私という一頁の物語
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林藤さんに、「砂子さんに会いに行け」と言われたらしい。
迅くんは、風刃を手放したそうだ。師匠である最上さんの形見を。
「ぼんち揚、美味しい?」
「はい」
表情・味覚に異常なし。でも、どこか違和感がある。
「私の未来って、どうなってる?」
「元気そうですよ」
「そっか」
ああ、分かった。声のトーンが少し低いんだ。
風刃には、かなり執着していたはず。それを割り切れているんだろうか?
迅くんの計算では、風刃を手放してもお釣りがくるんだろうね。でも、君が未来のために何もかもを犠牲にしてはならない。
「ちゃんと、未来には君も元気でいる?」
「おれ?」
「自分のことも勘定に入れないとダメだよ」
「おれは…………」
迅くんは、口を引き結んで、黙り込んだ。
「最善というものの中には、自分の幸せも入れておく方がいい。勝手なことを言うけど。君に重荷を背負わせてる癖にね」
「そんなこと……」
「なくないだろ?」
君に、その肩の荷を下ろせと言えたらいいのに。
「ごめんね、迅くん」
「砂子さんは、いつも正直なんだから」
わざとらしく軽薄に笑う様が、なんだか悲しそうに見えた。
「あ、ごめんって言ったけど、ゆるさなくていいから。忘れてもいいし」
「分かってますよ。砂子さん、いつも大人代表みたいに謝るから」
口に入れたぼんち揚が、小気味いい音を立てる。呑み込んでから、緑茶をすすり、対話を再開。
「そういう役目なんだよ、私は」
「そうですか。おれも、こういう役目なんです」
「……さて、世間話でもしようか?」
「はい」
私たちは、いつも通り、なんてことない話をした。好きな雪遊びは何かとか、クリスマスの思い出のこととか、フィンランドに行ってみたいかとか。
一瞬だけでもいいから、君よ、ただの子供であってくれ。
これは、傲慢か? せっかく君は、役割を果たしているのに。それを、忘れてほしいだなんて。
時間いっぱい、私と迅くんは話した。
「それじゃあ、またね。いつでもおいで」
「はい。ありがとうございました」
廊下に出て行く彼を見送り、ドアを閉める。
「はぁ…………」
19歳の子供なんだぞ? ボーダーってのは、ろくでもない。体制側にいる私も、ろくでなしだ。
無力な大人で、ごめんなさい。ゆるさないでください。
せめて、君が穏やかに眠れるように。私は、私の出来ることをしよう。
いつか、今を振り返った時に、楽しかった思い出がありますように。
君の描く未来に、君が笑っていられますように。
迅くんは、風刃を手放したそうだ。師匠である最上さんの形見を。
「ぼんち揚、美味しい?」
「はい」
表情・味覚に異常なし。でも、どこか違和感がある。
「私の未来って、どうなってる?」
「元気そうですよ」
「そっか」
ああ、分かった。声のトーンが少し低いんだ。
風刃には、かなり執着していたはず。それを割り切れているんだろうか?
迅くんの計算では、風刃を手放してもお釣りがくるんだろうね。でも、君が未来のために何もかもを犠牲にしてはならない。
「ちゃんと、未来には君も元気でいる?」
「おれ?」
「自分のことも勘定に入れないとダメだよ」
「おれは…………」
迅くんは、口を引き結んで、黙り込んだ。
「最善というものの中には、自分の幸せも入れておく方がいい。勝手なことを言うけど。君に重荷を背負わせてる癖にね」
「そんなこと……」
「なくないだろ?」
君に、その肩の荷を下ろせと言えたらいいのに。
「ごめんね、迅くん」
「砂子さんは、いつも正直なんだから」
わざとらしく軽薄に笑う様が、なんだか悲しそうに見えた。
「あ、ごめんって言ったけど、ゆるさなくていいから。忘れてもいいし」
「分かってますよ。砂子さん、いつも大人代表みたいに謝るから」
口に入れたぼんち揚が、小気味いい音を立てる。呑み込んでから、緑茶をすすり、対話を再開。
「そういう役目なんだよ、私は」
「そうですか。おれも、こういう役目なんです」
「……さて、世間話でもしようか?」
「はい」
私たちは、いつも通り、なんてことない話をした。好きな雪遊びは何かとか、クリスマスの思い出のこととか、フィンランドに行ってみたいかとか。
一瞬だけでもいいから、君よ、ただの子供であってくれ。
これは、傲慢か? せっかく君は、役割を果たしているのに。それを、忘れてほしいだなんて。
時間いっぱい、私と迅くんは話した。
「それじゃあ、またね。いつでもおいで」
「はい。ありがとうございました」
廊下に出て行く彼を見送り、ドアを閉める。
「はぁ…………」
19歳の子供なんだぞ? ボーダーってのは、ろくでもない。体制側にいる私も、ろくでなしだ。
無力な大人で、ごめんなさい。ゆるさないでください。
せめて、君が穏やかに眠れるように。私は、私の出来ることをしよう。
いつか、今を振り返った時に、楽しかった思い出がありますように。
君の描く未来に、君が笑っていられますように。