私という一頁の物語
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クライアントの二宮匡貴くんは、仏頂面で席に着いた。
さっさと終わらせたいと思っているんだろう。
君は、カウンセリングにも、私にも関心がないから。上の指示で、仕方なくカウンセリングルームへ来ただけ。
「二宮くん、何か不安や懸念事項はある?」
「ありません」
「それなら、よかった」
二宮くんは、マグカップを手に取り、紅茶を一口飲んだ。
「それ、どう? 江戸川乱歩の小説のイメージティーなんだけど」
「香りが甘いわりに、苦いですね」
「そっか」
あまり気に入らないらしい。
「試験で、どんな指揮をするの?」
「あなたがそれを聞いて、どうするんですか?」
「世間話だよ」
半分嘘。これも、君の心の様子を知るためなんだよ。
「……俺は、下の奴らを育成するいい機会だと考えています」
「なるほど」
後輩の成長を促す感じかな。でも、それ伝わるかな?
うーん。絵馬くんとは、若干禍根がありそうなんだよね。二宮くんは、気付いてる? 気付いてるよな。
「君には、そういう目的があるんだね」
「組織とは、そういうものでしょう?」
「そうだね。後進の育成を怠れば、組織は瓦解する」
でも、それは、20歳の君がやることかなぁ? 私が20歳の頃は、ほとんど引きこもりだったけど。
ボーダーって、大人が足りてないよなぁ。
ダメだ。このことを考えると、暗い気持ちになってしまう。
「あなたは、どうしてここにいるんですか?」
「城戸さんに頼まれたから」
「そうじゃなくて。何故、カウンセラーを続けているんですか?」
「……自分のためだよ」
少し言い澱んだが、真実を告げた。
「自分のため?」
「独りきりだった過去の自分を救わなきゃいけないんだ。私は、他人を助けることで、自分を助けてるんだよ」
「…………」
二宮くんは、無言のまま、紅茶を飲む。
しばらく沈黙が続いた。
「……砂子さん」
「ん?」
初めて名前を呼ばれた気がする。
「あなたは、カウンセラーなんてしない方がいいんじゃないですか?」
「…………」
落ち着け。お前は、冷静でいるのが得意だろ。
「私は、必要だから」
「それは、他人の都合ですよね。砂子さんがするべきことは、もっと他にあるんじゃないですか?」
「ここにいたい。それじゃ、ダメ?」
二宮くんが、溜め息をつく。
「あの馬鹿みたいなこと言わないでください…………」
長い沈黙が降りた。
私も、彼も、彼女のボーダーでの顛末を思い出している。
さっさと終わらせたいと思っているんだろう。
君は、カウンセリングにも、私にも関心がないから。上の指示で、仕方なくカウンセリングルームへ来ただけ。
「二宮くん、何か不安や懸念事項はある?」
「ありません」
「それなら、よかった」
二宮くんは、マグカップを手に取り、紅茶を一口飲んだ。
「それ、どう? 江戸川乱歩の小説のイメージティーなんだけど」
「香りが甘いわりに、苦いですね」
「そっか」
あまり気に入らないらしい。
「試験で、どんな指揮をするの?」
「あなたがそれを聞いて、どうするんですか?」
「世間話だよ」
半分嘘。これも、君の心の様子を知るためなんだよ。
「……俺は、下の奴らを育成するいい機会だと考えています」
「なるほど」
後輩の成長を促す感じかな。でも、それ伝わるかな?
うーん。絵馬くんとは、若干禍根がありそうなんだよね。二宮くんは、気付いてる? 気付いてるよな。
「君には、そういう目的があるんだね」
「組織とは、そういうものでしょう?」
「そうだね。後進の育成を怠れば、組織は瓦解する」
でも、それは、20歳の君がやることかなぁ? 私が20歳の頃は、ほとんど引きこもりだったけど。
ボーダーって、大人が足りてないよなぁ。
ダメだ。このことを考えると、暗い気持ちになってしまう。
「あなたは、どうしてここにいるんですか?」
「城戸さんに頼まれたから」
「そうじゃなくて。何故、カウンセラーを続けているんですか?」
「……自分のためだよ」
少し言い澱んだが、真実を告げた。
「自分のため?」
「独りきりだった過去の自分を救わなきゃいけないんだ。私は、他人を助けることで、自分を助けてるんだよ」
「…………」
二宮くんは、無言のまま、紅茶を飲む。
しばらく沈黙が続いた。
「……砂子さん」
「ん?」
初めて名前を呼ばれた気がする。
「あなたは、カウンセラーなんてしない方がいいんじゃないですか?」
「…………」
落ち着け。お前は、冷静でいるのが得意だろ。
「私は、必要だから」
「それは、他人の都合ですよね。砂子さんがするべきことは、もっと他にあるんじゃないですか?」
「ここにいたい。それじゃ、ダメ?」
二宮くんが、溜め息をつく。
「あの馬鹿みたいなこと言わないでください…………」
長い沈黙が降りた。
私も、彼も、彼女のボーダーでの顛末を思い出している。