煙シリーズおまけ
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紆余曲折あって、戦闘員をやめ、開発室で働いている男、ミョウジナマエ。
「寺島くん、このトリガーさぁ」
「あーそれ、ミョウジの案を採用した」
「マジ? やったー」
日々、努力して技術者としてやってきた。ボーダーに尽くしているかのように。
ミョウジナマエの真の目的は、別のところにあった。
それは、まず、肌身離さず持っている、ひとつの実験用トリガーを秘密裏に完成させること。
その日は、案外早くやってきた。
「は……はは…………」
これなら。これなら、出来る。
トリガーの完成は、手段。最終目的は、ひとりの男を手に入れること。
「トリガー起動」
ミョウジは、トリオン体へと換装し、諏訪洸太郎を探す。
彼は、隊室にいた。推理小説を読んでいる。
「諏訪さん!」
「ああ?」
「好きです! あたしと付き合ってください!」
諏訪に近付いて来て、いきなり告白してきたのは、見知らぬ女。
元気溌剌。可愛いとも、美しいとも表現出来る容姿。
「いや、待て。誰だ?」
「大砂世界、20歳! エンジニアです!」
大砂世界は、もちろん偽名であり、正体はミョウジナマエである。
「好きです! あたし、本気です!」
「お、おう。まあ、その、友達からにしとけよ」
「はい! ありがとうございます!」
照れくさそうに笑う諏訪が、可愛いと思った。
それから、ミョウジは、大砂世界として、諏訪洸太郎と距離を縮めていく。理想の女の体を手にしたミョウジは、なんでも言えた。
「カッコいい!」とか「大好き!」とか「愛してる!」とか。
無敵の女だった。
諏訪洸太郎は、段々と彼女を好きになっていく。
その名は、仮初め。ひとりの男が作り出した虚像。
だって、おまえは男だから。女じゃないと、恋をしちゃいけないから。ずっと隣にいられないから。
植え付けられた異性愛規範が、ミョウジを蝕んでいる。
「諏訪さーん!」
「世界」
偽りの名前を呼んでくれるようになった頃、ふたりで遊びに行くことが増えた。
「これって、デートですよね?」
「まーな」
「嬉しい!」
諏訪の手を握ると、優しく握り返される。
楽しくて、嬉しくて、繋いだ腕をぶんぶん振った。
「はしゃいでんな」
「もちろん!」
満面の笑みで、女は言う。
その日は、ふたりで大きな書店へ行った。
「そういや、世界は小説読むのか?」
「あたし、あんまり字が読めなくて。漫画じゃダメですか?」
「いや、んなことねーけど。意外だな」
「そうですか? 諏訪さんの好きな推理小説とか、全然ダメですよ。難しいから」
また、嘘をつく。本当は、答えを出すものだから、推理小説が苦手なのである。
どうせ、嘘にまみれた体なのだから、もうどうだってよかった。
「エンジニアってのは、何を読むんだ?」
「技術書は読めます。仕事ですから。紙の本ではないですけど」
「世界の本棚が見てーな」
それは無理だ。ミョウジの本棚は、哲学書で埋まっている。
「恋愛漫画ばっかりですよー」
「へぇ」
あんまり、この辺を掘り下げないでほしい。
「あたし、諏訪さんのオススメなら、推理小説だって読みます! 優しいやつでお願いします!」
「おう。じゃあ、国内の短編集にすっか」
「はい」
一体、オレは、いつまでこの夢の中にいられるんだろう?
ミョウジは、頭の片隅に常にある考えから、目を逸らし続ける。
いつか、必ず真実に辿り着くおまえ。おまえは、オレを裁くんだろうか?
ミョウジナマエは、少し暗い気持ちになった。
◆◆◆
最初は、知らない女だと思ったんだ。
でも、違う。大砂世界の正体は、ミョウジナマエだ。
無意識であろう仕草が、ミョウジと同じだから。
「諏訪さん!」
「よう」
だが、真実に辿り着いたことを黙っている。
こんなに溌剌としたおまえを、俺は初めて見た。おまえが、煙に巻くような喋り方をしてないのを、初めて見た。
ただ、分からないことが、ひとつ。なんで、男女の恋愛ごっこがしたいんだ?
「世界、将来なりてぇもんは?」
「諏訪さんのお嫁さん!」
分からない。嘘だけは言わなかったおまえが、俺に嘘をつくようになったワケが。
いつか、おまえから、ミョウジナマエから聞きたい。
おまえの真実の心は、なんだ?
「寺島くん、このトリガーさぁ」
「あーそれ、ミョウジの案を採用した」
「マジ? やったー」
日々、努力して技術者としてやってきた。ボーダーに尽くしているかのように。
ミョウジナマエの真の目的は、別のところにあった。
それは、まず、肌身離さず持っている、ひとつの実験用トリガーを秘密裏に完成させること。
その日は、案外早くやってきた。
「は……はは…………」
これなら。これなら、出来る。
トリガーの完成は、手段。最終目的は、ひとりの男を手に入れること。
「トリガー起動」
ミョウジは、トリオン体へと換装し、諏訪洸太郎を探す。
彼は、隊室にいた。推理小説を読んでいる。
「諏訪さん!」
「ああ?」
「好きです! あたしと付き合ってください!」
諏訪に近付いて来て、いきなり告白してきたのは、見知らぬ女。
元気溌剌。可愛いとも、美しいとも表現出来る容姿。
「いや、待て。誰だ?」
「大砂世界、20歳! エンジニアです!」
大砂世界は、もちろん偽名であり、正体はミョウジナマエである。
「好きです! あたし、本気です!」
「お、おう。まあ、その、友達からにしとけよ」
「はい! ありがとうございます!」
照れくさそうに笑う諏訪が、可愛いと思った。
それから、ミョウジは、大砂世界として、諏訪洸太郎と距離を縮めていく。理想の女の体を手にしたミョウジは、なんでも言えた。
「カッコいい!」とか「大好き!」とか「愛してる!」とか。
無敵の女だった。
諏訪洸太郎は、段々と彼女を好きになっていく。
その名は、仮初め。ひとりの男が作り出した虚像。
だって、おまえは男だから。女じゃないと、恋をしちゃいけないから。ずっと隣にいられないから。
植え付けられた異性愛規範が、ミョウジを蝕んでいる。
「諏訪さーん!」
「世界」
偽りの名前を呼んでくれるようになった頃、ふたりで遊びに行くことが増えた。
「これって、デートですよね?」
「まーな」
「嬉しい!」
諏訪の手を握ると、優しく握り返される。
楽しくて、嬉しくて、繋いだ腕をぶんぶん振った。
「はしゃいでんな」
「もちろん!」
満面の笑みで、女は言う。
その日は、ふたりで大きな書店へ行った。
「そういや、世界は小説読むのか?」
「あたし、あんまり字が読めなくて。漫画じゃダメですか?」
「いや、んなことねーけど。意外だな」
「そうですか? 諏訪さんの好きな推理小説とか、全然ダメですよ。難しいから」
また、嘘をつく。本当は、答えを出すものだから、推理小説が苦手なのである。
どうせ、嘘にまみれた体なのだから、もうどうだってよかった。
「エンジニアってのは、何を読むんだ?」
「技術書は読めます。仕事ですから。紙の本ではないですけど」
「世界の本棚が見てーな」
それは無理だ。ミョウジの本棚は、哲学書で埋まっている。
「恋愛漫画ばっかりですよー」
「へぇ」
あんまり、この辺を掘り下げないでほしい。
「あたし、諏訪さんのオススメなら、推理小説だって読みます! 優しいやつでお願いします!」
「おう。じゃあ、国内の短編集にすっか」
「はい」
一体、オレは、いつまでこの夢の中にいられるんだろう?
ミョウジは、頭の片隅に常にある考えから、目を逸らし続ける。
いつか、必ず真実に辿り着くおまえ。おまえは、オレを裁くんだろうか?
ミョウジナマエは、少し暗い気持ちになった。
◆◆◆
最初は、知らない女だと思ったんだ。
でも、違う。大砂世界の正体は、ミョウジナマエだ。
無意識であろう仕草が、ミョウジと同じだから。
「諏訪さん!」
「よう」
だが、真実に辿り着いたことを黙っている。
こんなに溌剌としたおまえを、俺は初めて見た。おまえが、煙に巻くような喋り方をしてないのを、初めて見た。
ただ、分からないことが、ひとつ。なんで、男女の恋愛ごっこがしたいんだ?
「世界、将来なりてぇもんは?」
「諏訪さんのお嫁さん!」
分からない。嘘だけは言わなかったおまえが、俺に嘘をつくようになったワケが。
いつか、おまえから、ミョウジナマエから聞きたい。
おまえの真実の心は、なんだ?