一頁のおまけ
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ここから出たいの。だから、誰か連れ出して。
誰かって、誰? いないよ、そんな人。
「×××××様の嫁になるのは、名誉なことなのよ」
「行き遅れには、願ってもないことだろう」
両親は、私にそう言った。
私は、明日、湖に沈められる。この土地の神様に嫁ぐために。
それは、死ぬということだ。
嫌だ。私は、生きたい。誰に迷惑かけてでも。
私の部屋には、白無垢がかけられて置いてある。こんなもの、捨ててしまいたい。
どこか遠くへ行きたくて。村の入り口まで、歩いて行く。あと、一歩。一歩踏み出せば、村の外。
「あんた、この村の人?」
「はい?」
振り返ると、背の高い男子がいた。
「俺は、当真勇。夏休み中だから、ちょっと遠出してみた」
「私は、現海砂子。ここで生まれて、ここで死ぬ者だよ」
「そりゃ、あんたの望みか? なんか嫌そうだな」
「嫌だよ。こんなところ、滅べばいい」
よそ者の彼には、本音が言える。生まれて初めて、私は自分の気持ちを口にした。
「じゃあ、滅ぼしちまえよ」
「……簡単に言うね」
「簡単だからな」
そうか。考えたこともなかったけど、ご神体を奉る社に火を放てばいいのかもしれない。
「ねぇ、ここを出るの手伝ってくれないかな?」
「いいぜ」
私と当真くんは、灯油とライターを持って、社に向かう。
ふたりで、灯油を撒いた。
「くたばれ、全員」
私は、ライターで火を着ける。木造の社は、すぐに炎に包まれた。
「逃げよう、砂子さん」
「うん」
用意していたリュックを背負い、私たちは走る。
そして、日に二本しかないバスに駆け込み、村から遠ざかっていく。
「はぁ……はぁ…………」
「で、どうする?」
「君ん家に泊めて」
「はいよ。まあ、手を貸しちまったからな」
当真くんは、楽しそうに答えた。
「私、どうやって借りを返したらいい?」
「いらねーよ」
「でも…………」
「じゃあ、約束してくれ。砂子さんは、砂子さんの人生を生きるって」
「私の人生…………」
そんなもの、今まではなかったな。両親の言いなりだったから。ゆりかごから墓場まで、全部決められていた。
宗教やジェンダーロールなどの押し付け。衣食住は与えられていたが、自由なんてなかった。
「私が望んでた誰かは、君だったんだね」
当真くんの手を取り、両手で握り締める。
「泣いてんのか?」
私は、顔を上げられない。当真くんは、ただ、私の隣にいてくれた。
誰かって、誰? いないよ、そんな人。
「×××××様の嫁になるのは、名誉なことなのよ」
「行き遅れには、願ってもないことだろう」
両親は、私にそう言った。
私は、明日、湖に沈められる。この土地の神様に嫁ぐために。
それは、死ぬということだ。
嫌だ。私は、生きたい。誰に迷惑かけてでも。
私の部屋には、白無垢がかけられて置いてある。こんなもの、捨ててしまいたい。
どこか遠くへ行きたくて。村の入り口まで、歩いて行く。あと、一歩。一歩踏み出せば、村の外。
「あんた、この村の人?」
「はい?」
振り返ると、背の高い男子がいた。
「俺は、当真勇。夏休み中だから、ちょっと遠出してみた」
「私は、現海砂子。ここで生まれて、ここで死ぬ者だよ」
「そりゃ、あんたの望みか? なんか嫌そうだな」
「嫌だよ。こんなところ、滅べばいい」
よそ者の彼には、本音が言える。生まれて初めて、私は自分の気持ちを口にした。
「じゃあ、滅ぼしちまえよ」
「……簡単に言うね」
「簡単だからな」
そうか。考えたこともなかったけど、ご神体を奉る社に火を放てばいいのかもしれない。
「ねぇ、ここを出るの手伝ってくれないかな?」
「いいぜ」
私と当真くんは、灯油とライターを持って、社に向かう。
ふたりで、灯油を撒いた。
「くたばれ、全員」
私は、ライターで火を着ける。木造の社は、すぐに炎に包まれた。
「逃げよう、砂子さん」
「うん」
用意していたリュックを背負い、私たちは走る。
そして、日に二本しかないバスに駆け込み、村から遠ざかっていく。
「はぁ……はぁ…………」
「で、どうする?」
「君ん家に泊めて」
「はいよ。まあ、手を貸しちまったからな」
当真くんは、楽しそうに答えた。
「私、どうやって借りを返したらいい?」
「いらねーよ」
「でも…………」
「じゃあ、約束してくれ。砂子さんは、砂子さんの人生を生きるって」
「私の人生…………」
そんなもの、今まではなかったな。両親の言いなりだったから。ゆりかごから墓場まで、全部決められていた。
宗教やジェンダーロールなどの押し付け。衣食住は与えられていたが、自由なんてなかった。
「私が望んでた誰かは、君だったんだね」
当真くんの手を取り、両手で握り締める。
「泣いてんのか?」
私は、顔を上げられない。当真くんは、ただ、私の隣にいてくれた。