私という一頁の物語
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「元気そうじゃねーか」
「うん。元気だよ」
当真くんは、たまに私の様子を見に来る。
わざわざ、あの角を曲がって、カウンセリングルーム前で待っていてくれた。
「当真くんってさ…………」
「なんだよ?」
「いい人?」
「はあ?」
嫌そうな顔だ。違うのかな。
「一緒に猫カフェ行った日から、私の様子を気にしてるから」
「はぁ~」
大きな溜め息。これも違うのか。
「なんも分かってねーな」
「教えてよ」
「ひとつだけ。はい、か、いいえで答えてやるよ」
「えー…………」
どうしようかな。たったひとつかぁ。
「……私について、知りたいことがある?」
「はい」
「そっかぁ。普通に訊いてくれたらいいのに」
「それじゃ、つまんねーだろ」
よく分からないな。推しについて知りたいなら、原作読まなきゃ! みたいなこと?
推し? 当真くんって、私推し?
「当真くん、私の書いたもの読んだり、歌聴いたりしてる?」
「ふたつ目はダメだ」
「そうだった…………」
謎。“アレ”以上に、なにが知りたいんだろう?
「砂子さんは、なんで逃げねーんだ?」
「なにから?」
「全て」
「それやったら、居場所がなくなるよ」
凄いこと言うなぁ。
現海砂子が全てを投げ出して逃げたら、弟や城戸さんやクライアントを裏切ることになる。
出来ないよ、そんなこと。
「居場所くらい、俺が作ってやる」
「君も来るの?」
「あんたが頼むならな」
「頼めないけど」
行くあてのない逃避行に、他人を巻き込めるワケがない。
でも、ほんの少しだけ楽しそう。
「じゃあさ、なに持って逃げる?」
「トリガー」
「ははっ。最悪。他には?」
「砂子さんの好きなもの」
「それじゃあ、お菓子だ。あとは、小説とか、ぬいぐるみとか?」
大きな鞄にそれらを詰めて、星明かりの下をふたりで歩く情景が浮かんだ。
それから、夜行列車乗って。どこか遠くに行くんだ。フェリーとかセスナとかに乗り継いでもいい。
夢みたいな話だ。砂上の楼閣みたい。
私の時間と君の時間は、流れる早さが違うんだよ。私の一年なんて、あっという間だけど、当真くんは違う。だから、こんな大人には付き合わない方がいい。
「面白いこと聞いちゃったな。私が逃げる時は、君の顔を思い出すんだろうね」
「そうしてください」
当真くんは、満足そうに笑った。
なんなんだろうな。嫌われてはいないみたいだけど。
そりゃあ、まあ、私も君のこと嫌いじゃないけどね。
「うん。元気だよ」
当真くんは、たまに私の様子を見に来る。
わざわざ、あの角を曲がって、カウンセリングルーム前で待っていてくれた。
「当真くんってさ…………」
「なんだよ?」
「いい人?」
「はあ?」
嫌そうな顔だ。違うのかな。
「一緒に猫カフェ行った日から、私の様子を気にしてるから」
「はぁ~」
大きな溜め息。これも違うのか。
「なんも分かってねーな」
「教えてよ」
「ひとつだけ。はい、か、いいえで答えてやるよ」
「えー…………」
どうしようかな。たったひとつかぁ。
「……私について、知りたいことがある?」
「はい」
「そっかぁ。普通に訊いてくれたらいいのに」
「それじゃ、つまんねーだろ」
よく分からないな。推しについて知りたいなら、原作読まなきゃ! みたいなこと?
推し? 当真くんって、私推し?
「当真くん、私の書いたもの読んだり、歌聴いたりしてる?」
「ふたつ目はダメだ」
「そうだった…………」
謎。“アレ”以上に、なにが知りたいんだろう?
「砂子さんは、なんで逃げねーんだ?」
「なにから?」
「全て」
「それやったら、居場所がなくなるよ」
凄いこと言うなぁ。
現海砂子が全てを投げ出して逃げたら、弟や城戸さんやクライアントを裏切ることになる。
出来ないよ、そんなこと。
「居場所くらい、俺が作ってやる」
「君も来るの?」
「あんたが頼むならな」
「頼めないけど」
行くあてのない逃避行に、他人を巻き込めるワケがない。
でも、ほんの少しだけ楽しそう。
「じゃあさ、なに持って逃げる?」
「トリガー」
「ははっ。最悪。他には?」
「砂子さんの好きなもの」
「それじゃあ、お菓子だ。あとは、小説とか、ぬいぐるみとか?」
大きな鞄にそれらを詰めて、星明かりの下をふたりで歩く情景が浮かんだ。
それから、夜行列車乗って。どこか遠くに行くんだ。フェリーとかセスナとかに乗り継いでもいい。
夢みたいな話だ。砂上の楼閣みたい。
私の時間と君の時間は、流れる早さが違うんだよ。私の一年なんて、あっという間だけど、当真くんは違う。だから、こんな大人には付き合わない方がいい。
「面白いこと聞いちゃったな。私が逃げる時は、君の顔を思い出すんだろうね」
「そうしてください」
当真くんは、満足そうに笑った。
なんなんだろうな。嫌われてはいないみたいだけど。
そりゃあ、まあ、私も君のこと嫌いじゃないけどね。