のことを。そして、これからは、傘を持つおまえのことも。
どうしようもない喪失を抱えながらも、ミョウジナマエは懸命に生きていく。隣にいる大切な人と一緒に。