一頁のおまけ
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未来が見えた。それは、少し意外で、嬉しいものだったけど。選んでもいいんだろうか?
「砂子さん」
「うん?」
「おれと死んでくれませんか?」
「…………」
彼女は、無表情のままで紅茶を飲んだ。
「いいよ。海でなら」
「本当にいいんですか?」
「うん」
予知通りの答え。こんなことは、間違ってるはずなのに、どうしようもなく惹かれてしまう。
「死ぬなら、海がいい。私は、現海だから」
「ロマンチストですね」
「そうかもね」
その後。おれと砂子さんは、全てを放り出して、海を目指した。
冬の海は、暗い色をしている。海風は冷たい。
「あんまり青くないねぇ」
砂子さんは、苦笑した。
「私、青色が好きなんだ。青い薔薇の花言葉、知ってる?」
「いえ」
「不可能っていうんだ」
「不可能…………」
急に、どうしてそんなことを言うんだろう?
「私には、不可能だったんだよ。誰かを救い続けるなんて。荷が重過ぎた」
砂子さんに手を引かれて、海の中を進む。
「君も、そう。ずっと“正解”を引き続けるなんて、不可能だったんだ」
「おれは……そうですね。そうだと思います…………」
ふたりで、海を歩いて行った。波音が、なんだか物悲しい。
どんどん進んで、海水に腰まで浸かる。
「最期くらい、泣いてもいいんじゃない?」
不意に、砂子さんがそう言った。自分に言っているような、おれに言っているような。どちらともつかない。
「ねぇ、迅くん」
こっちを向いて、砂子さんは微笑む。その表情を見て、おれは母親のことを思い出した。
「……大切な人、みんな助けたかったなぁ」
そうしたら、おれも救われたのに。
涙は、静かに流れる。
砂子さんが、優しく抱き締めてくれた。おれより小さな人なのに、全てを包み込むように。
「もう終わりにしよう」と、囁かれる。
「うん」
母に手を引かれる子供のように、おれは進んだ。
結局、砂子さんは泣かない。誰か、あなたを助けてくれたらよかったな。あなたの未来を潰さない誰かが。
「迅くん。君のせいじゃないから」
「…………」
砂子さんは、人の心が分からないと言うけど、たまに、おれの心を読んだみたいなことを言う。
「君が、一緒に死んでくれるみたいだから、乗っただけ。これは、私の選択」
でもね、砂子さん。おれが「一緒に死んで」と言わなければ、あなたは死ななかったんだよ。おれは、たくさんの人から、あなたを奪った。
「悪いのは、私の方。君を止めない私が悪いんだ」
「それなら、共犯ってことにしましょう」
「はは。君が、それでいいなら」
「はい」
夕暮れ時の曇天が、おれたちを見下ろしている。
最後に青空を綺麗だと思ったのは、いつだっけ? 夏に海に来た時?
なんでもない冬の日。おれと砂子さんは、死ぬことにした。
「砂子さん」
「うん?」
「おれと死んでくれませんか?」
「…………」
彼女は、無表情のままで紅茶を飲んだ。
「いいよ。海でなら」
「本当にいいんですか?」
「うん」
予知通りの答え。こんなことは、間違ってるはずなのに、どうしようもなく惹かれてしまう。
「死ぬなら、海がいい。私は、現海だから」
「ロマンチストですね」
「そうかもね」
その後。おれと砂子さんは、全てを放り出して、海を目指した。
冬の海は、暗い色をしている。海風は冷たい。
「あんまり青くないねぇ」
砂子さんは、苦笑した。
「私、青色が好きなんだ。青い薔薇の花言葉、知ってる?」
「いえ」
「不可能っていうんだ」
「不可能…………」
急に、どうしてそんなことを言うんだろう?
「私には、不可能だったんだよ。誰かを救い続けるなんて。荷が重過ぎた」
砂子さんに手を引かれて、海の中を進む。
「君も、そう。ずっと“正解”を引き続けるなんて、不可能だったんだ」
「おれは……そうですね。そうだと思います…………」
ふたりで、海を歩いて行った。波音が、なんだか物悲しい。
どんどん進んで、海水に腰まで浸かる。
「最期くらい、泣いてもいいんじゃない?」
不意に、砂子さんがそう言った。自分に言っているような、おれに言っているような。どちらともつかない。
「ねぇ、迅くん」
こっちを向いて、砂子さんは微笑む。その表情を見て、おれは母親のことを思い出した。
「……大切な人、みんな助けたかったなぁ」
そうしたら、おれも救われたのに。
涙は、静かに流れる。
砂子さんが、優しく抱き締めてくれた。おれより小さな人なのに、全てを包み込むように。
「もう終わりにしよう」と、囁かれる。
「うん」
母に手を引かれる子供のように、おれは進んだ。
結局、砂子さんは泣かない。誰か、あなたを助けてくれたらよかったな。あなたの未来を潰さない誰かが。
「迅くん。君のせいじゃないから」
「…………」
砂子さんは、人の心が分からないと言うけど、たまに、おれの心を読んだみたいなことを言う。
「君が、一緒に死んでくれるみたいだから、乗っただけ。これは、私の選択」
でもね、砂子さん。おれが「一緒に死んで」と言わなければ、あなたは死ななかったんだよ。おれは、たくさんの人から、あなたを奪った。
「悪いのは、私の方。君を止めない私が悪いんだ」
「それなら、共犯ってことにしましょう」
「はは。君が、それでいいなら」
「はい」
夕暮れ時の曇天が、おれたちを見下ろしている。
最後に青空を綺麗だと思ったのは、いつだっけ? 夏に海に来た時?
なんでもない冬の日。おれと砂子さんは、死ぬことにした。