煙シリーズ
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毎日が、夢のようだった。
好きな人に愛されるって、幸せなことだよ。
ミョウジナマエは、回顧する。ほんのりバニラの香りのする煙草を吸いながら。
でも、彼は、その日々をこれから手放すことになる。
記憶封印措置。ボーダーに関する記憶をなくしたら、おまえとの思い出だって消えてしまう。
おまえは、優しい奴だから、きっと傷付く。おまえは、強い奴だから、きっと大丈夫。
相反する考え。久し振りの思考の迷宮。ミョウジは、ベランダで朝の光を睨みながら、深く沈み込む。
昨日、愛してると嘘をついた。これは、最後の呪い。最後まで、薄暗い想いを押し付けた。
もう、さよならも言えない。
「本当に、好きだったよ…………」
◆◆◆
今までの日々の全てが、白昼夢だったかのように消え失せた。
諏訪洸太郎は、回顧する。自宅で煙草を燻らせながら。
恋人のミョウジナマエは、三門市を去ってしまった。記憶を封印され、思い出をなくし、いなくなったのだ。
大切な者が欠けるとは、こういうことか。ほんの少し、ミョウジの抱いていた喪失を理解出来た気がする。
結局、俺におまえは救えなかった。
諏訪の存在は、ミョウジにとっては、月明かりだったのだが、彼は知らない。ミョウジが歩いて来れたのは、諏訪のおかげだということを。
冬の星空を眺めて、ミョウジを思い出す。闇の中でも、懸命に前に進んでいた男。
「本当に、愛してたよ…………」
◆◆◆
ひとり欠けたメンツで麻雀をしていると、太刀川慶に話を振られた。
「ミョウジさんのこと、辛くないですか?」
「辛い……かどうかも、よく分かんねーな…………」
そう言う太刀川も、ミョウジの友人だったのだが。
「それ、結構重傷ですよ。ミョウジさん、前に言ってました。辛過ぎると、防御本能で感情が鈍るって」
「おまえは、平気なのか?」
「寂しいですね。ミョウジさんって、賑やかな人だったし。最近は、喋り過ぎってこともなくて、普通に楽しい人だったから」
よく分かってんじゃねーか。
諏訪は、牌を切りながら思った。
「いつも、なんやかんやで世話焼いてくれてたなぁ」
ミョウジは、嫌がりながらも、最後の最後には、いつも太刀川のレポートの面倒を見ていたから。
「ミョウジさん、ポケットから餅を出してきたりするんですよ。面白過ぎでしょ。戦闘は、ああだし」
思い出話を聞いていると、ミョウジナマエが過去のものになっていくようで、気分が沈む。しかし、諏訪には、どうしようもない。
「ナマエは、元気になった。きっと、それでいいんだろう」
ただ、隣にいてほしかった。でも、この場所にいるのが苦しいのも、知っていた。
その苦しさを取り除くのが、自分の役目だと思っていたけれど、違ったのかもしれない。
ミョウジナマエの夢のような日々は、終わり。
諏訪洸太郎の日常は、白昼夢のように終わり。
大切なものを失った世界には、たったひとつだけ、色が足りない。
好きな人に愛されるって、幸せなことだよ。
ミョウジナマエは、回顧する。ほんのりバニラの香りのする煙草を吸いながら。
でも、彼は、その日々をこれから手放すことになる。
記憶封印措置。ボーダーに関する記憶をなくしたら、おまえとの思い出だって消えてしまう。
おまえは、優しい奴だから、きっと傷付く。おまえは、強い奴だから、きっと大丈夫。
相反する考え。久し振りの思考の迷宮。ミョウジは、ベランダで朝の光を睨みながら、深く沈み込む。
昨日、愛してると嘘をついた。これは、最後の呪い。最後まで、薄暗い想いを押し付けた。
もう、さよならも言えない。
「本当に、好きだったよ…………」
◆◆◆
今までの日々の全てが、白昼夢だったかのように消え失せた。
諏訪洸太郎は、回顧する。自宅で煙草を燻らせながら。
恋人のミョウジナマエは、三門市を去ってしまった。記憶を封印され、思い出をなくし、いなくなったのだ。
大切な者が欠けるとは、こういうことか。ほんの少し、ミョウジの抱いていた喪失を理解出来た気がする。
結局、俺におまえは救えなかった。
諏訪の存在は、ミョウジにとっては、月明かりだったのだが、彼は知らない。ミョウジが歩いて来れたのは、諏訪のおかげだということを。
冬の星空を眺めて、ミョウジを思い出す。闇の中でも、懸命に前に進んでいた男。
「本当に、愛してたよ…………」
◆◆◆
ひとり欠けたメンツで麻雀をしていると、太刀川慶に話を振られた。
「ミョウジさんのこと、辛くないですか?」
「辛い……かどうかも、よく分かんねーな…………」
そう言う太刀川も、ミョウジの友人だったのだが。
「それ、結構重傷ですよ。ミョウジさん、前に言ってました。辛過ぎると、防御本能で感情が鈍るって」
「おまえは、平気なのか?」
「寂しいですね。ミョウジさんって、賑やかな人だったし。最近は、喋り過ぎってこともなくて、普通に楽しい人だったから」
よく分かってんじゃねーか。
諏訪は、牌を切りながら思った。
「いつも、なんやかんやで世話焼いてくれてたなぁ」
ミョウジは、嫌がりながらも、最後の最後には、いつも太刀川のレポートの面倒を見ていたから。
「ミョウジさん、ポケットから餅を出してきたりするんですよ。面白過ぎでしょ。戦闘は、ああだし」
思い出話を聞いていると、ミョウジナマエが過去のものになっていくようで、気分が沈む。しかし、諏訪には、どうしようもない。
「ナマエは、元気になった。きっと、それでいいんだろう」
ただ、隣にいてほしかった。でも、この場所にいるのが苦しいのも、知っていた。
その苦しさを取り除くのが、自分の役目だと思っていたけれど、違ったのかもしれない。
ミョウジナマエの夢のような日々は、終わり。
諏訪洸太郎の日常は、白昼夢のように終わり。
大切なものを失った世界には、たったひとつだけ、色が足りない。