一頁のおまけ
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クライアント:諏訪洸太郎
「どんな人だったかって? そりゃあ、善い人でしたよ。俺は、ガキの頃から世話になってて。それに……推理小説を貸し借りしてて…………」
彼は、片手で目元を隠し、「返せなくなっちまったじゃねーか」と言った。
返そうとしたら、現海さんの弟に「形見として、持っててあげてほしい」と言われたのだとか。
「時間を戻せたら、あの人を助けに走るのに」
彼は、ぽつりと呟いた。
私は、これから、どれだけ傷付いた者たちを見ることになるのだろう。
クライアント:迅悠一
彼は、未来が視えるらしい。
「忠告したんです。おとなしくしていてほしいって」
彼女が死ぬところが視えたから。
「でも、あの人は、人手が足りないからって、通信室へ行ったんですよ。そういう人でした」
いつも、何かもっと出来ることはないかと考えている人だったのだと、彼は語る。
「……疲れました。今日は帰ります」
クライアント:小南桐絵
「死ぬはずないじゃない。だって、あの人は、強かった……」
唇を噛み締めて、泣くのを我慢しているようだった。
「だって、弱い面があるって知ってたはずよ。そういう人は、強い人なんだから……」
ここに来ると、彼女が出迎えてくれる気がすると言う。
「でも、もう会えない…………」
クライアント:佐鳥賢
「おれのこと、たくさん褒めてくれました。頑張ってるねって。偉いねって」
ひとり分の空席が、心の中にある。
「不満があるワケじゃないんですけど、あの人なら、なんて言ってたかなって考えてしまうんです……」
カウンセリングの終わった彼を見送り、廊下に出た。
自販機で、コーヒーを買う。缶コーヒーを飲んでいると、二宮匡貴くんが来た。
「こんにちは」
「こんにちは」
「どうかした?」
「自分の代わりはいるだろうって、本当だったのかと」
私は、彼女と同じ重さにはなれない。
「おっと」
端末の着信音が鳴っている。
「呼び出しです。失礼」
城戸司令の元へ急ぐ。
「…………」
司令は、なかなか口を開かない。
「現海は、嘘をつけない人間だったが、約束を破られてしまった」
だから、代わりをしろと? そのためにいるのは、そうですが。
クライアント:荒船哲次
「もう話せないんですね。映画のこと」
物語を愛する人だった。
「あの人に、借りて見た映画の感想を言おうと思ってたのに」
カウンセリングが終わり、昼休憩。
食堂で定食を食べていると、ふいに話しかけられた。
「こんにちは」
「こんにちは。えーと」
「真木理佐です」
「マキさん」
彼女は、私の昼食を一瞥し、「お邪魔しました」と言って去る。
クライアント:月見蓮
「辛い、と思います。ただ、あまり実感がなくて」
俯き、表情を陰らせた。
「少し、似ていたんです、私たち。放っておけないんです、他人を」
見えているものが、現海さんの虚なのか実なのか、私には分からない。
休憩時間に、部屋の外を歩く。そうしていると、元気に話しかけられた。
「よう!」
「こんにちは」
「もう、ここに慣れたか?」
「まあ、多少は」
「なんかあったら、ヒカリさんに任せとけ!」
「ありがとうございます」
仁礼さん、良い子だ。
「もう、お菓子もらえないな……」と、言い残して、彼女は去った。
私は、廊下を歩き続ける。
「こんにちは」
「こんにちは、犬飼くん」
「どうですか? あの人の後任になってみて」
「仕事量が多い、ですね」
「はは。あの人、偽者の癖に無理してたから、後釜のことなんて、考えてないんですよ」
バカみたい、と彼は呟いた。
クライアント:生駒達人
「あの人、くだらないって言わへんのですよ」
モテたいとか、好かれたいとか、相談していたらしい。
「いつも、真剣に話してくれて……」
もっと聞きたいことがあったと、彼は言った。
現海さんのことを、私は知らないが、段々分かってきたことがある。彼女は、カウンセラーという役者だったのではないだろうか?
休憩時間に、東くんに話しかけられた。
「今度、渓流釣りに行きませんか?」
「遠慮しておきます。仕事が山積みでして」
「……そうですか。大変ですね」
クライアント:風間蒼也
「どんなプロセスを踏めば、あの人の死を乗り越えられますか?」
自分のためだけではなさそうな質問だ。
私は、誠心誠意、話をする。
「分かりました」
ああ、そうか。兵士を相手にするとは、こういうことか。
クライアント:辻新之助
「ない、ですね。ぬいぐるみ……」
デスクの上を見て、彼は辛そうにした。
「モササウルスは、頂点に君臨していたはずなんですけどね……」
私は、何を言われているのか分からない。
その後。彼は、ぽつぽつと悩みを話した。
カウンセリングの後に、外へ出ると、影浦くんに舌打ちされる。
クライアント:半崎義人
「ここ、初めて来ました」
この場所には、もう彼女の影はないかもしれない。
「もっと早く来ればよかった」
悔恨。「ダルいわ」と、彼は言った。
終業時間。偶然、冬島さんと会う。
「麻雀、興味ある?」
「いや、役が覚えられないです」
「ポーカーは?」
「それも出来ないですね」
「そう」
それじゃ、と別れた。
帰りに、晩ごはんの食材を買いに、スーパーへ寄る。
「こんばんは」
「あ、こんばんは……」
「烏丸です」
「烏丸くん」
バイト中らしい。
「豚肉が安いですよ」
「そうですか。じゃあ、しょうが焼きでも作りますかね」
買い出しを終えて、自宅へ帰る。
根付さんから、コラムを書いてほしいと打診がきていた。丁重にお断りする。
クライアント:人見摩子
「幽霊がいたらいいなって思うんです」
窓の外の雨を見つめながら、彼女は言った。
「ゾンビでもいいです……」
午前のカウンセリングが終わり、昼食を摂ってから。運動施設を見に行く。
あっという間に、柿崎くんと歌川くんと熊谷さんに囲まれた。
「運動しに?」
「バスケします?」
「まずは、軽く走ります?」
「いや、見学しに来ただけで……」
「困らせてるぞ。3人とも」
穂刈くんが割って入り、私は運動しなくて済んだ。
クライアント:三輪秀次
「あの人が、夢に出てくるんです」
ろくに眠れないのだと言う。無理もない。
「姉も、あの人も、どうして……」
どうしてかなんて、誰にも分からないことだ。
昼休憩。南沢くんが隣に来た。
「こんにちは」
「こんにちは」
「いつも忙しそうですね」
「まあ、そうですね。前任者が……いや、なんでもないです……」
軽く世間話をしてから、食堂へ向かう。
午後も、カウンセリングをした。精一杯努めた。
帰りに、鈴鳴の隊員たちと出くわす。
「お疲れ様です」
「お疲れ様。えっと、来馬くん」
「はい。名前、覚えてくださったんですね」
「うん。わりと必死です」
パソコンと睨めっこして、覚えた。
「それじゃあ、さよなら」
私は、帰路につく。
クライアント:那須玲
「置いてかれるって、こういうことなんですね」
自分より、余程生きそうだったのに、と彼女は語る。
「置いてくのも、置いてかれるのも、怖いです」
終業時間。
自炊する気分ではなかったのもあって、居酒屋へ寄る。
そこには、諏訪くんと風間くんと木崎くんと寺島くんがいた。
「こんばんは」
「こんばんは。酒飲みに?」
「はい、まあ」
正直、飲まないとやってられない。
クライアント:太刀川慶
「俺は、平気ですよ」
A級隊員のメンタルチェックは、義務である。
「ま、あの人なら、そうであってほしいでしょ」
軽い調子で言いのけた。
休憩時間に、対戦ブースを覗いてみる。
「こんにちは」
「あっ。こんにちは、空閑くん」
「暇潰し?」
「はい」
「半分ウソ」
「えっ?」
空閑くんは、そう言い残して行ってしまった。
「こんにちは」
「こんにちは、えと、村上くん」
「聴こえてしまったんですけど、暇潰しじゃないなら、何をしに?」
「戦ってるところを見た方がいいかと思いまして」
私は、正直に答える。
「なるほど」
納得してもらえたらしい。
クライアント:当真勇
「ずりーんだよ、あの人。結局、ほとんど何も見せてくんねーの」
後頭部で腕を組み、彼は言った。
「人間の癖に。こんなことになるなら、俺が……」
殺しておけばよかった。と、薄く笑みを浮かべて告げる。
「俺は、砂子さんのことを、ずっと覚えてんだろうな」
「どんな人だったかって? そりゃあ、善い人でしたよ。俺は、ガキの頃から世話になってて。それに……推理小説を貸し借りしてて…………」
彼は、片手で目元を隠し、「返せなくなっちまったじゃねーか」と言った。
返そうとしたら、現海さんの弟に「形見として、持っててあげてほしい」と言われたのだとか。
「時間を戻せたら、あの人を助けに走るのに」
彼は、ぽつりと呟いた。
私は、これから、どれだけ傷付いた者たちを見ることになるのだろう。
クライアント:迅悠一
彼は、未来が視えるらしい。
「忠告したんです。おとなしくしていてほしいって」
彼女が死ぬところが視えたから。
「でも、あの人は、人手が足りないからって、通信室へ行ったんですよ。そういう人でした」
いつも、何かもっと出来ることはないかと考えている人だったのだと、彼は語る。
「……疲れました。今日は帰ります」
クライアント:小南桐絵
「死ぬはずないじゃない。だって、あの人は、強かった……」
唇を噛み締めて、泣くのを我慢しているようだった。
「だって、弱い面があるって知ってたはずよ。そういう人は、強い人なんだから……」
ここに来ると、彼女が出迎えてくれる気がすると言う。
「でも、もう会えない…………」
クライアント:佐鳥賢
「おれのこと、たくさん褒めてくれました。頑張ってるねって。偉いねって」
ひとり分の空席が、心の中にある。
「不満があるワケじゃないんですけど、あの人なら、なんて言ってたかなって考えてしまうんです……」
カウンセリングの終わった彼を見送り、廊下に出た。
自販機で、コーヒーを買う。缶コーヒーを飲んでいると、二宮匡貴くんが来た。
「こんにちは」
「こんにちは」
「どうかした?」
「自分の代わりはいるだろうって、本当だったのかと」
私は、彼女と同じ重さにはなれない。
「おっと」
端末の着信音が鳴っている。
「呼び出しです。失礼」
城戸司令の元へ急ぐ。
「…………」
司令は、なかなか口を開かない。
「現海は、嘘をつけない人間だったが、約束を破られてしまった」
だから、代わりをしろと? そのためにいるのは、そうですが。
クライアント:荒船哲次
「もう話せないんですね。映画のこと」
物語を愛する人だった。
「あの人に、借りて見た映画の感想を言おうと思ってたのに」
カウンセリングが終わり、昼休憩。
食堂で定食を食べていると、ふいに話しかけられた。
「こんにちは」
「こんにちは。えーと」
「真木理佐です」
「マキさん」
彼女は、私の昼食を一瞥し、「お邪魔しました」と言って去る。
クライアント:月見蓮
「辛い、と思います。ただ、あまり実感がなくて」
俯き、表情を陰らせた。
「少し、似ていたんです、私たち。放っておけないんです、他人を」
見えているものが、現海さんの虚なのか実なのか、私には分からない。
休憩時間に、部屋の外を歩く。そうしていると、元気に話しかけられた。
「よう!」
「こんにちは」
「もう、ここに慣れたか?」
「まあ、多少は」
「なんかあったら、ヒカリさんに任せとけ!」
「ありがとうございます」
仁礼さん、良い子だ。
「もう、お菓子もらえないな……」と、言い残して、彼女は去った。
私は、廊下を歩き続ける。
「こんにちは」
「こんにちは、犬飼くん」
「どうですか? あの人の後任になってみて」
「仕事量が多い、ですね」
「はは。あの人、偽者の癖に無理してたから、後釜のことなんて、考えてないんですよ」
バカみたい、と彼は呟いた。
クライアント:生駒達人
「あの人、くだらないって言わへんのですよ」
モテたいとか、好かれたいとか、相談していたらしい。
「いつも、真剣に話してくれて……」
もっと聞きたいことがあったと、彼は言った。
現海さんのことを、私は知らないが、段々分かってきたことがある。彼女は、カウンセラーという役者だったのではないだろうか?
休憩時間に、東くんに話しかけられた。
「今度、渓流釣りに行きませんか?」
「遠慮しておきます。仕事が山積みでして」
「……そうですか。大変ですね」
クライアント:風間蒼也
「どんなプロセスを踏めば、あの人の死を乗り越えられますか?」
自分のためだけではなさそうな質問だ。
私は、誠心誠意、話をする。
「分かりました」
ああ、そうか。兵士を相手にするとは、こういうことか。
クライアント:辻新之助
「ない、ですね。ぬいぐるみ……」
デスクの上を見て、彼は辛そうにした。
「モササウルスは、頂点に君臨していたはずなんですけどね……」
私は、何を言われているのか分からない。
その後。彼は、ぽつぽつと悩みを話した。
カウンセリングの後に、外へ出ると、影浦くんに舌打ちされる。
クライアント:半崎義人
「ここ、初めて来ました」
この場所には、もう彼女の影はないかもしれない。
「もっと早く来ればよかった」
悔恨。「ダルいわ」と、彼は言った。
終業時間。偶然、冬島さんと会う。
「麻雀、興味ある?」
「いや、役が覚えられないです」
「ポーカーは?」
「それも出来ないですね」
「そう」
それじゃ、と別れた。
帰りに、晩ごはんの食材を買いに、スーパーへ寄る。
「こんばんは」
「あ、こんばんは……」
「烏丸です」
「烏丸くん」
バイト中らしい。
「豚肉が安いですよ」
「そうですか。じゃあ、しょうが焼きでも作りますかね」
買い出しを終えて、自宅へ帰る。
根付さんから、コラムを書いてほしいと打診がきていた。丁重にお断りする。
クライアント:人見摩子
「幽霊がいたらいいなって思うんです」
窓の外の雨を見つめながら、彼女は言った。
「ゾンビでもいいです……」
午前のカウンセリングが終わり、昼食を摂ってから。運動施設を見に行く。
あっという間に、柿崎くんと歌川くんと熊谷さんに囲まれた。
「運動しに?」
「バスケします?」
「まずは、軽く走ります?」
「いや、見学しに来ただけで……」
「困らせてるぞ。3人とも」
穂刈くんが割って入り、私は運動しなくて済んだ。
クライアント:三輪秀次
「あの人が、夢に出てくるんです」
ろくに眠れないのだと言う。無理もない。
「姉も、あの人も、どうして……」
どうしてかなんて、誰にも分からないことだ。
昼休憩。南沢くんが隣に来た。
「こんにちは」
「こんにちは」
「いつも忙しそうですね」
「まあ、そうですね。前任者が……いや、なんでもないです……」
軽く世間話をしてから、食堂へ向かう。
午後も、カウンセリングをした。精一杯努めた。
帰りに、鈴鳴の隊員たちと出くわす。
「お疲れ様です」
「お疲れ様。えっと、来馬くん」
「はい。名前、覚えてくださったんですね」
「うん。わりと必死です」
パソコンと睨めっこして、覚えた。
「それじゃあ、さよなら」
私は、帰路につく。
クライアント:那須玲
「置いてかれるって、こういうことなんですね」
自分より、余程生きそうだったのに、と彼女は語る。
「置いてくのも、置いてかれるのも、怖いです」
終業時間。
自炊する気分ではなかったのもあって、居酒屋へ寄る。
そこには、諏訪くんと風間くんと木崎くんと寺島くんがいた。
「こんばんは」
「こんばんは。酒飲みに?」
「はい、まあ」
正直、飲まないとやってられない。
クライアント:太刀川慶
「俺は、平気ですよ」
A級隊員のメンタルチェックは、義務である。
「ま、あの人なら、そうであってほしいでしょ」
軽い調子で言いのけた。
休憩時間に、対戦ブースを覗いてみる。
「こんにちは」
「あっ。こんにちは、空閑くん」
「暇潰し?」
「はい」
「半分ウソ」
「えっ?」
空閑くんは、そう言い残して行ってしまった。
「こんにちは」
「こんにちは、えと、村上くん」
「聴こえてしまったんですけど、暇潰しじゃないなら、何をしに?」
「戦ってるところを見た方がいいかと思いまして」
私は、正直に答える。
「なるほど」
納得してもらえたらしい。
クライアント:当真勇
「ずりーんだよ、あの人。結局、ほとんど何も見せてくんねーの」
後頭部で腕を組み、彼は言った。
「人間の癖に。こんなことになるなら、俺が……」
殺しておけばよかった。と、薄く笑みを浮かべて告げる。
「俺は、砂子さんのことを、ずっと覚えてんだろうな」