私という一頁の物語
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ポーカーフェイスというか、私は、感情の起伏が少ない方なのだと思う。
しかし、母に詰られたり、父に文句を言われた時は、瞬発力のある怒りを見せることが出来る。その場で怒らないと、引きずるから。
たまに、自分の感受性のなさに驚くことがある。趣味の小説を書いていると、よく情緒のない自分を省みることになるのだ。
物語が好きな癖に、私は即物的なことばかり考えている。感性の豊かさがない。繊細さがない。
それでも私は、物語と関わることをやめられずにいる。物語を読み解くことを、諦めきれない。
それは私には、人間に対することと同じである。私は、他者を読み解きたい。理解は出来なくても、歩み寄ることは出来る。
次のクライアントは、荒船哲次くん。ここに来るのは、初めてだ。
ノックの音がする。
「はい。どうぞ」
「失礼します」
「こんにちは、荒船くん。椅子にかけて」
「こんにちは。はい」
私は、用意していた麦茶ときんつばを出した。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
しばらく、ふたりでお茶をする。
話題がボーダーについてになった時に、荒船くんは、少し表情を変えた。
どうも、そのことで何かありそうだ。
「俺、狙撃手に転向したじゃないですか。そのこと、砂子さんは、どう思います?」
「狙撃手に転向したんだなぁ、と思った」
素朴過ぎる感想。
「それなんですよ。ただ、それだけ。なのに、ごちゃごちゃ噂されて、うるさくて」
「なるほど。じゃあ、狙撃手になった理由は?」
「パーフェクトオールラウンダーになって、そのメソッドを確立させるためです」
「そうなんだ。何事も理論があると便利だからね」
「はい」
私のカウンセリングも、理屈でやっていることだし。
「君が、いちいち他人にそれを説明するのは、煩わしいかもしれない」
「そうですね」
「訊かれたら答えるくらいでいいんじゃない?」
「そうします」
頭を押さえる荒船くん。いつも帽子被ってるから、癖になってるのかな。
「君のメソッドが完成したら、私も戦えるようになるのかな?」
「なれます」
「それは楽しみだ」
私が戦えるなら、もっと君たちを守れるから。
「でも、砂子さんには、あんまり戦ってほしくないですね」
「なんで?」
「今でも、充分戦ってるから。砂子さんの戦いは、他の奴には出来ないことだ」
「まあ、私、ワンオペだしねぇ」
「そういうことじゃなくて」
「分かってるよ。私の仕事を認めてくれて、ありがとう」
私は、嬉しい。私の存在に意味があるなら、それは幸せなことだ。
「…………」
「どうかした?」
「珍しく、砂子さんが笑うから……」
「悪人っぽいって、よく言われる」
「そんなことないですよ」
荒船くんは、笑顔でそう言ってくれた。
私は、ほんとは、"ろくでなし"なんだけど、それは内緒。
しかし、母に詰られたり、父に文句を言われた時は、瞬発力のある怒りを見せることが出来る。その場で怒らないと、引きずるから。
たまに、自分の感受性のなさに驚くことがある。趣味の小説を書いていると、よく情緒のない自分を省みることになるのだ。
物語が好きな癖に、私は即物的なことばかり考えている。感性の豊かさがない。繊細さがない。
それでも私は、物語と関わることをやめられずにいる。物語を読み解くことを、諦めきれない。
それは私には、人間に対することと同じである。私は、他者を読み解きたい。理解は出来なくても、歩み寄ることは出来る。
次のクライアントは、荒船哲次くん。ここに来るのは、初めてだ。
ノックの音がする。
「はい。どうぞ」
「失礼します」
「こんにちは、荒船くん。椅子にかけて」
「こんにちは。はい」
私は、用意していた麦茶ときんつばを出した。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
しばらく、ふたりでお茶をする。
話題がボーダーについてになった時に、荒船くんは、少し表情を変えた。
どうも、そのことで何かありそうだ。
「俺、狙撃手に転向したじゃないですか。そのこと、砂子さんは、どう思います?」
「狙撃手に転向したんだなぁ、と思った」
素朴過ぎる感想。
「それなんですよ。ただ、それだけ。なのに、ごちゃごちゃ噂されて、うるさくて」
「なるほど。じゃあ、狙撃手になった理由は?」
「パーフェクトオールラウンダーになって、そのメソッドを確立させるためです」
「そうなんだ。何事も理論があると便利だからね」
「はい」
私のカウンセリングも、理屈でやっていることだし。
「君が、いちいち他人にそれを説明するのは、煩わしいかもしれない」
「そうですね」
「訊かれたら答えるくらいでいいんじゃない?」
「そうします」
頭を押さえる荒船くん。いつも帽子被ってるから、癖になってるのかな。
「君のメソッドが完成したら、私も戦えるようになるのかな?」
「なれます」
「それは楽しみだ」
私が戦えるなら、もっと君たちを守れるから。
「でも、砂子さんには、あんまり戦ってほしくないですね」
「なんで?」
「今でも、充分戦ってるから。砂子さんの戦いは、他の奴には出来ないことだ」
「まあ、私、ワンオペだしねぇ」
「そういうことじゃなくて」
「分かってるよ。私の仕事を認めてくれて、ありがとう」
私は、嬉しい。私の存在に意味があるなら、それは幸せなことだ。
「…………」
「どうかした?」
「珍しく、砂子さんが笑うから……」
「悪人っぽいって、よく言われる」
「そんなことないですよ」
荒船くんは、笑顔でそう言ってくれた。
私は、ほんとは、"ろくでなし"なんだけど、それは内緒。