私という一頁の物語
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遠征組のメンタルチェックも、私の仕事である。今日は、太刀川慶くんが来た。
「話聞いてる?」
「聞いてまーす」
太刀川くんは、私が出したきなこ餅を呑み込み、気の抜けた返事をする。
「困ってることは?」
「ないでーす」
終始こんな感じなんだよな。まあ、君はそうそう“崩れない”人だけど。
「みんながみんな、君のようだったら仕事が減るなぁ」
「えっ。そんなことになったら大変ですよ」
「士気が?」
「組織というものが」
「そりゃあ、そうだね」
ボーダー隊員が、みんな戦闘大好きになったら嫌だなぁ。
「君は、兵士っていうか、戦士なんだよな」
「あーそれね」
テキトー言ってるな、太刀川くん。まあいい。
「では、何か質問は?」
「砂子さんって、休めてます?」
「週に2日は休んでるけど」
「うーん。そうじゃなくて、人の悩みとか聞き続けるの、しんどくない?」
「大丈夫だよ。プロだからね。共感はするけど、同調はしないんだ」
「本当に?」
「うん」
私は、城戸司令直属の部下だ。易々と折れていい柱ではないと自負している。たったひとりのカウンセラーだから。
「砂子さんって、ストレス解消に何するんです?」
「甘いもの食べる」
「今も食べてる」
「そうだよ。これがないと、始まらない」
マグカップの中の緑茶を飲んだ。
「お菓子もお茶も、必要経費さ」
「おかわり」
「ダメでーす。ひとり、ふたつまで」
「ちぇー」
唇を尖らせる太刀川くん。マグカップに手をつけた。
少しして、太刀川くんは、真剣な表情で、私に尋ねる。
「砂子さんの代わりっているんですか?」
「それは…………」
城戸さんは、代わりを見付けただろうか? 替えの効かない役職なんて、出来るだけない方がいい。
誰かは誰かの代わりにはなれないけど、私の代わりはいた方がいいに決まってる。
「そのうち増えるかもよ? カウンセラー」
「へー。でも、俺は砂子さんのカウンセリングがいいなー」
「なんで?」
「ちょうどいいから。深入りし過ぎず、浅いことは言わない」
「そういうものなんだよ、カウンセラーって」
「砂子さんっていうカウンセラーだろ?」
「褒めてる?」
「はい」
「そう。ありがとう」
私は、対話が好きで、人が好きで、人の心が分からない。だから、ちょうどいいんだよ。
「でも、砂子さんって自分が思ってるほどドライじゃないですよ」
「…………」
子供を戦わせている罪悪感。人間になりきれない自分への失望。誰も潰されてほしくないというエゴ。
「私がドライだろうと、ウェットだろうと、関係ない。やるべきことをやるだけだよ」
「そういうとこが、いいんだよな」
太刀川くんは、口元に笑みを浮かべた。
「話聞いてる?」
「聞いてまーす」
太刀川くんは、私が出したきなこ餅を呑み込み、気の抜けた返事をする。
「困ってることは?」
「ないでーす」
終始こんな感じなんだよな。まあ、君はそうそう“崩れない”人だけど。
「みんながみんな、君のようだったら仕事が減るなぁ」
「えっ。そんなことになったら大変ですよ」
「士気が?」
「組織というものが」
「そりゃあ、そうだね」
ボーダー隊員が、みんな戦闘大好きになったら嫌だなぁ。
「君は、兵士っていうか、戦士なんだよな」
「あーそれね」
テキトー言ってるな、太刀川くん。まあいい。
「では、何か質問は?」
「砂子さんって、休めてます?」
「週に2日は休んでるけど」
「うーん。そうじゃなくて、人の悩みとか聞き続けるの、しんどくない?」
「大丈夫だよ。プロだからね。共感はするけど、同調はしないんだ」
「本当に?」
「うん」
私は、城戸司令直属の部下だ。易々と折れていい柱ではないと自負している。たったひとりのカウンセラーだから。
「砂子さんって、ストレス解消に何するんです?」
「甘いもの食べる」
「今も食べてる」
「そうだよ。これがないと、始まらない」
マグカップの中の緑茶を飲んだ。
「お菓子もお茶も、必要経費さ」
「おかわり」
「ダメでーす。ひとり、ふたつまで」
「ちぇー」
唇を尖らせる太刀川くん。マグカップに手をつけた。
少しして、太刀川くんは、真剣な表情で、私に尋ねる。
「砂子さんの代わりっているんですか?」
「それは…………」
城戸さんは、代わりを見付けただろうか? 替えの効かない役職なんて、出来るだけない方がいい。
誰かは誰かの代わりにはなれないけど、私の代わりはいた方がいいに決まってる。
「そのうち増えるかもよ? カウンセラー」
「へー。でも、俺は砂子さんのカウンセリングがいいなー」
「なんで?」
「ちょうどいいから。深入りし過ぎず、浅いことは言わない」
「そういうものなんだよ、カウンセラーって」
「砂子さんっていうカウンセラーだろ?」
「褒めてる?」
「はい」
「そう。ありがとう」
私は、対話が好きで、人が好きで、人の心が分からない。だから、ちょうどいいんだよ。
「でも、砂子さんって自分が思ってるほどドライじゃないですよ」
「…………」
子供を戦わせている罪悪感。人間になりきれない自分への失望。誰も潰されてほしくないというエゴ。
「私がドライだろうと、ウェットだろうと、関係ない。やるべきことをやるだけだよ」
「そういうとこが、いいんだよな」
太刀川くんは、口元に笑みを浮かべた。