一頁のおまけ
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片想いしていた現海砂子が結婚した。
式は挙げないらしい。カウンセリングルームで話す彼女の左手には、結婚指輪が光っている。
「なんで結婚したんですか?」
「体験が好きだからね。話が通じて、性行為と子供がいらない成人男性なら、誰でもよかった。あ、あと、別居OKな人」
成人男性。少しだけ足りていない。
「私は、人生の親友が欲しかったんだよ」
「そうですか」
指輪を取り上げて、捨ててしまいたい。そんなことしても、意味ないのに。
「ごめん、お菓子出すの忘れてた。持って来る」
砂子さんが取って来たお菓子は————。
◆◆◆
あれから、月日は流れて、俺は成人した。
「砂子さん」
「ん?」
カウンセリングルームで、俺は告げる。
「旦那と別れてくれねーか?」
「はい?」
「俺の方が、あんたのこと幸せに出来る」
「どうして?」
きょとんとして、砂子さんは疑問を口にした。
「砂子さんは、旦那の前で泣けるのか?」
「うん」
「笑ったり、怒ったりも?」
「出来るよ」
「その男は、あんたを一番好きなのか?」
「そうだと思う」
ゆるせない。ぽっと出の奴が、砂子さんの真実に触れているかもしれないことが。
「当真くん、私のこと好きなの?」
「ああ」
「そう。そうか。でも、私は釣り合わないから。君は、もっと素敵な人を見付けて」
砂子さんは、困ったように笑う。
勝手なこと言うな。いねーよ、そんなの。
「私は、道連れを見付けた。君の手を取ることは出来ない」
俺を真っ直ぐ見る目。
追い討ちをされた。叩きのめされた。打ち砕かれた。
「私、ろくでもないからさ。当真くんを付き合わせちゃ悪いよ」
知ってるよ、ろくでもないことくらい。知ってて好きなんだよ。
あんたを見付けたのは、俺なのに。
ああ、なんだっけな。砂子さんから聞いた物語。
“一世一代の恋のお相手も行き違ったまま”
これで、おしまい?
人は運命の糸を紡げない?
「俺は、あんたとなら、どこへでも行く」
「でも、その席はもう空いてないよ」
砂子さんは、白々しいことは言わない。残酷な人。そんなつもりはないだろうから、余計に酷かった。
6月30日が来る度に、俺は、顔も知らない男を呪うんだろう。
きっと、生涯赦さない。
それは、自分自身か。知らない男か。砂子さんか。その全部か。分からないけど。
もしも、時間を戻せたら。あんたを拐いに行くのにな。
式は挙げないらしい。カウンセリングルームで話す彼女の左手には、結婚指輪が光っている。
「なんで結婚したんですか?」
「体験が好きだからね。話が通じて、性行為と子供がいらない成人男性なら、誰でもよかった。あ、あと、別居OKな人」
成人男性。少しだけ足りていない。
「私は、人生の親友が欲しかったんだよ」
「そうですか」
指輪を取り上げて、捨ててしまいたい。そんなことしても、意味ないのに。
「ごめん、お菓子出すの忘れてた。持って来る」
砂子さんが取って来たお菓子は————。
◆◆◆
あれから、月日は流れて、俺は成人した。
「砂子さん」
「ん?」
カウンセリングルームで、俺は告げる。
「旦那と別れてくれねーか?」
「はい?」
「俺の方が、あんたのこと幸せに出来る」
「どうして?」
きょとんとして、砂子さんは疑問を口にした。
「砂子さんは、旦那の前で泣けるのか?」
「うん」
「笑ったり、怒ったりも?」
「出来るよ」
「その男は、あんたを一番好きなのか?」
「そうだと思う」
ゆるせない。ぽっと出の奴が、砂子さんの真実に触れているかもしれないことが。
「当真くん、私のこと好きなの?」
「ああ」
「そう。そうか。でも、私は釣り合わないから。君は、もっと素敵な人を見付けて」
砂子さんは、困ったように笑う。
勝手なこと言うな。いねーよ、そんなの。
「私は、道連れを見付けた。君の手を取ることは出来ない」
俺を真っ直ぐ見る目。
追い討ちをされた。叩きのめされた。打ち砕かれた。
「私、ろくでもないからさ。当真くんを付き合わせちゃ悪いよ」
知ってるよ、ろくでもないことくらい。知ってて好きなんだよ。
あんたを見付けたのは、俺なのに。
ああ、なんだっけな。砂子さんから聞いた物語。
“一世一代の恋のお相手も行き違ったまま”
これで、おしまい?
人は運命の糸を紡げない?
「俺は、あんたとなら、どこへでも行く」
「でも、その席はもう空いてないよ」
砂子さんは、白々しいことは言わない。残酷な人。そんなつもりはないだろうから、余計に酷かった。
6月30日が来る度に、俺は、顔も知らない男を呪うんだろう。
きっと、生涯赦さない。
それは、自分自身か。知らない男か。砂子さんか。その全部か。分からないけど。
もしも、時間を戻せたら。あんたを拐いに行くのにな。