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自室で、読みかけの推理小説のページをめくる。
それは、死体をバラバラにする殺人事件のものだった。
諏訪洸太郎は、ふと、先日のランク戦のことを思い出す。
あの時は、トリオン体の脚をやられた。
過去に、腕をやられたこともあるし、首を飛ばされたこともある。
バラバラだ。と思った。
もちろん、肉体は一切傷付いていない。だが、実質、死体側の体験をしているのである。
探偵のがよかったな。
なんて、諏訪は考えた。
寒い冬の日。窓の外は、雨。読書日和だ。
◆◆◆
B級ランク戦、ラウンド2の記憶。
半崎のヘッドショットをピンポイントで防いだのは、重畳だった。
しかし、その後、穂刈の狙撃で左脚を失ったのはよくない。
機動力が、著しく低下した。後々、バランスが狂ってダメだった。
トリオン体の一部を失くすのは、よくあることだが、いつも新鮮に「しくじった」と思う。
無論、戦闘中には、そんなことは言わない。
肉体では味わわない欠落。それを、いとも簡単に引き起こすトリオン体での戦闘。
非日常が、日常に変わったという、ミクロな出来事。
マクロで言うなら、三門市そのものの在り方が、そうだ。
大人が尽力し、子供も戦い、秘匿された技術は数知れず。
欠けても元に戻る体。幻肢痛もない。
でも、俺たちは、戦争をしてる。
諏訪は、そのことを考えざるを得なかった。年長者として。
彼は、まだまだ若いが、ボーダーという組織では立派な大人であるが故に、年少者への気遣いをきちんとしていた。
それに、諏訪自身がどう思っているかはともかく、お人好しな性格である。
誰も欠けてほしくはない。
例えば、両親を失った仲間がいる。その人物は、「欠けた日常を生きてる」と語った。
大切な何かを守れなかったと考えているボーダー隊員は、少なくない。
ボーダーの友人の腕が吹き飛ばされたのを見た時、わずかに顔をしかめた覚えがある。
自分が戦っている時は、そんなことは考えないのに。ただ、目の前の戦いに集中出来るのに。
仲間がそうなるのは、嫌だった。
精神を、心を削りながら生きてはほしくない。
戦時下では、子供は子供のままではいられないと、何かで読んだが。
ボーダーでは、部活動をするみたいに過ごしていてほしいと願った。
諏訪は、無意識に、片手を左脚に伸ばしている。
推理小説は、探偵が、関係者を集めて推理を披露し始めたところだ。
バラバラ殺人事件の犯人は、なんと言うか、普通の人だった。精神に異常を来しているワケでも、特殊な環境で育ったワケでもない。
ボーダーの隊員たちのことを思う。
みんな、普通の奴なんだよ。
ただ、あの日に日常が壊されただけの。
全てを取り戻すために戦ってる奴も、復讐のために戦ってる奴も、三門のために出来ることをしたい奴も。
やがて、小説を読み終えた諏訪は、一服することにした。
煙草に火を着け、すーっと吸い込む。煙草の先からは、細い煙が立ち上った。
窓の外を見ると、雨は止んでいる。
◆◆◆
B級ランク戦、ラウンド8の当日。
諏訪隊は、香取隊と那須隊と戦う。
やはり、トリオン体の欠損は生じた。諏訪隊は、なんとか3ポイントをもぎ取る。
隊員たちを労った後の帰路。先ほど、トリオン体の時に失った部分をさする諏訪。
戦闘中には、考えていないこと。欠けた街のこと。
負けても死ぬワケではない戦いの意義。
その積み重ねによって、隊員たちは鍛えられ、多くを守れるようになるだろう。
その晩、欠けた夢を見た。
左脚を失ってなお、戦う夢。
それを補うのは、仲間と戦術である。
ふいに風を受けて、空を見上げた。
星々が浮かび、輝いている。もう死んでいるかもしれない光。だけど、宵闇を照らす美しい灯り。
昔、点を線で繋いで、様々なものを星に見た者がいた。
「ツギハギみたい」と、哲学オタクの仲間が言ってたっけか。
失っても、取り戻す。欠けても、補える。平穏を勝ち取れるはず。
それが、所属している組織の存在意義だろう。
諏訪洸太郎は、ひとりの人間として、ただ真っ直ぐに進むだけだ。
もし、おまえが泣いてるなら、俺を呼べばいい。どこにいても、すぐに駆け付けるから。
独りにさせない。隣にいるから。
おまえが、もう一歩も歩けなくて、座り込んでしまったら、手を差し出すから。
安心して、おまえの人生を進んでくれ。
少しだけでも、おまえの背中を押せるような。そんな存在でありたいんだ。
ひとりでは耐えきれないことも、一緒なら大丈夫だろ?
朝。目を覚ます。
なにか、夢の中で、格好つけたことをしたような気がした。
「よし、今日もやるか」
声に出して、気合いを入れる。
諏訪洸太郎の日常は、こうして続いていく。
それは、死体をバラバラにする殺人事件のものだった。
諏訪洸太郎は、ふと、先日のランク戦のことを思い出す。
あの時は、トリオン体の脚をやられた。
過去に、腕をやられたこともあるし、首を飛ばされたこともある。
バラバラだ。と思った。
もちろん、肉体は一切傷付いていない。だが、実質、死体側の体験をしているのである。
探偵のがよかったな。
なんて、諏訪は考えた。
寒い冬の日。窓の外は、雨。読書日和だ。
◆◆◆
B級ランク戦、ラウンド2の記憶。
半崎のヘッドショットをピンポイントで防いだのは、重畳だった。
しかし、その後、穂刈の狙撃で左脚を失ったのはよくない。
機動力が、著しく低下した。後々、バランスが狂ってダメだった。
トリオン体の一部を失くすのは、よくあることだが、いつも新鮮に「しくじった」と思う。
無論、戦闘中には、そんなことは言わない。
肉体では味わわない欠落。それを、いとも簡単に引き起こすトリオン体での戦闘。
非日常が、日常に変わったという、ミクロな出来事。
マクロで言うなら、三門市そのものの在り方が、そうだ。
大人が尽力し、子供も戦い、秘匿された技術は数知れず。
欠けても元に戻る体。幻肢痛もない。
でも、俺たちは、戦争をしてる。
諏訪は、そのことを考えざるを得なかった。年長者として。
彼は、まだまだ若いが、ボーダーという組織では立派な大人であるが故に、年少者への気遣いをきちんとしていた。
それに、諏訪自身がどう思っているかはともかく、お人好しな性格である。
誰も欠けてほしくはない。
例えば、両親を失った仲間がいる。その人物は、「欠けた日常を生きてる」と語った。
大切な何かを守れなかったと考えているボーダー隊員は、少なくない。
ボーダーの友人の腕が吹き飛ばされたのを見た時、わずかに顔をしかめた覚えがある。
自分が戦っている時は、そんなことは考えないのに。ただ、目の前の戦いに集中出来るのに。
仲間がそうなるのは、嫌だった。
精神を、心を削りながら生きてはほしくない。
戦時下では、子供は子供のままではいられないと、何かで読んだが。
ボーダーでは、部活動をするみたいに過ごしていてほしいと願った。
諏訪は、無意識に、片手を左脚に伸ばしている。
推理小説は、探偵が、関係者を集めて推理を披露し始めたところだ。
バラバラ殺人事件の犯人は、なんと言うか、普通の人だった。精神に異常を来しているワケでも、特殊な環境で育ったワケでもない。
ボーダーの隊員たちのことを思う。
みんな、普通の奴なんだよ。
ただ、あの日に日常が壊されただけの。
全てを取り戻すために戦ってる奴も、復讐のために戦ってる奴も、三門のために出来ることをしたい奴も。
やがて、小説を読み終えた諏訪は、一服することにした。
煙草に火を着け、すーっと吸い込む。煙草の先からは、細い煙が立ち上った。
窓の外を見ると、雨は止んでいる。
◆◆◆
B級ランク戦、ラウンド8の当日。
諏訪隊は、香取隊と那須隊と戦う。
やはり、トリオン体の欠損は生じた。諏訪隊は、なんとか3ポイントをもぎ取る。
隊員たちを労った後の帰路。先ほど、トリオン体の時に失った部分をさする諏訪。
戦闘中には、考えていないこと。欠けた街のこと。
負けても死ぬワケではない戦いの意義。
その積み重ねによって、隊員たちは鍛えられ、多くを守れるようになるだろう。
その晩、欠けた夢を見た。
左脚を失ってなお、戦う夢。
それを補うのは、仲間と戦術である。
ふいに風を受けて、空を見上げた。
星々が浮かび、輝いている。もう死んでいるかもしれない光。だけど、宵闇を照らす美しい灯り。
昔、点を線で繋いで、様々なものを星に見た者がいた。
「ツギハギみたい」と、哲学オタクの仲間が言ってたっけか。
失っても、取り戻す。欠けても、補える。平穏を勝ち取れるはず。
それが、所属している組織の存在意義だろう。
諏訪洸太郎は、ひとりの人間として、ただ真っ直ぐに進むだけだ。
もし、おまえが泣いてるなら、俺を呼べばいい。どこにいても、すぐに駆け付けるから。
独りにさせない。隣にいるから。
おまえが、もう一歩も歩けなくて、座り込んでしまったら、手を差し出すから。
安心して、おまえの人生を進んでくれ。
少しだけでも、おまえの背中を押せるような。そんな存在でありたいんだ。
ひとりでは耐えきれないことも、一緒なら大丈夫だろ?
朝。目を覚ます。
なにか、夢の中で、格好つけたことをしたような気がした。
「よし、今日もやるか」
声に出して、気合いを入れる。
諏訪洸太郎の日常は、こうして続いていく。
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