私という一頁の物語
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今日も元気だ。ご飯が美味い。
食堂で、からあげ定食をもりもり食べながら、そう思った。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした。砂ちゃんは、いつもいい食べっぷりねぇ」
「食べるのが好きなんです」
「見てて分かるわぁ」
「いつも、ありがとうございます」
「いいのよ」
おばちゃんとの会話もそこそこに、私は仕事場へと戻る。
この空間は、とても落ち着く。ほとんど自宅みたいに感じている。
家具は私の好きな寒色だし、私物のモササウルスやミツクリザメのぬいぐるみが置いてあるし。
さて。午後一番のクライアントは、と。君か。
感情受信体質である彼にとって、私はストレスを感じない相手らしい。感情と、表情や口にする言葉が一致しているからだそうだ。私は、抜き身でしか生きられないしな。
影浦雅人くんは、度々カウンセリングルームを訪れる。
「こんにちは。今日は、緑茶と塩せんべいだよ」
「……どうも」
影浦くんは、ぶっきらぼうに言う。
例の話をしに来たんだろうか?
「……降格になったの知ってますよね?」
「うん」
「俺は、我慢出来なくて」
「うん」
「だから、殴った」
「そう」
根付さんを殴ったんだよなぁ。隊務規定違反だ。
「……また、砂子さんを巻き込んじまった」
このカウンセリングは、半ば強制である。
始末書を提出する際に、カウンセリングを受けるように言われたはずだ。
「いや、それは気にしなくていいけど」
ずずっと緑茶を飲む。
「まあ、殴らない方がよかったとは思う。思うけど、殴る方が速度があるからねぇ」
「速度?」
「話し合いをするより、拳一発の方が楽だもんね」
「砂子さんは、いつも叱るよりヒデーこと言うな」
「そうかな?」
私は、事実を述べているだけだ。
私は、剣よりペンを取った者だけど、文章は読まれなくては届かないし。言葉は、時に無力だ。
「君の選択は、少なくない人を巻き込んだ。それは、その通り。それだけは覚えておいてね」
「ああ……」
それからは、ぽつりぽつりと自分のことを話す影浦くんの声に耳を傾けた。
時間が来て、影浦くんを見送った後、私は考える。
あの時、アイツらを殴っておけばよかった、と。小中学生の頃、私はからかいの対象だった。
その場で、すぐに殴り飛ばしてやれば、こんなに引きずらなくてよかったのかもしれない。
結局、何を選んでも後悔するような気もするが。
拳は、暴力。言葉は、刃。私は、"対話"がしたい。それを選び続けるのは、私の意思である。
選択の積み重ねの先に、何があるのかは分からないけれど、未来のことを信じていよう。
食堂で、からあげ定食をもりもり食べながら、そう思った。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした。砂ちゃんは、いつもいい食べっぷりねぇ」
「食べるのが好きなんです」
「見てて分かるわぁ」
「いつも、ありがとうございます」
「いいのよ」
おばちゃんとの会話もそこそこに、私は仕事場へと戻る。
この空間は、とても落ち着く。ほとんど自宅みたいに感じている。
家具は私の好きな寒色だし、私物のモササウルスやミツクリザメのぬいぐるみが置いてあるし。
さて。午後一番のクライアントは、と。君か。
感情受信体質である彼にとって、私はストレスを感じない相手らしい。感情と、表情や口にする言葉が一致しているからだそうだ。私は、抜き身でしか生きられないしな。
影浦雅人くんは、度々カウンセリングルームを訪れる。
「こんにちは。今日は、緑茶と塩せんべいだよ」
「……どうも」
影浦くんは、ぶっきらぼうに言う。
例の話をしに来たんだろうか?
「……降格になったの知ってますよね?」
「うん」
「俺は、我慢出来なくて」
「うん」
「だから、殴った」
「そう」
根付さんを殴ったんだよなぁ。隊務規定違反だ。
「……また、砂子さんを巻き込んじまった」
このカウンセリングは、半ば強制である。
始末書を提出する際に、カウンセリングを受けるように言われたはずだ。
「いや、それは気にしなくていいけど」
ずずっと緑茶を飲む。
「まあ、殴らない方がよかったとは思う。思うけど、殴る方が速度があるからねぇ」
「速度?」
「話し合いをするより、拳一発の方が楽だもんね」
「砂子さんは、いつも叱るよりヒデーこと言うな」
「そうかな?」
私は、事実を述べているだけだ。
私は、剣よりペンを取った者だけど、文章は読まれなくては届かないし。言葉は、時に無力だ。
「君の選択は、少なくない人を巻き込んだ。それは、その通り。それだけは覚えておいてね」
「ああ……」
それからは、ぽつりぽつりと自分のことを話す影浦くんの声に耳を傾けた。
時間が来て、影浦くんを見送った後、私は考える。
あの時、アイツらを殴っておけばよかった、と。小中学生の頃、私はからかいの対象だった。
その場で、すぐに殴り飛ばしてやれば、こんなに引きずらなくてよかったのかもしれない。
結局、何を選んでも後悔するような気もするが。
拳は、暴力。言葉は、刃。私は、"対話"がしたい。それを選び続けるのは、私の意思である。
選択の積み重ねの先に、何があるのかは分からないけれど、未来のことを信じていよう。