私という一頁の物語
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眼鏡を外して目頭を押さえ、ふーっと息を吐いた。少し、肩がこったな。
私は立ち上がり、両腕を動かし、軽くストレッチをした。肩甲骨を意識して動かす。
デスクワークに肩こりは付き物。もっとも、私は、幼少の頃から肩こりに悩まされ続けている訳だが。インドア趣味だから、仕方ない。
「運動しないと早死にするよ」という母の小言は、いつも聞き流している。
運動してようが、死ぬ時は死ぬよ。なんて、口答えしたこともあったっけ。
あーあ。不老不死になりたいな。SFが好きだから、世界が滅ぶところが見たいし。
ホラーが好きだから、死なない化物みたいに噂にもなりたいし。
探偵ものが好きだから、実は生きてた被害者にもなりたいし。
そうそう、次のクライアントは、諏訪洸太郎くん。
彼は、定期的に、ここを訪れている。ちょっと前に隊員になったかと思えば、今や隊長だもんなぁ。時の流れを感じる。
予約時間。彼が入って来た時、うっすら消臭スプレーの香りがした。律儀な子だなぁ。
私は、気管支が弱く、煙草がダメである。匂いも好きじゃない。けれど、そんなに気を遣わなくてもいいのに。
「おはよう」
「おはようございます」
椅子にかけるように促し、緑茶とどら焼きを出す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
お互いにお茶を一口飲み、一息ついた。
「砂子さん、誕生日おめでとうございます」
「ありがとう、諏訪くん」
「それから、これ。ありがとうございました」
「お、早いねぇ。どうだった?」
彼に貸していた本を受け取る。
「特殊設定ミステリとして、すげー面白かったですよ」
「それはよかった。続き、今度持ってくるよ」
「お願いします」
このシリーズは、あと5冊あるからね。
「あと、よかったら、どうぞ」
諏訪くんは、数枚重なったメモ帳の切れ端を差し出してきた。
「これは?」
受け取りつつ、私は尋ねる。
「さっきのやつの、感想文です」
「えっ!? あ、ありがとう! 凄く助かる!」
メモ用紙には、びっしりと文字が詰まっていた。好きな作品の、他人の新鮮な感想!
「もしかして、誕生日プレゼント?」
「まあ、一応」
「生まれてよかった!」
「そんなに喜ばれるとは」
諏訪くんは、少し呆れながらも、嬉しそうに笑った。
なんて、いい子なんだ…………。
「本当にありがとうね。さて、君の話を聞こうか」
デスクの前に座り、いつもの90度の位置で交わる私たち。
私は、ほんの少し背中を押すことしか出来ないけど、その君たちが、星にも手が届くことを願うよ。
私は立ち上がり、両腕を動かし、軽くストレッチをした。肩甲骨を意識して動かす。
デスクワークに肩こりは付き物。もっとも、私は、幼少の頃から肩こりに悩まされ続けている訳だが。インドア趣味だから、仕方ない。
「運動しないと早死にするよ」という母の小言は、いつも聞き流している。
運動してようが、死ぬ時は死ぬよ。なんて、口答えしたこともあったっけ。
あーあ。不老不死になりたいな。SFが好きだから、世界が滅ぶところが見たいし。
ホラーが好きだから、死なない化物みたいに噂にもなりたいし。
探偵ものが好きだから、実は生きてた被害者にもなりたいし。
そうそう、次のクライアントは、諏訪洸太郎くん。
彼は、定期的に、ここを訪れている。ちょっと前に隊員になったかと思えば、今や隊長だもんなぁ。時の流れを感じる。
予約時間。彼が入って来た時、うっすら消臭スプレーの香りがした。律儀な子だなぁ。
私は、気管支が弱く、煙草がダメである。匂いも好きじゃない。けれど、そんなに気を遣わなくてもいいのに。
「おはよう」
「おはようございます」
椅子にかけるように促し、緑茶とどら焼きを出す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
お互いにお茶を一口飲み、一息ついた。
「砂子さん、誕生日おめでとうございます」
「ありがとう、諏訪くん」
「それから、これ。ありがとうございました」
「お、早いねぇ。どうだった?」
彼に貸していた本を受け取る。
「特殊設定ミステリとして、すげー面白かったですよ」
「それはよかった。続き、今度持ってくるよ」
「お願いします」
このシリーズは、あと5冊あるからね。
「あと、よかったら、どうぞ」
諏訪くんは、数枚重なったメモ帳の切れ端を差し出してきた。
「これは?」
受け取りつつ、私は尋ねる。
「さっきのやつの、感想文です」
「えっ!? あ、ありがとう! 凄く助かる!」
メモ用紙には、びっしりと文字が詰まっていた。好きな作品の、他人の新鮮な感想!
「もしかして、誕生日プレゼント?」
「まあ、一応」
「生まれてよかった!」
「そんなに喜ばれるとは」
諏訪くんは、少し呆れながらも、嬉しそうに笑った。
なんて、いい子なんだ…………。
「本当にありがとうね。さて、君の話を聞こうか」
デスクの前に座り、いつもの90度の位置で交わる私たち。
私は、ほんの少し背中を押すことしか出来ないけど、その君たちが、星にも手が届くことを願うよ。