煙シリーズおまけ
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あの男は、失敗したんだ。だから、こうなったんだ。
「ミョウジ?」
「なぁに?」
「おまえ……なんか変だな……?」
「そう?」
クスクス笑ってたら、やっぱりこっちを訝しげに見ている。
「おまえ、誰だ?」
「ミョウジナマエ。今は、それが、あたしの名前」
「おまえ、アイツの幻覚の女か!?」
「そうだった、ね」
あたしは、真実を告げた。
「ミョウジは?!」
肩を掴まれ、焦りながら訊かれる。
「死んじゃった」
「は……?」
諏訪さんは、くわえていた煙草を地面に落とした。
「死んだの。あたしだけ残して、消えちゃった」
「悪りー冗談だよな?」
「そんなワケないでしょ! あたし、別に、あの男を殺す気なんてなかったけど、勝手に深層に沈んでっちゃったの!」
何も、死ななくてもよかったのにね。
「深層ってなんだ?」
「深層意識。入水自殺みたいなもん?」
心の中の海に沈んだの。最期の言葉は、「貝になりたい」だったかな。
「じ、さつ……?」
諏訪さんは、狼狽えている。
「ミョウジが…………」
友達が死んだから? 仲間だから? 片想いされてたから? 情があるんだろうけど、あの男とは違う気持ちだったから、しょうがないね。
「どうしてだよ……ミョウジ…………」
「自分のせいだよ。自分をゆるせなかったせい。カワイソーだね」
色んな呪いをかけられて。世界を呪って。最期は、死んだ。
哀れな人。
「頼む。ミョウジを連れ戻してくれ」
「無理だよ。散々止めたんだから。あたしの言うことなんて聞かないよ」
「じゃあ、俺が連れ戻す……」
「それも無理。外の声なんか聴こえないよ」
「でも、まだ生きてんだろ?!」
「誰の声も届かないとこへ行くことを、死ぬって言うの」
自分を殺すことが、あの男の選択。
「泣いてるの?」
「ミョウジは、俺の親友なんだ。仲間なんだ」
「うん。でも、今は、あたしがいるから。あの男の代わりにはなれないけど」
「あの男って言うのやめろよ!」
「しょうがないでしょ。あたし、ミョウジナマエだもん」
諏訪さんは、溜め息をついて、涙を拭った。
「俺にとって、ミョウジナマエは、ひとりだけだ」
「そんな~」
「今日は帰る」
「まだ講義あるのに」
「そんな気分じゃねーよ」
煙草を拾って、背中を向ける。
「またね、諏訪さん」
彼は、無言のまま行ってしまった。
あーあ。傷付いただろうなぁ。あたし、別に悪くないけど。
あんたが悪いんだよ?
死んだって、時が解決してくれる? 傷は癒える? あたしが、あんたよりは“いい”って?
あたしたちは、同じ者だったのにね。分かれちゃったね。
さよなら。指くわえて見てなさい。
「ミョウジ?」
「なぁに?」
「おまえ……なんか変だな……?」
「そう?」
クスクス笑ってたら、やっぱりこっちを訝しげに見ている。
「おまえ、誰だ?」
「ミョウジナマエ。今は、それが、あたしの名前」
「おまえ、アイツの幻覚の女か!?」
「そうだった、ね」
あたしは、真実を告げた。
「ミョウジは?!」
肩を掴まれ、焦りながら訊かれる。
「死んじゃった」
「は……?」
諏訪さんは、くわえていた煙草を地面に落とした。
「死んだの。あたしだけ残して、消えちゃった」
「悪りー冗談だよな?」
「そんなワケないでしょ! あたし、別に、あの男を殺す気なんてなかったけど、勝手に深層に沈んでっちゃったの!」
何も、死ななくてもよかったのにね。
「深層ってなんだ?」
「深層意識。入水自殺みたいなもん?」
心の中の海に沈んだの。最期の言葉は、「貝になりたい」だったかな。
「じ、さつ……?」
諏訪さんは、狼狽えている。
「ミョウジが…………」
友達が死んだから? 仲間だから? 片想いされてたから? 情があるんだろうけど、あの男とは違う気持ちだったから、しょうがないね。
「どうしてだよ……ミョウジ…………」
「自分のせいだよ。自分をゆるせなかったせい。カワイソーだね」
色んな呪いをかけられて。世界を呪って。最期は、死んだ。
哀れな人。
「頼む。ミョウジを連れ戻してくれ」
「無理だよ。散々止めたんだから。あたしの言うことなんて聞かないよ」
「じゃあ、俺が連れ戻す……」
「それも無理。外の声なんか聴こえないよ」
「でも、まだ生きてんだろ?!」
「誰の声も届かないとこへ行くことを、死ぬって言うの」
自分を殺すことが、あの男の選択。
「泣いてるの?」
「ミョウジは、俺の親友なんだ。仲間なんだ」
「うん。でも、今は、あたしがいるから。あの男の代わりにはなれないけど」
「あの男って言うのやめろよ!」
「しょうがないでしょ。あたし、ミョウジナマエだもん」
諏訪さんは、溜め息をついて、涙を拭った。
「俺にとって、ミョウジナマエは、ひとりだけだ」
「そんな~」
「今日は帰る」
「まだ講義あるのに」
「そんな気分じゃねーよ」
煙草を拾って、背中を向ける。
「またね、諏訪さん」
彼は、無言のまま行ってしまった。
あーあ。傷付いただろうなぁ。あたし、別に悪くないけど。
あんたが悪いんだよ?
死んだって、時が解決してくれる? 傷は癒える? あたしが、あんたよりは“いい”って?
あたしたちは、同じ者だったのにね。分かれちゃったね。
さよなら。指くわえて見てなさい。