煙シリーズ
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ミョウジ家は、5人家族である。
庭の手入れが好きな祖父母と、料理が趣味の両親と、寡黙な一人息子。
息子は、ミョウジナマエという。高校二年生で、大抵は保健室登校をしている。
彼の父母は、教育者だ。哲学科教授の父と、音楽教師の母。
ふたりは、今日も仲良く、朝から凝った料理を作っている。
「料理は哲学」という主張の父と、「料理は音楽」という主張の母。ふたりとも議論好きで、楽しげに会話をしながら、順調に調理を進めていった。
「ナマエ、ご飯出来たわよ」
「今日も、最高に美味しいぞ」
ふたりに呼ばれ、ナマエは自分の席に着く。
先に座っていた祖父母に「おはよう」を言い、「いただきます」をした。
たくさんの種類の野菜が使われたサラダと、エッグベネディクト風オープンサンドと、さつまいもヨーグルトケーキと、ホットミルク。
どれもが綺麗で、美味しい。食べると幸せに包まれるようだ。
「ご馳走さま」
「美味しかった?」
「うん」
母にそう答え、ナマエは、登校の準備をする。
しかし。急に学校へ行くという意識がしぼんでしまった。
「今日、学校行けない……」
俯き、両親に告げる。
「そう。まあ、そういう日もあるわよね」
「仕方ない。家で、好きなことを学べばいい」
「うん」
父の書いた哲学書を読もう。ナマエは、そう決めた。
そして、祖父母と一緒に両親を送り出す。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
「いってきます。何か食べたいものがあったら、連絡するんだぞ、ナマエ」
「うん」
軽く手を振り、ふたりを見送った。
天気予報は雨だったので、父母は傘を持って、それぞれの学舎へ向かう。
それから。その日、恐ろしいことが起きた。後に、第一次近界民侵攻と呼ばれるもの。
ナマエは、両親の無事を祈った。だが、ふたりは帰って来ない。
お願いだから、「お帰り」を言わせて。
そんな願いも虚しく、彼の父母は行方不明者リストに名前が載った。
雨が止んでも、ふたりは戻らない。
生死不明の父と母。ふたりを想うと、ろくに食事が喉を通らず、夜も眠れない。
神様、父さんと母さんを返してください。
ナマエは、必死に祈った。
しかし、ふたり分の空席は埋まらない。
絶望した。やがて涙も枯れて、虚無感が襲う。
その後、この世を恨んだ。残酷な世界を呪った。
呪詛を吐きそうになるのを抑えつけて、ナマエは欠けた日常を生きる。
そして、ボーダーが隊員を募集し始めたので、何かしないと潰れそうだった彼は、それに飛び付いた。
そこが、運命の分かれ道。ナマエが彼と出会うための、大切な道だった。
今はまだ何も知らずに、笑顔の仮面を身に付けて、ミョウジナマエは人の中に紛れている。
いつか、「お帰り」を言える日まで。
庭の手入れが好きな祖父母と、料理が趣味の両親と、寡黙な一人息子。
息子は、ミョウジナマエという。高校二年生で、大抵は保健室登校をしている。
彼の父母は、教育者だ。哲学科教授の父と、音楽教師の母。
ふたりは、今日も仲良く、朝から凝った料理を作っている。
「料理は哲学」という主張の父と、「料理は音楽」という主張の母。ふたりとも議論好きで、楽しげに会話をしながら、順調に調理を進めていった。
「ナマエ、ご飯出来たわよ」
「今日も、最高に美味しいぞ」
ふたりに呼ばれ、ナマエは自分の席に着く。
先に座っていた祖父母に「おはよう」を言い、「いただきます」をした。
たくさんの種類の野菜が使われたサラダと、エッグベネディクト風オープンサンドと、さつまいもヨーグルトケーキと、ホットミルク。
どれもが綺麗で、美味しい。食べると幸せに包まれるようだ。
「ご馳走さま」
「美味しかった?」
「うん」
母にそう答え、ナマエは、登校の準備をする。
しかし。急に学校へ行くという意識がしぼんでしまった。
「今日、学校行けない……」
俯き、両親に告げる。
「そう。まあ、そういう日もあるわよね」
「仕方ない。家で、好きなことを学べばいい」
「うん」
父の書いた哲学書を読もう。ナマエは、そう決めた。
そして、祖父母と一緒に両親を送り出す。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
「いってきます。何か食べたいものがあったら、連絡するんだぞ、ナマエ」
「うん」
軽く手を振り、ふたりを見送った。
天気予報は雨だったので、父母は傘を持って、それぞれの学舎へ向かう。
それから。その日、恐ろしいことが起きた。後に、第一次近界民侵攻と呼ばれるもの。
ナマエは、両親の無事を祈った。だが、ふたりは帰って来ない。
お願いだから、「お帰り」を言わせて。
そんな願いも虚しく、彼の父母は行方不明者リストに名前が載った。
雨が止んでも、ふたりは戻らない。
生死不明の父と母。ふたりを想うと、ろくに食事が喉を通らず、夜も眠れない。
神様、父さんと母さんを返してください。
ナマエは、必死に祈った。
しかし、ふたり分の空席は埋まらない。
絶望した。やがて涙も枯れて、虚無感が襲う。
その後、この世を恨んだ。残酷な世界を呪った。
呪詛を吐きそうになるのを抑えつけて、ナマエは欠けた日常を生きる。
そして、ボーダーが隊員を募集し始めたので、何かしないと潰れそうだった彼は、それに飛び付いた。
そこが、運命の分かれ道。ナマエが彼と出会うための、大切な道だった。
今はまだ何も知らずに、笑顔の仮面を身に付けて、ミョウジナマエは人の中に紛れている。
いつか、「お帰り」を言える日まで。