私という一頁の物語
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
30回目の6月25日。
「おはよう。何か言うことは?」
「はよー。特にない」
弟は、寝癖のついた頭で、のんびりと返事をした。
彼は、人間が嫌いである。私も例外ではない。しかし、人類の中で一番好感度が高いのが、私。その好感度は、-500。本人が言っていたから、そうなんだろう。
人間が嫌いだけど、その文明は享受する。そんな、クズ。まあ、奴に仙人のようになれと言うのも酷だが。
私は、人間を物語にしてしまうクズだし。周りには真面目だと思われているが、その実、ちゃらんぽらんで、浮き草生活が性に合っていたような者だから。似た者同士かもしれない。
「じゃあ、いってくるよ」
「いってらっしゃい」
今日は、弟は休み。私は、仕事だ。
いつものように、ボーダー本部のカウンセリングルームへ向かう。
「はぁ」
6月は、毎年体調がよくない。今日も、低気圧で頭痛がするから、薬を飲んだ。
物語鑑賞も、趣味の文章を書くことも、捗らない。
でも、仕事はしますよ。仕事だからね。
「誰か、俺を救ってくれ……」
ひとりきりのカウンセリングルームで、ぽつりと、そんな台詞を吐いてしまった。
母からの呪いのメッセージが鬱陶しい。父からの祝いのメッセージもだ。
両方、テキトーに返事をしておく。
「うるせぇなぁ」
いけない、いけない。切り替えよう。
「私は、大丈夫」
白衣のポケットから、飴を取り出して、口に放り込む。ミルクの味。
さて、パソコンを立ち上げて、予約表の確認だ。結構、予定が詰まってるな。
最初のクライアントは、15分後にやって来た。
「おはよう」
「おはようございます」
月見蓮さんは、優雅に礼をし、椅子に座る。
「砂子さん、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
「よい一日になりますように」
「もう、いい日になったよ」
ふたりで、微笑み合った。
その後、緑茶とどら焼きを用意する。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
月見さんは、一瞬間を置いて、口を開いた。
「この前、太刀川くんがお世話になったみたいで」
「上映会のこと? 別に世話してないよ」
「映画の内容はよく分からなかったけど、楽しかったみたいですよ」
「あれで難しかったら、ノーランとか見せられないぞ……」
あの時、静かだったの、餅を食ってたからじゃないだろうな。
「太刀川くん、私が厳しいって言うんです」
「うん」
「だから、砂子さんに飴担当になっていただけたらな、と」
「うん?」
澄ました顔で、恐ろしいことを言われた気がする。
「上手く、調教師として組みませんか?」
「えーと」
待って。幼馴染みであり、調教師だったの?
「考えとく」
なんか、また保留案件がきたな。
「よろしくお願いします」
「月見さんは、その相談をしに?」
「はい。あとは、お祝いですね」
「そうなんだ」
お祝いは、素直にありがたいが。
「月見さんがひとりで、飴と鞭を使い分ければいいんじゃない?」
「そうしているつもりなんですけれど、スパルタだって騒がれるので」
「あー。言ってるね」
末恐ろしい19歳だ。
私は曖昧に笑って、彼女は、「ふふ」と美しく笑った。
「おはよう。何か言うことは?」
「はよー。特にない」
弟は、寝癖のついた頭で、のんびりと返事をした。
彼は、人間が嫌いである。私も例外ではない。しかし、人類の中で一番好感度が高いのが、私。その好感度は、-500。本人が言っていたから、そうなんだろう。
人間が嫌いだけど、その文明は享受する。そんな、クズ。まあ、奴に仙人のようになれと言うのも酷だが。
私は、人間を物語にしてしまうクズだし。周りには真面目だと思われているが、その実、ちゃらんぽらんで、浮き草生活が性に合っていたような者だから。似た者同士かもしれない。
「じゃあ、いってくるよ」
「いってらっしゃい」
今日は、弟は休み。私は、仕事だ。
いつものように、ボーダー本部のカウンセリングルームへ向かう。
「はぁ」
6月は、毎年体調がよくない。今日も、低気圧で頭痛がするから、薬を飲んだ。
物語鑑賞も、趣味の文章を書くことも、捗らない。
でも、仕事はしますよ。仕事だからね。
「誰か、俺を救ってくれ……」
ひとりきりのカウンセリングルームで、ぽつりと、そんな台詞を吐いてしまった。
母からの呪いのメッセージが鬱陶しい。父からの祝いのメッセージもだ。
両方、テキトーに返事をしておく。
「うるせぇなぁ」
いけない、いけない。切り替えよう。
「私は、大丈夫」
白衣のポケットから、飴を取り出して、口に放り込む。ミルクの味。
さて、パソコンを立ち上げて、予約表の確認だ。結構、予定が詰まってるな。
最初のクライアントは、15分後にやって来た。
「おはよう」
「おはようございます」
月見蓮さんは、優雅に礼をし、椅子に座る。
「砂子さん、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
「よい一日になりますように」
「もう、いい日になったよ」
ふたりで、微笑み合った。
その後、緑茶とどら焼きを用意する。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
月見さんは、一瞬間を置いて、口を開いた。
「この前、太刀川くんがお世話になったみたいで」
「上映会のこと? 別に世話してないよ」
「映画の内容はよく分からなかったけど、楽しかったみたいですよ」
「あれで難しかったら、ノーランとか見せられないぞ……」
あの時、静かだったの、餅を食ってたからじゃないだろうな。
「太刀川くん、私が厳しいって言うんです」
「うん」
「だから、砂子さんに飴担当になっていただけたらな、と」
「うん?」
澄ました顔で、恐ろしいことを言われた気がする。
「上手く、調教師として組みませんか?」
「えーと」
待って。幼馴染みであり、調教師だったの?
「考えとく」
なんか、また保留案件がきたな。
「よろしくお願いします」
「月見さんは、その相談をしに?」
「はい。あとは、お祝いですね」
「そうなんだ」
お祝いは、素直にありがたいが。
「月見さんがひとりで、飴と鞭を使い分ければいいんじゃない?」
「そうしているつもりなんですけれど、スパルタだって騒がれるので」
「あー。言ってるね」
末恐ろしい19歳だ。
私は曖昧に笑って、彼女は、「ふふ」と美しく笑った。