一頁のおまけ
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惚れ込んでる配信者がいる。便宜上、彼女としておく。
彼女は、歌をメインに配信をしていて、顔出しはしない。
名前は、すなえ。
どこがいいのかと訊かれると、少し困る。知り合いの赤ん坊を抱いて、クスクス笑い、「窓から放り投げたら、どんな顔するかと思って」と答えそうなところ?
すなえさんの正体に気付くのに、時間はかからなかった。彼女の声と、配信に紛れる電車の音で突き止められた。
本名を、現海砂子という。
砂子さんは、文筆家という、イマイチよく分からないものを生業にしている。
小説から作詞まで、依頼されれば、文章ならなんでも書くらしい。
俺は、彼女の配信にコメントをしたりしないから、認知されてない。
でも、自宅もだいたいは目星がついてる。行こうと思えば行ける。
匿名で発信器になってるマスコットも贈ったし、なんとかなるだろ。
自宅のマンションを、こっそりと張る。
スマホで位置情報を確認。もうすぐ来るはずだ。
少しして、砂子さんが出て来た。
大人しそうな、地味な女。決して絶世の美女ではない。そのことが、嫌に現実的なファム・ファタールといった感じだ。
少なくとも、俺は、この人に誰か殺してと言われたら殺す。
「こんにちは」
「こんにちは……」
挨拶を交わし、すれ違った。心臓が騒がしい。
すれ違い様に、香水の匂いがした。ベリー系とバニラと、あとは分からない。
それからは、わざとらしくない程度に生活圏を被らせていった。
よく行くコンビニ。本屋。図書館。郵便局。
そして、ある日。本屋の中で。
「こんにちは」
「こんにちは。なんか、よく会いますね」
「そうですね」
いつもとは違うやり取り。
「私、現海砂子です」
知ってる。
「俺は、当真勇」
「とうまくん、家この辺?」
「ああ、まあ」
「そう。推理小説読むの?」
「いや、タイトルしか読まねーな」
「なにそれ」
笑う砂子さんを、初めて見た。
「現海さんは、推理小説とSFとホラー?」
「そうそう。あ、砂子でいいよ。現海って、言いづらいでしょ?」
「砂子さん。連絡先交換しませんか?」
「いいよ」
びっくりするほどのトントン拍子。
「よろしくね、当真くん」
白衣を着たうさぎのスタンプが送られてきた。
「よろしく、砂子さん」
その日は、そこで別れる。
メッセージアプリのアイコンは、前髪で目が隠れた彼女の配信上での姿。それを、じっと眺める。
いつか、あんたを独り占め出来る日が来るといい。そう思う。
俺は、砂子さんのことを何も知らない振りをし続けた。偶然出会った人間でいた。
「当真くん。私のために————」
夢に出てきた砂子さんは、悪魔みたいなことを言う。
「————世界を滅ぼしてほしいの」
彼女は、歌をメインに配信をしていて、顔出しはしない。
名前は、すなえ。
どこがいいのかと訊かれると、少し困る。知り合いの赤ん坊を抱いて、クスクス笑い、「窓から放り投げたら、どんな顔するかと思って」と答えそうなところ?
すなえさんの正体に気付くのに、時間はかからなかった。彼女の声と、配信に紛れる電車の音で突き止められた。
本名を、現海砂子という。
砂子さんは、文筆家という、イマイチよく分からないものを生業にしている。
小説から作詞まで、依頼されれば、文章ならなんでも書くらしい。
俺は、彼女の配信にコメントをしたりしないから、認知されてない。
でも、自宅もだいたいは目星がついてる。行こうと思えば行ける。
匿名で発信器になってるマスコットも贈ったし、なんとかなるだろ。
自宅のマンションを、こっそりと張る。
スマホで位置情報を確認。もうすぐ来るはずだ。
少しして、砂子さんが出て来た。
大人しそうな、地味な女。決して絶世の美女ではない。そのことが、嫌に現実的なファム・ファタールといった感じだ。
少なくとも、俺は、この人に誰か殺してと言われたら殺す。
「こんにちは」
「こんにちは……」
挨拶を交わし、すれ違った。心臓が騒がしい。
すれ違い様に、香水の匂いがした。ベリー系とバニラと、あとは分からない。
それからは、わざとらしくない程度に生活圏を被らせていった。
よく行くコンビニ。本屋。図書館。郵便局。
そして、ある日。本屋の中で。
「こんにちは」
「こんにちは。なんか、よく会いますね」
「そうですね」
いつもとは違うやり取り。
「私、現海砂子です」
知ってる。
「俺は、当真勇」
「とうまくん、家この辺?」
「ああ、まあ」
「そう。推理小説読むの?」
「いや、タイトルしか読まねーな」
「なにそれ」
笑う砂子さんを、初めて見た。
「現海さんは、推理小説とSFとホラー?」
「そうそう。あ、砂子でいいよ。現海って、言いづらいでしょ?」
「砂子さん。連絡先交換しませんか?」
「いいよ」
びっくりするほどのトントン拍子。
「よろしくね、当真くん」
白衣を着たうさぎのスタンプが送られてきた。
「よろしく、砂子さん」
その日は、そこで別れる。
メッセージアプリのアイコンは、前髪で目が隠れた彼女の配信上での姿。それを、じっと眺める。
いつか、あんたを独り占め出来る日が来るといい。そう思う。
俺は、砂子さんのことを何も知らない振りをし続けた。偶然出会った人間でいた。
「当真くん。私のために————」
夢に出てきた砂子さんは、悪魔みたいなことを言う。
「————世界を滅ぼしてほしいの」