一頁のおまけ
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砂子さんは、100年の眠りについた。
精神が蝕まれ過ぎたから。
棺のような装置に入れられ、治るまでは目覚めない。
最後には、言葉を交わすことさえ出来なくなってた。虚ろな目をした砂子さんに、「おやすみ」と声をかけたけど、返事はなかったな。
砂子さんが眠ってから、俺は、あることを始めた。
いつか、目覚めた時に届けばいい。
◆◆◆
コールドスリープから目覚めると、そこに知り合いは誰もいなかった。みんな、死んだから。
冷静な私が、涙を流させなかった。弟以外が死んだのは、どうでもいい。ボーダーの仲間がいないのは悲しいが、嘆いてもいられない。
「現海さん。明日から、リハビリをしていただきます」
「はい」
それが私の役目なら、仕方ない。まずは、日常生活が送れるようにならないと。
その後は、またカウンセラーをやるんだろう。
「現海さん。あなた宛のものです」
「これは?」
古びた箱。中身は、何だろうか?
「当真さんからです」
「当真……くん…………?」
医療スタッフが用意した個室にひとりになってから、私は、それを開けた。
中には、日記がぎっしり詰まっていて。それは全て、当真勇くんが綴ったもの。私が眠ってから、彼が死ぬ直前までの記録。
“おはよう、砂子さん。よく眠れたか?”
そんな一文から始まった。
他愛ない日常や、ボーダーの任務のことや、学校のことなどが書いてある。
私は、自由時間に少しずつ、彼の日記を読んだ。
“砂子さんの頭ん中の俺は、ずっと子供なんだろうけど、もう大人だ”
当真くんの成人の日に辿り着く。
「成人、おめでとう……」と、小さく呟いた。
さらに読み進める。
“俺は、あんたのことが好きだよ。きっと、この先も”
「…………」
ページをめくる手が止まってしまった。
複雑な感情を抱いて、この日は、そのまま眠る。
退院した頃には、当真くんは、私の年齢に追い付いていた。
“同じ歳になったな。砂子って呼んでいいか? 冗談だよ”
私は、カウンセラーとしての仕事を再開する。
暇を見付けては、日記を読んだ。
“砂子さんは、紙の本が好きだろ? だから、こうやって残した。少しは喜んでほしいな”
この日記は、間違いなく私の支えになっているし、ありがたかった。それに、これは、ただの日記じゃない。全ての文章が、私に向けられていて、もう会えない君から届く愛情だった。
「当真くんが思ってるよりも、私は、君に感謝してるよ」
最後の一冊は、空白のページが多い。使い切ることのなかった日記は、なんだか寂しい。
“さよなら。あの世で待ってる”
“当真勇より”
日記を全て読み終えた私は、泣いていた。
唇を噛み締めて、涙を流す。
あの世じゃ会えないよ。私は、地獄行きなんだから。
ひとしきり泣いた後、私は、ボールペンを取った。
今日の日付を最後の日記の続きに書く。
“これは、当真くんの日記を読んだ後から、死ぬまでの、現海砂子の日記”
“私は、君のことが好きだよ”
精神が蝕まれ過ぎたから。
棺のような装置に入れられ、治るまでは目覚めない。
最後には、言葉を交わすことさえ出来なくなってた。虚ろな目をした砂子さんに、「おやすみ」と声をかけたけど、返事はなかったな。
砂子さんが眠ってから、俺は、あることを始めた。
いつか、目覚めた時に届けばいい。
◆◆◆
コールドスリープから目覚めると、そこに知り合いは誰もいなかった。みんな、死んだから。
冷静な私が、涙を流させなかった。弟以外が死んだのは、どうでもいい。ボーダーの仲間がいないのは悲しいが、嘆いてもいられない。
「現海さん。明日から、リハビリをしていただきます」
「はい」
それが私の役目なら、仕方ない。まずは、日常生活が送れるようにならないと。
その後は、またカウンセラーをやるんだろう。
「現海さん。あなた宛のものです」
「これは?」
古びた箱。中身は、何だろうか?
「当真さんからです」
「当真……くん…………?」
医療スタッフが用意した個室にひとりになってから、私は、それを開けた。
中には、日記がぎっしり詰まっていて。それは全て、当真勇くんが綴ったもの。私が眠ってから、彼が死ぬ直前までの記録。
“おはよう、砂子さん。よく眠れたか?”
そんな一文から始まった。
他愛ない日常や、ボーダーの任務のことや、学校のことなどが書いてある。
私は、自由時間に少しずつ、彼の日記を読んだ。
“砂子さんの頭ん中の俺は、ずっと子供なんだろうけど、もう大人だ”
当真くんの成人の日に辿り着く。
「成人、おめでとう……」と、小さく呟いた。
さらに読み進める。
“俺は、あんたのことが好きだよ。きっと、この先も”
「…………」
ページをめくる手が止まってしまった。
複雑な感情を抱いて、この日は、そのまま眠る。
退院した頃には、当真くんは、私の年齢に追い付いていた。
“同じ歳になったな。砂子って呼んでいいか? 冗談だよ”
私は、カウンセラーとしての仕事を再開する。
暇を見付けては、日記を読んだ。
“砂子さんは、紙の本が好きだろ? だから、こうやって残した。少しは喜んでほしいな”
この日記は、間違いなく私の支えになっているし、ありがたかった。それに、これは、ただの日記じゃない。全ての文章が、私に向けられていて、もう会えない君から届く愛情だった。
「当真くんが思ってるよりも、私は、君に感謝してるよ」
最後の一冊は、空白のページが多い。使い切ることのなかった日記は、なんだか寂しい。
“さよなら。あの世で待ってる”
“当真勇より”
日記を全て読み終えた私は、泣いていた。
唇を噛み締めて、涙を流す。
あの世じゃ会えないよ。私は、地獄行きなんだから。
ひとしきり泣いた後、私は、ボールペンを取った。
今日の日付を最後の日記の続きに書く。
“これは、当真くんの日記を読んだ後から、死ぬまでの、現海砂子の日記”
“私は、君のことが好きだよ”