一頁のおまけ
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「当真くん、私の書いたもの読んだり、歌聴いたりしてる?」
実は、してる。教えてやんねーけど。
砂子さんの書くものは、情念が込もってそうなものが好きだ。
砂子さんの歌は、呪いみたいなやつが好きだ。
暴けるものは、全部暴きたいから、あの人の産み出すものは、なんでも後追いした。
ざっと、七年分。七年分、あんたに追い付けたらいいのに。
けど、歳の差は一生埋まらない。腹が立つ。
砂子さんは、俺と一緒に何もかもから逃げる話をした。楽しそうに。それが嬉しくて、口角が上がる。
星が見たいなら、夜に連れ出すし、海が見たいなら、海岸まで連れて行く。
どこまでもついてってやるから、俺を選べよ。
自分で自分を雁字搦めにしてる現海砂子が、完全な偶像にならないように、俺が引き戻すんだ。
カウンセラーでも、大人でもない、ただの砂子さんでいてほしいんだよ。
役割を全部、捨ててほしい。
この願いは、口に出来ない。絶対に受け入れてくれないだろうからな。
だから、あんたがすがり付いて来るのを待ってる。
近頃は、いつも、砂子さんをスコープで覗く。最高の瞬間を見逃さないように。狙って、構えて、撃つために。
「当真くん」
「ん?」
「そろそろ、休憩終わるから。またね」
「ああ、またな、砂子さん」
軽く手を振り、砂子さんは、カウンセリングルームへ戻って行く。引き止めたいけど、手札がなかった。
本当の目的を悟られたら困るし、子供だとナメられたくないし、メンドクサイ奴と思われるのも嫌だ。
ただ、あの人の口から出た、「またね」を噛み締める。
隊室に戻るか。眠れば、「またね」が早く来る気がする。
夢の中でも、現実でも。
冬島隊の作戦室に戻り、寝床にしてるソファーに座る。
「おまえ、なんかいいことでもあったのか?」
モニター前に座っていた隊長が、振り返って訊いてきた。
「秘密」
「なんだよ。言えよ」
「まあ、そのうち」
目的を果たしてからなら、教えてもいい。
何年かかるか分からねーけどな。
俺は、アイマスクを着けて、横になった。
◆◆◆
あの人がいる。真っ黒なスーツを着て。
「砂子さん」
「当真くん」
「いつもの白衣は?」
「これは、喪服だよ」
「誰か死んだのか?」
「うん」
砂子さんが、下を指差す。
棺の中に、白衣の砂子さんがいた。
「死んじゃった。君のせいで」
「じゃあ、どこにでも行けるな」
「そうだったら、よかったね。当真くん、私と一緒に————」
「え?」
続きは、聞こえない。
夢から目を覚まして、アイマスクを取ると、真木ちゃんが怒っていた。
それを聞き流して、喪服の砂子さんのことを反芻する。
死んでも逃げられないことなんてあるか?
実は、してる。教えてやんねーけど。
砂子さんの書くものは、情念が込もってそうなものが好きだ。
砂子さんの歌は、呪いみたいなやつが好きだ。
暴けるものは、全部暴きたいから、あの人の産み出すものは、なんでも後追いした。
ざっと、七年分。七年分、あんたに追い付けたらいいのに。
けど、歳の差は一生埋まらない。腹が立つ。
砂子さんは、俺と一緒に何もかもから逃げる話をした。楽しそうに。それが嬉しくて、口角が上がる。
星が見たいなら、夜に連れ出すし、海が見たいなら、海岸まで連れて行く。
どこまでもついてってやるから、俺を選べよ。
自分で自分を雁字搦めにしてる現海砂子が、完全な偶像にならないように、俺が引き戻すんだ。
カウンセラーでも、大人でもない、ただの砂子さんでいてほしいんだよ。
役割を全部、捨ててほしい。
この願いは、口に出来ない。絶対に受け入れてくれないだろうからな。
だから、あんたがすがり付いて来るのを待ってる。
近頃は、いつも、砂子さんをスコープで覗く。最高の瞬間を見逃さないように。狙って、構えて、撃つために。
「当真くん」
「ん?」
「そろそろ、休憩終わるから。またね」
「ああ、またな、砂子さん」
軽く手を振り、砂子さんは、カウンセリングルームへ戻って行く。引き止めたいけど、手札がなかった。
本当の目的を悟られたら困るし、子供だとナメられたくないし、メンドクサイ奴と思われるのも嫌だ。
ただ、あの人の口から出た、「またね」を噛み締める。
隊室に戻るか。眠れば、「またね」が早く来る気がする。
夢の中でも、現実でも。
冬島隊の作戦室に戻り、寝床にしてるソファーに座る。
「おまえ、なんかいいことでもあったのか?」
モニター前に座っていた隊長が、振り返って訊いてきた。
「秘密」
「なんだよ。言えよ」
「まあ、そのうち」
目的を果たしてからなら、教えてもいい。
何年かかるか分からねーけどな。
俺は、アイマスクを着けて、横になった。
◆◆◆
あの人がいる。真っ黒なスーツを着て。
「砂子さん」
「当真くん」
「いつもの白衣は?」
「これは、喪服だよ」
「誰か死んだのか?」
「うん」
砂子さんが、下を指差す。
棺の中に、白衣の砂子さんがいた。
「死んじゃった。君のせいで」
「じゃあ、どこにでも行けるな」
「そうだったら、よかったね。当真くん、私と一緒に————」
「え?」
続きは、聞こえない。
夢から目を覚まして、アイマスクを取ると、真木ちゃんが怒っていた。
それを聞き流して、喪服の砂子さんのことを反芻する。
死んでも逃げられないことなんてあるか?