一頁のおまけ

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 好きな人がいた。
 その人は、現海砂子は死んだ。
 そんな運命、ゆるせないだろ。

「なあ、迅さん」
「なんだ?」
「あんた、選んだんだろ? 砂子さんが死ぬ未来を」
「それは…………」

 迅悠一は、俯いている。

「迅さんが選ばなかったから、死んだ。とも言えるか。なあ、あの人の命より大切なものってなんだ?」
「違うんだ。おれが、砂子さんを選ばなかったんじゃない。砂子さんが、おれを生かすことを選んだんだよ」
「へぇ。あの生き汚いろくでなしが?」
「…………」

 俺は、舌打ちした。

「君が生き残るべきだって、砂子さん、そう言ったんだ」
「だから?」
「だから、おれは…………」
「あの人を殺したのか……?!」
「ああ、そうだよ」

 拳を握り締めて、殴りたい衝動を抑える。

「もういい。そうやって、他人の命を天秤にかけてろ。神様みてーによ」

 捨て台詞を吐いて、迅さんに背を向けた。

◆◆◆

 運命を乗り換えなきゃ、あの人を救えない。
 砂子さんの遺品の日記帳を、俺は何とか借りた。
 そこには、あの人の死後のことも書いてある。予言書のような日記。
 運命を乗り換える呪文も綴られている。
 これで、砂子さんをこの世界に取り戻すんだ。
 そうして、俺は唱えた。
 瞬間。辺りは暗くなって、俺は、観客席の真ん中に座っていた。

「当真くん」
「砂子さん…………」

 舞台の中心。スポットライトが当たるところに、白衣を着た砂子さんがいる。

「どうして来ちゃうかなぁ?」
「そりゃ、俺の台詞だ。どうして行っちまったんだよ?」
「迅くんの代わりはいないじゃない」
「砂子さんの代わりもいない。俺と帰ろう、砂子さん」

 砂子さんは、悲しそうに笑う。

「当真くん、私……」
「頼むから」
「ダメだよ」

 子供を諭すように言われた。

「もう帰りなさい、当真くん」
「嫌だね。あんたの代わりに、俺が死ぬ」
「やめて。そんなこと」
「勝手に死んだ癖に」

 そして、俺は自分の命を差し出すことにする。
 ざまあみろ。

◆◆◆

 愛による死を選んだ者へのご褒美は、林檎だそうだ。

「当真くん、運命の果実を、ふたりで分けよう。そうすれば、ふたりで戻れるから」

 砂子さんが差し出した林檎を、半分にする。

「次に会う時は……まあいいか…………」

 段々、意識が消えていく。

「さよなら。またね」

 何か、夢を見ていた気がする。

「…………」

 朝。登校する。
 小学生が、本を読みながら歩いていた。
 すれ違い様に、少し足がぶつかる。

「わっ」
「悪り。大丈夫か?」
「だいじょうぶです。すいません」
「その本……どっかで…………」
「これは、わたしの日記です」

 日記に書かれた名前は、うつつみすなこ。
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