一頁のおまけ
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せっかくの休日だから、行ったことのない店に来てみた。
「いらっしゃいませ」
「どーも」
胡散臭い店主の男が、俺を見る。
分かってるって、ガキが買えるようなもんじゃねーってことは。
観用少女は、美しくて、高級品で、維持費もバカにならない。
店に並ぶ綺麗な少女たちは、みんな、目を閉じて静かに椅子に座っている。
そんな中で、異質なものが混ざっていた。それに、目を奪われる。
「こいつは…………」
それは、パチリと目を開いた。焦げ茶色の瞳が俺を見つめる。
「おや、それが目を開くとは。店の前に捨てられていた、観用少女の成れの果てですが」
「…………」
元少女。こいつは、女だ。
漆黒の長い髪。無機質だが、薄く笑みを浮かべている。白い肌。星空みたいなドレスを着ている。
「どうして、こんなことに?」
「おそらく、ミルクと砂糖菓子以外のものを与えられてしまったのでしょう」
店主は、困り顔で言った。
「名前は?」
「砂子と呼ばれていたようです」
欲しい。どうしようもなく、欲しい。
「いくらですか?」
「お代は結構です。処分に困っていたものですから。彼女も、あなたが気になっているようですし」
店主の言葉に甘えて、俺は、砂子を連れて帰った。
親には驚かれたが、大金をつぎ込んだりはしてないし、なんとか説得する。
その日から、俺の部屋には、砂子がいるようになった。
砂子は、なんでも食べたがる。本来なら、日に三度のミルクと、週に一度の砂糖菓子で済むのに。ピザもラーメンもプリンもケーキも食べた。
この生きた人形は、チョコレートが好きらしい。与えると、笑顔を見せた。
愛情をやることも大切だと聞くが、俺がそれをやれてるかは、よく分からない。
愛情を充分にもらえなかったプランツ・ドールは、枯れてしまう。砂子は、枯れてないから大丈夫なんだろう。
「美味いか?」
「………!」
砂子は、チョコレートを食べながら頷いた。
食べ終えた後、砂子の口を布巾で拭ってやる。
そして、砂子は歩いて、定位置の椅子に戻った。椅子は、店主がおまけでくれた物で、黒檀で出来ている。
「愛してる」と、頬に片手を添えて言った。
砂子は、焦げ茶色の目を細めて笑う。
まさか、俺が人形に恋をすることになるとは。
「砂子は、俺のこと好きか?」
「…………」
答えはない。別に構わなかった。
季節は、過ぎていく。
俺は、大人になった。砂子は、何も変わらないままだ。
ある日。
「砂子」と、名前を呼んだ時。
彼女は、椅子から立ち上がり、俺を抱き締めた。
そして、落ち着いた低めの声で囁く。
「愛してる…………」
「砂子……?」
言葉を覚えたのか。
「……愛してる」
繰り返し、「愛してる」と言う砂子。
「ああ、俺も愛してるよ」
それが、ただの俺の真似に過ぎなくても嬉しかった。
抱き締め返したら、ひまわりの香りがする。
俺を見上げる砂子の頬に、涙を落としてしまった。
「いらっしゃいませ」
「どーも」
胡散臭い店主の男が、俺を見る。
分かってるって、ガキが買えるようなもんじゃねーってことは。
観用少女は、美しくて、高級品で、維持費もバカにならない。
店に並ぶ綺麗な少女たちは、みんな、目を閉じて静かに椅子に座っている。
そんな中で、異質なものが混ざっていた。それに、目を奪われる。
「こいつは…………」
それは、パチリと目を開いた。焦げ茶色の瞳が俺を見つめる。
「おや、それが目を開くとは。店の前に捨てられていた、観用少女の成れの果てですが」
「…………」
元少女。こいつは、女だ。
漆黒の長い髪。無機質だが、薄く笑みを浮かべている。白い肌。星空みたいなドレスを着ている。
「どうして、こんなことに?」
「おそらく、ミルクと砂糖菓子以外のものを与えられてしまったのでしょう」
店主は、困り顔で言った。
「名前は?」
「砂子と呼ばれていたようです」
欲しい。どうしようもなく、欲しい。
「いくらですか?」
「お代は結構です。処分に困っていたものですから。彼女も、あなたが気になっているようですし」
店主の言葉に甘えて、俺は、砂子を連れて帰った。
親には驚かれたが、大金をつぎ込んだりはしてないし、なんとか説得する。
その日から、俺の部屋には、砂子がいるようになった。
砂子は、なんでも食べたがる。本来なら、日に三度のミルクと、週に一度の砂糖菓子で済むのに。ピザもラーメンもプリンもケーキも食べた。
この生きた人形は、チョコレートが好きらしい。与えると、笑顔を見せた。
愛情をやることも大切だと聞くが、俺がそれをやれてるかは、よく分からない。
愛情を充分にもらえなかったプランツ・ドールは、枯れてしまう。砂子は、枯れてないから大丈夫なんだろう。
「美味いか?」
「………!」
砂子は、チョコレートを食べながら頷いた。
食べ終えた後、砂子の口を布巾で拭ってやる。
そして、砂子は歩いて、定位置の椅子に戻った。椅子は、店主がおまけでくれた物で、黒檀で出来ている。
「愛してる」と、頬に片手を添えて言った。
砂子は、焦げ茶色の目を細めて笑う。
まさか、俺が人形に恋をすることになるとは。
「砂子は、俺のこと好きか?」
「…………」
答えはない。別に構わなかった。
季節は、過ぎていく。
俺は、大人になった。砂子は、何も変わらないままだ。
ある日。
「砂子」と、名前を呼んだ時。
彼女は、椅子から立ち上がり、俺を抱き締めた。
そして、落ち着いた低めの声で囁く。
「愛してる…………」
「砂子……?」
言葉を覚えたのか。
「……愛してる」
繰り返し、「愛してる」と言う砂子。
「ああ、俺も愛してるよ」
それが、ただの俺の真似に過ぎなくても嬉しかった。
抱き締め返したら、ひまわりの香りがする。
俺を見上げる砂子の頬に、涙を落としてしまった。