私という一頁の物語
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29歳の誕生日過ぎ。
一世一代の恋の相手と思っていた彼と、お別れした。全く円満ではなかった。私が、「さよなら」とメッセージを送った後、一方的に全てのアカウントでブロックしたのである。
彼とは、遠距離恋愛だった。三門市の“外”との、数少ない繋がり。
だけど、そう。彼は、私の逆鱗に触れる言葉を放ったのだ。だから、別れた。
こんなもんか。お互いに結婚まで考えていたというのに。呆気ない。
さあ、全てを忘れてしまおう。
私は、元恋人との思い出を、記憶を箱に詰めて、宇宙のような真っ暗な空間に捨てるイメージをする。日々そうしていると、本当に段々と全部を忘れていくことが出来るのだ。
人間の記憶なんて、曖昧なもの。簡単に改竄出来てしまう。
さあ、仕事の時間だ。私は、白衣に着替えて、デスクの前に座る。
そして、アイスココアを用意した。
マグカップを傾け、甘い液体を流し込む。甘いものは、幸せの味。アルコールより、カフェインより、これがいい。
今日のカウンセリングは、昼過ぎからだ。
私は、書類整理や、データ入力をして過ごす。クライアントである佐鳥賢くんは、13時にやって来た。広報部隊である嵐山隊の狙撃手。
昼休憩の隙間に訪れたらしい。
「こんにちは、砂子さん」
「こんにちは、佐鳥くん。さあ、座って。アイスココア飲む?」
「飲みます……」
「マシュマロ食べる?」
「食べます……」
明らかに落ち込んでいる様子だ。どうしたもんかな。
「広報部隊になったから、忙しいだろう? 疲れてない?」
「忙しいのは、平気です。疲れ、はするけど、それも平気です。ただ……」
私は、彼の言葉を待った。
「おれたち、マスコット部隊とか言われてて…………」
あー。あれを聞いてしまったのか。
「君たちには、実力も伴っているって分かっているよ。悪口を言う者の方が少数派さ」
「はい……」
「でも、悔しいよね」
例え少数だろうが、悪意を持って言われた言葉は、ナイフのように突き刺さるものだ。
「悔しい……そうです、悔しいです……」
「佐鳥くんは、ただ走り続けて。二丁狙撃銃なんて、そうそう出来ることじゃないんだから」
「おれのツインスナイプ!? 知ってるんですか?!」
「もちろん。君は凄いよ」
パッと表情を変え、佐鳥くんは、笑顔になる。
「君の技術は、ひとつの頂点だ。誇っていいものなんだよ、それは」
「はい!」
独学で、そこまで登り詰めたことは、君の宝物だから。どうか、大切にしてほしい。
「認めてくれない者より、認めてくれる者を大事にしてね」
「りょーかいです!」
元気が出たみたいで、よかった。
こういう笑顔の人がいれば、未来は明るいと思える。
「私は、君たちに助けられてばかりだ」
「え? それって……」
「口が滑ったな。今のは、内緒で」
人差し指を、唇に当てながら言った。
誤魔化すように、どさどさと佐鳥くんの手にマシュマロを乗せる。
「わっ!」
「さ、たくさん食べて、任務に備えないと」
「はいっ!」
素直で、よろしい。
私たちは、偏見に晒されながらも、この場所に立ち続けるしかないんだ。それは、自分で選んだことだから。
束の間の休みの後は、もうひと頑張りしなくてはね。
一世一代の恋の相手と思っていた彼と、お別れした。全く円満ではなかった。私が、「さよなら」とメッセージを送った後、一方的に全てのアカウントでブロックしたのである。
彼とは、遠距離恋愛だった。三門市の“外”との、数少ない繋がり。
だけど、そう。彼は、私の逆鱗に触れる言葉を放ったのだ。だから、別れた。
こんなもんか。お互いに結婚まで考えていたというのに。呆気ない。
さあ、全てを忘れてしまおう。
私は、元恋人との思い出を、記憶を箱に詰めて、宇宙のような真っ暗な空間に捨てるイメージをする。日々そうしていると、本当に段々と全部を忘れていくことが出来るのだ。
人間の記憶なんて、曖昧なもの。簡単に改竄出来てしまう。
さあ、仕事の時間だ。私は、白衣に着替えて、デスクの前に座る。
そして、アイスココアを用意した。
マグカップを傾け、甘い液体を流し込む。甘いものは、幸せの味。アルコールより、カフェインより、これがいい。
今日のカウンセリングは、昼過ぎからだ。
私は、書類整理や、データ入力をして過ごす。クライアントである佐鳥賢くんは、13時にやって来た。広報部隊である嵐山隊の狙撃手。
昼休憩の隙間に訪れたらしい。
「こんにちは、砂子さん」
「こんにちは、佐鳥くん。さあ、座って。アイスココア飲む?」
「飲みます……」
「マシュマロ食べる?」
「食べます……」
明らかに落ち込んでいる様子だ。どうしたもんかな。
「広報部隊になったから、忙しいだろう? 疲れてない?」
「忙しいのは、平気です。疲れ、はするけど、それも平気です。ただ……」
私は、彼の言葉を待った。
「おれたち、マスコット部隊とか言われてて…………」
あー。あれを聞いてしまったのか。
「君たちには、実力も伴っているって分かっているよ。悪口を言う者の方が少数派さ」
「はい……」
「でも、悔しいよね」
例え少数だろうが、悪意を持って言われた言葉は、ナイフのように突き刺さるものだ。
「悔しい……そうです、悔しいです……」
「佐鳥くんは、ただ走り続けて。二丁狙撃銃なんて、そうそう出来ることじゃないんだから」
「おれのツインスナイプ!? 知ってるんですか?!」
「もちろん。君は凄いよ」
パッと表情を変え、佐鳥くんは、笑顔になる。
「君の技術は、ひとつの頂点だ。誇っていいものなんだよ、それは」
「はい!」
独学で、そこまで登り詰めたことは、君の宝物だから。どうか、大切にしてほしい。
「認めてくれない者より、認めてくれる者を大事にしてね」
「りょーかいです!」
元気が出たみたいで、よかった。
こういう笑顔の人がいれば、未来は明るいと思える。
「私は、君たちに助けられてばかりだ」
「え? それって……」
「口が滑ったな。今のは、内緒で」
人差し指を、唇に当てながら言った。
誤魔化すように、どさどさと佐鳥くんの手にマシュマロを乗せる。
「わっ!」
「さ、たくさん食べて、任務に備えないと」
「はいっ!」
素直で、よろしい。
私たちは、偏見に晒されながらも、この場所に立ち続けるしかないんだ。それは、自分で選んだことだから。
束の間の休みの後は、もうひと頑張りしなくてはね。