助けを呼んでほしい。出来れば、それは俺がいい。

「ナマエ」
「なに？」
「……愛してる」
「オレも、愛してる」

　ソファーに座ってるナマエの膝に乗り、抱き締めた。すぐに抱き締め返されて、頬にキスを落とされる。ほんのりバニラの香りがした。
　ナマエの瞳が、「珍しいな」と言ってるように見える。
　俺だって、甘えたい時はあるんだよ。

「なんか困ってたりしねーか？」
「いや。困ってんのは、洸太郎じゃねぇの？」
「俺は…………」

　ミョウジナマエは、もう、「助けて」が言えるから。太刀川とか、風間とかレイジとか雷蔵とかにも頼れる。

「おまえの一番になりたい」
「一番、ですけど？」

　ナマエが首を傾げた。

「そうなんだけどよ」

　おまえは、世界で一番俺が特別だと言ってたよな。ちゃんと覚えてる。

「ナマエが困った時、助けてほしい時。そういう時に一番に俺に言ってほしくて」
「言ってるじゃん…………」
「この前、太刀川に先に言ったろ」
「あー。アレは、おまえが任務中だったから」
「分かってんだよ、頭では。仕方ないことだって。常におまえの隣にはいられねーって」

　なんだか、俺は今になって、おまえに恋をしているみたいだ。恋をするより先に、愛していたから。
　ナマエは、俺の頭を撫でた。

「可愛い～。洸太郎が、我が儘言うの初めて聞いた」

　我が儘。その通りだ。
　ナマエは、笑顔で、俺の頬に手を添える。

「キスしていい？」
「いい」

　さっきまで一緒に煙草を吸っていたから、甘く感じた。

「は…………」

　舌を絡められて、息が漏れる。昨夜のことを思い出して、腹の底が疼いた。
　丁寧に愛撫する指先とか、肌の上の唇の感触とか、ナカに入れられた熱の塊とか。

「すき……すきだ…………」
「ん……オレも………」

　俺を見つめるナマエの目が、段々情欲を孕んだものに変わっていって、ぞくぞくした。

「ナマエ、俺…………」
「止めなくていいの？」
「……いい」

　ナマエの手が、俺の服に伸びたその時。
　ピンポーン。と、軽いチャイムの音が鳴った。

「えー。誰だよ」

　俺から離れて、外を映した画面を覗く。

「風間くんと木崎くんと寺島くんでした～」
「タイミング悪りぃ奴ら……」
「荷物多いから、オレん家で酒盛りする気で来てるわ、たぶん」

　ナマエが、玄関のドアを開けに行った。
　来る前に連絡しろよ。
　仕方なく、窓を開けて熱を冷ます。
　一気に人口密度が上がったミョウジ家を眺めた。ナマエが嬉しそうだから、それでいいけどよ。
　今日は、朝まで飲み明かすコースだろうな。
　その後。ナマエはソフトドリンク、俺たちはビールで乾杯をして、賑やかに過ごした。
　深夜、『続きは、また今度』と、ナマエからメッセージが届いて、俺は酒とは別の酩酊を感じる。
　たまには独占させてくれなきゃ嫌だ。
　おまえは、世界で一番特別だから。