私という一頁の物語
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午前中に、4人。午後は、7人のクライアントと話をしたので、流石に疲れてしまっている。
他人の人生を読むことは、多かれ少なかれ私にも影響を及ぼす。
思考し、言葉を選び、声の調子にも気を付けて、対話をする。それは、双方向のやり取りだから。
「ふぅ」
さて、帰ろうか。
私は、白衣を脱ぎ、鞄にしまう。
私の鞄は大きい。スマホ・イヤホン・財布・筆記用具・折り畳み傘・扇子・鏡・ポーチ・ぬいぐるみなど。色々入れるには、このくらいの鞄でなくてはならない。
鞄が驚くほど小さい人は、スマホ決済を使っていたりするんだろうか? 謎である。
重い鞄を肩にかけ、カウンセリングルームを後にした。
そして、曲がり角で、人にぶつかりそうになり、「わっ!」と声を上げる。
「すいません。大丈夫ですか?」
「大丈夫。こちらこそ、ごめん、東くん」
背が高い彼を見上げて、謝った。
「……砂子さん、誕生日でしたよね? おめでとうございます」
「ありがとう」
「何か欲しいものあります?」
「不老不死」
「はは」
冗談を言われたと思われたらしく、軽く笑われる。
「本気なんだけどなぁ」
「飲み物、奢りますよ」
「ありがたく、いただきます」
自販機のあるところまで、ふたりで歩いた。東くんは、歩幅を合わせてくれる。動物で例えるなら、優しい象だな。
「何がいいですか?」
「カルピスで」
「了解。どうぞ」
「ありがとう」
カルピスのミニペットボトルをもらった。カルピスは、私の好きな飲み物のひとつだ。
「少しお時間もらえます?」
「うん」
自販機前の椅子に、並んで腰かける。
「7月に、希望者を募って釣りに行くんですけど、砂子さんもどうですか?」
「釣りかぁ。何年もしてないな。マイ釣竿が泣いてるねぇ」
「へぇ。釣りが趣味だったことが?」
「弟の付き添いでね。昔、近場の池で釣りをしてたんだ。東くんは、川でしょう?」
「はい。夏は鮎が釣れますよ」
「鮎!? 塩焼き?!」
つい、食い意地が張った声を出してしまった。
「釣った後は、グリルで塩焼きにします」
「行きます!」
「分かりました。名簿に入れておきますね」
私の頭の中は、鮎の塩焼きでいっぱいになっている。
たまに食事を疎かにしてしまうが、私は基本的に食べることが好きだ。魚も大好き。寿司・刺身・漬け・焼き魚・煮つけ・干物。みんな違って、みんな美味い。
子供の頃、福島県へ旅行に行き、川で岩魚を釣って、塩焼きにして食べたっけ。懐かしいな。
「日程は、また後ほど知らせます」
「うん。よろしく」
にやけが抑えられないので、片手で口元を隠す私。
帰宅してから、釣竿を発掘する。うん、まだ使えそうだ。
釣竿は、寝室の隅に立てかけておく。
20時半頃、弟が帰宅した。
「砂子、俺の部屋荒らした?」
「元々だろ」
弟の部屋は、漫画やぬいぐるみで溢れていて、床面積がほぼない。
「なんか、配置が違う」
「釣竿出しただけ」
「なんで?」
「鮎の塩焼きのためだよ。来月、仲間と釣りに行くんだ」
「保護者枠?」
「ははは。優秀な後輩に任せる。サポートはするけどね」
「へー」
あまり興味なさそうだ。まあ、コイツは、万人に興味ないし。
弟は、仮面を被るのが上手いが、人間嫌い。私は、仮面が被れないが、人間が好き。
どうしてこうなったんだろう?
まあ、いいや。
先に楽しみがあると、一層生き延びなくてはという気持ちになる。
他人の人生を読むことは、多かれ少なかれ私にも影響を及ぼす。
思考し、言葉を選び、声の調子にも気を付けて、対話をする。それは、双方向のやり取りだから。
「ふぅ」
さて、帰ろうか。
私は、白衣を脱ぎ、鞄にしまう。
私の鞄は大きい。スマホ・イヤホン・財布・筆記用具・折り畳み傘・扇子・鏡・ポーチ・ぬいぐるみなど。色々入れるには、このくらいの鞄でなくてはならない。
鞄が驚くほど小さい人は、スマホ決済を使っていたりするんだろうか? 謎である。
重い鞄を肩にかけ、カウンセリングルームを後にした。
そして、曲がり角で、人にぶつかりそうになり、「わっ!」と声を上げる。
「すいません。大丈夫ですか?」
「大丈夫。こちらこそ、ごめん、東くん」
背が高い彼を見上げて、謝った。
「……砂子さん、誕生日でしたよね? おめでとうございます」
「ありがとう」
「何か欲しいものあります?」
「不老不死」
「はは」
冗談を言われたと思われたらしく、軽く笑われる。
「本気なんだけどなぁ」
「飲み物、奢りますよ」
「ありがたく、いただきます」
自販機のあるところまで、ふたりで歩いた。東くんは、歩幅を合わせてくれる。動物で例えるなら、優しい象だな。
「何がいいですか?」
「カルピスで」
「了解。どうぞ」
「ありがとう」
カルピスのミニペットボトルをもらった。カルピスは、私の好きな飲み物のひとつだ。
「少しお時間もらえます?」
「うん」
自販機前の椅子に、並んで腰かける。
「7月に、希望者を募って釣りに行くんですけど、砂子さんもどうですか?」
「釣りかぁ。何年もしてないな。マイ釣竿が泣いてるねぇ」
「へぇ。釣りが趣味だったことが?」
「弟の付き添いでね。昔、近場の池で釣りをしてたんだ。東くんは、川でしょう?」
「はい。夏は鮎が釣れますよ」
「鮎!? 塩焼き?!」
つい、食い意地が張った声を出してしまった。
「釣った後は、グリルで塩焼きにします」
「行きます!」
「分かりました。名簿に入れておきますね」
私の頭の中は、鮎の塩焼きでいっぱいになっている。
たまに食事を疎かにしてしまうが、私は基本的に食べることが好きだ。魚も大好き。寿司・刺身・漬け・焼き魚・煮つけ・干物。みんな違って、みんな美味い。
子供の頃、福島県へ旅行に行き、川で岩魚を釣って、塩焼きにして食べたっけ。懐かしいな。
「日程は、また後ほど知らせます」
「うん。よろしく」
にやけが抑えられないので、片手で口元を隠す私。
帰宅してから、釣竿を発掘する。うん、まだ使えそうだ。
釣竿は、寝室の隅に立てかけておく。
20時半頃、弟が帰宅した。
「砂子、俺の部屋荒らした?」
「元々だろ」
弟の部屋は、漫画やぬいぐるみで溢れていて、床面積がほぼない。
「なんか、配置が違う」
「釣竿出しただけ」
「なんで?」
「鮎の塩焼きのためだよ。来月、仲間と釣りに行くんだ」
「保護者枠?」
「ははは。優秀な後輩に任せる。サポートはするけどね」
「へー」
あまり興味なさそうだ。まあ、コイツは、万人に興味ないし。
弟は、仮面を被るのが上手いが、人間嫌い。私は、仮面が被れないが、人間が好き。
どうしてこうなったんだろう?
まあ、いいや。
先に楽しみがあると、一層生き延びなくてはという気持ちになる。